偽王道学園の腐男子くん

翠雲花

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chapter2

実家というのは覚えてなくても懐かしいものです

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   僕はずっと慶に抱かれたまま、用意されたリムジンに乗り、空港から2時間程走った、お城の前に居た。


「慶さんや、ここは慶さん……いや、慶坊っちゃまの御屋敷でしょうか。」


「いいえ、涙坊っちゃんの御屋敷です。」


  慶……僕ね、今まで僕のボケにノッてくれなかった慶が、ボケにノッてきてくれたの、凄く嬉しいの。でもさ……ソレ今じゃないんだわ。


「お願い嘘だと言って。サラッとリムジンとか乗っちゃってさ、されるがままにココに来たけどさ、流石に現実に戻してほしいんだわ。」


「だから今現実に戻してやってるだろ。これが涙の現実であって、今までが非現実だっただけだよ。」



   こうして僕が現実逃避をしている最中も、僕は運ばれながら開いた門を潜って庭……いや、庭ではないな。もはや、庭園だろこれ。庭園を歩いてご立派な御屋敷の中に運ばれた。



「涙、現実逃避しても無駄だよ。本当はなんとなく覚えてるんじゃないか?」


  そう、僕は覚えてる。時々ぼんやりと夢に出てくる事もあって、その夢はやたらと現実味を帯びていた。"懐かしい"この言葉がしっくりくる。


「夢によく出てきてて、なんとなく分かるよ。」


「……そう。」


    なんだよ、その微妙な反応。自分で僕に聞いてきたくせに、まさかカマかけただけとか!?それで呆れてる!?クソっ、担がれてちゃ顔が見えん!!




  僕だけ後ろ向きで流れていく景色は、どこかやっぱり懐かしく、使用人さんらしき人達が、頭を上げると喜んでいたり、泣いていたり様々だった。僕達が通り過ぎたから顔上げたんだろうけど、僕はバッチリ見えちゃってますよ。


『ルイ様、大きくなられて。』

『あの頃のまま美しさと可愛らしさが育ちましたね。』

『うぅ、…ルイ様……もう離れたくない。』


  みんな僕が言葉分からないと思ってるのか、結構大きめに話している。残念ながら僕は全然英語喋れるし、むしろ英語だけじゃなくてフランス語とイタリア語もできちゃったりする。慶はもっとできるだろうけどね。僕はBLのカップリングとして、イケメン揃いで、街並みも綺麗そうってだけで覚えただけだし。別に覚えたらカッコイイなとか、そんな理由……あるにはあるけど、一応頑張ったし、こうして英語もいかせてる訳だから無駄ではないはず!!



  僕が自分自身に言い聞かせている間に、目的の場所についたのか、椅子に座らされた。目の前には食事……というか、テーブル長ッ!!無駄だろこれ。




「ル、ルイ……ヒサシブリ、エエト……オボエテルカ?」


  いきなり上座に座っているオジサンに、カタコトの日本語で話しかけられ、プチパニックになった僕は、おもわず隣に座ってる慶を見た。


『レオ、涙なら英語で大丈夫ですよ。英語どころか、フランス語とイタリア語も勉強してたみたいですし。』

 
  慶に言ったことなかったよね!?なんでそれ知ってるの!!


「あら、そうなの?知らなかったわ、うちの子天才!!」


   むしろ母さんが、あんなに英語がペラペラだった事に、僕はビックリだよ。


「ミズキ、貴方知らなかったの!?私でさえ知ってたわよ。」


「カイリも知っていたなんて……なぜ私は知らなかったのかしら。」


   いや、カイリさんも知ってたってどういう事!?


『待て、日本語で喋って話を進めるな!!今は俺がルイと話があるんだ!!英語ができるならこのままの方がいいな。ルイ、覚えてなくてもいい、でもお父さんの事は覚えてるよな??』



  

    ………ごめんなさい。本当にごめんなさい。覚えてないです。
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