ファンタジーな世界に猫が一匹、仲間を集めて旅をする

翠雲花

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3.捕獲

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 僕の毛に触れるドリュアは、優しく撫でてくる。
 最初は恐る恐るといった様子だったが、僕がドリュアの膝の上に座れば、体や頭や顎の下といった気持ちいい場所を撫でてくれる。


 ふわぁ……気持ちいい。
 喉が鳴る~。


「グルルルル」

「……可愛いな」


 瞑っていた目を開ければ、ドリュアの表情が和らいでおり、とてもとても顔が近かった。


 んなッ!スーハースーハー聞こえると思ったら、これは……猫吸い。
 まさか、ドリュアがすると思わなかった。
 会話は続かないのに、行動力が凄いぞ。


「にゃー?(そろそろい?)」

「ああ……どこかに行くのか」

「にゃ。にゃーん(人探し。旅仲間募集中なんだ)」

「旅?旅に出るのか?」

「にゃ!(そうだよ!)」


 いいだろう!僕はこれから、美しいものを発見する旅に出るのだ!


 ドリュアの膝の上で、自慢げに胸を張ってみた。
 言うなればドヤァである。
 するとなぜか、ドリュアは固まって動かなくなってしまい、僕は膝から降りることにした。
 ここがどのあたりで、どこに行けば人に会えるのか訊きたかったのだが、こうなってしまっては仕方ない。


「にゃーん(僕行くね)」

「ッ!待ちなさい。どこに行く」

「にゃ(分からない)」

「……仕方ない。この蝶を追って行けば、人の街に着くようにしよう。何かあれば私を呼ぶように」


 そう言ってドリュアの手から出てきた緑の蝶は、僕の鼻先にとまり、猫パンチをしようとしたところで飛んで行ってしまった。


「にゃーん!(待ってー!)」


 そうして急いで蝶を追いかけ、何度か捕まえようと試みるが、どうしても捕まえる事ができなかった。
 道中、惹かれる動きの虫や、枯れ葉、それから風で揺れる花など、寄り道をしてしまったのだが、その度に蝶が僕の周りを飛ぶ。
 どうやら、この蝶には虫とは思えないほどの知能があるようだ。


 その後も、蝶を追いかけ歩き続ければ、数日で人の街らしき外壁が見えてきた。
 開けた場所にある街からは、何が来るか一目で見えるようになっているため、僕は自分の前足を見る。


 僕、魔物には見えないよね?でも、猫が門から入るのもどうなんだろう。
 そもそも、先祖返りが珍しいなら、魔物と間違えられるかもしれない。


「ニャッ!ニャッ!ニャッ!(どうしよう!どうしよう!どうしよう!)」


 飛び跳ねたり歩き回ったりと、どうするべきか考えていると、ふと僕の体が宙に浮いた。


「ニャッ!ニャッ!(なにこれ!僕飛んだ!)」


 まさか、僕は飛べたのか!既に神獣になったのかもしれない。
 神獣なら恐れるものは――……にゃ?


「なんだこいつ。魔物じゃないのか?」

「危険はなさそうですが……ギルマスに伝えてみては?」


 目の前には、美形二人の人間がいて、僕はどうやら捕獲されていたらしい。
 気づかぬうちに捕獲され、神獣になっていなかったという衝撃の事実に、ショックをうけていると、まさかの袋に詰められてしまった。


「ニィイイッ!(暗い怖い助けて!)」


 なんて事だ!可愛い猫を袋詰めにするなんてあり得ない!この人間、僕をどうするつもりだ。
 まさか、食べられるんじゃ――


「暴れてますね。少しかわいそうなのでは?」

「魔物かもしれないだろ。念の為だ……確かにかわいそうではあるが」


 暴れる僕に、そんな会話が聞こえるはずなく、僕は爪を立てながら暴れ続けた。





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