癒し系男子はヤンデレを癒しながら甘えたい

翠雲花

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第一章

12.王族



~sideディオ~


 ユユを公爵家に連れて来て数日後、俺はユユを母上に任せ、父上とともに城へと向かった。
 マズルガードをユユに選んで貰う為と、ユユの服やぬいぐるみを揃える為に、商人達を公爵家に呼んだため、そろそろ落ち着いた頃だと、俺達を城に呼んだのだろう。
 本当はユユにも会いたかったようだが、母上が城にいる神官を味方にし、癒し子に会いたいなら自分から来い、と珍しく怒っていたため、今回は俺と父上だけで行く事となったのだ。


「あー……ユユに会いたい」


「少し離れるだけだ。それに、学園の長期休暇とはいえ、ディオは仕事があるだろう」


「休みは貰ってるよ。学園が始まる前日まで休みだから」

 
 ユユを連れて来た日の夜に、休みは貰ってるし、癒し子を優先するのは当然でしょ。
 誰も何も言えないし、言わせないように仕事は済ませてあるから、全く問題はない。
 そんな事よりも、今は……


「ユユ……ユユ……」


 会いたい。
 もう駄目だ。
 ユユがいないと落ち着かないし、体もだるいし……最悪の気分。


「いっきに黒に振り切れるか……頼むから、暴れてくれるなよ」


「大丈夫だから。今までだってこうして生きてきた。いつ死んだっておかしくない。そうでしょ」


 苛立ちながら、俺達を呼んだディアの部屋へ入ると、そこにはディアの他に、俺の伯父にあたる陛下もいた。


「陛下、ディア殿下、失礼致します」


「やあ、キキョウ。本当にお前は、いつも来ても堅苦しいな」


「ゼゼ……いつも言ってるだろう。友人とは言え、ゼゼは国王だ。入室時くらいは、それらしくしなければならないだろ」


 父上は陛下と友人であり、母上とは幼い頃からの婚約関係だったため、父上と陛下の関係は皆が知っている事だが、父上は王妃が亡くなってからというもの、周りの目を気にするようになった。
 王妃であり、ディアの母親である陛下のツガイは、数年前に闇化が進んでしまった事で亡くなっている。
 それ以来、陛下は父上に執着するようになり、周りの者は父上に陛下を押し付けようとしているのだ。


 ディアの婚約者が決まらないから、陛下の闇化が進むのは避けたいんだろうね。
 ディアが駄目でも、第二王子のゼスがいるだろうに。
 まあ、母上は父上よりも陛下の味方みたいだから、時間の問題だろうね。


「ディオ、久しぶり。元気だった?」


「今は元気じゃないよ。気分最悪……早く帰らせてくれないかな。それに、なにその喋り方。気色悪い」


 苛立ちを隠さずにディアを睨みつければ、ディアはいつものように歪んだ笑みを浮かべ、ふわふわの金髪を揺らすと、ドロリとした血のような赤い瞳をこちらに向ける。


「癒し子ちゃんに好かれたいんだよ。ディオが惹かれてんなら、俺だって惹かれるに決まってるし、ディオに似せた喋り方なら、好かれるんじゃねーかなってね」


 まだ会ってもないくせに、ユユに好かれたいとか……あー、嫌だ。
 ユユに好かれたいのは俺なのにさ。


「頼むから、ユユのトラウマには触れないでよ。ディアは性格悪いんだから」


「お前にだけは言われたくねーよ。ディオだって性格は悪いじゃん。顔は俺とほとんど一緒だし、美形なのは間違いねーけどさ」


 うっわ……自分で言うとか、普通にひくわ。


 ディアは確かに顔はいいが、性格の歪みが俺以上なため、誰も婚約者になろうとはせず、恋愛感情は俺の方に向けられる事が多い。
 しかし、俺のことを知っている者は、恋愛感情よりも命をとる。
 それほどまでに、闇ノ国では特級は刺激したくない存在なのだ。
 そして何故か、特級同士は惹かれないという、謎の特徴もある。


「はぁ~……ディアには会わせたくない」


「お前、本当に酷いね。会わせるくらい、別にいいでしょ」


「ユユは王族にいいイメージはないし、王子なんて尚更だよ。でも、きっとユユは受け入れる。ツガイ以外はね。頼むから、ユユだけは傷つけないでよ。俺の大事な、未来のツガイなんだから」


「それくらい、俺だって分かってる。だから明日、まずは俺だけで会いに行くから、癒し子ちゃんに伝えておいてくんねー? 王子で性格最悪の奴が来るってさ」


 言われなくても、母上が既に説明してるし、ディアが特級になりつつある事も伝えてあるよ。
 ユユは優しいから、癒せるなら癒したいって言ってるけど、王子については警戒してた。
 毛が逆立ってるのに、耳と尻尾が下がってて可愛かった。
 あー……早く帰りたい。
 もう帰っていいんじゃない?


 早く帰りたかった俺は、父上を囮にして自分だけ屋敷へ帰り、ユユの元へと急いだ。
 ユユの匂いが近づくつれ、体が軽くなり、苛立ちも喜びへと変わっていく。


「ユユ! ただいま!」


 動物や魔物に囲まれ、母上とともに庭で本を読んでいたユユは、俺の姿を見ると嬉しそうに尻尾を振りながら、俺のマズルガードを持って走って来てくれた。


「おかえりなさい! ディオ、お城どうだった?」


 可愛らしい小さな体が、俺の腕の中におさまると、ユユはマズルガードをつけてくれ、首からぶら下げた鍵を服の中にしまう。


「いつも通り、退屈だったよ。ユユに会いたくて、父上を囮にして帰って来た。ユユは何してたの?」


「本読んでた! 新しい文字とか言葉は、覚えるのが大変だけど、ママさんはディオと同じで、僕が間違っても、叩かないで撫でてくれるから頑張れる」


 ユユが知っている文字は、もはや古代文字に近く、闇ノ国では読める者がほとんどいないため、ここではユユの特技になるだろうと思い、まずは新しい文字や言葉をユユに教えているところだ。
 そしていずれ、癒し子というだけでなく、古代文字を活かせるよう、一緒に神について調べてユユとツガイになる。
 これが一番の目的であり、その後もユユと神の関係や、闇化についてなど、ユユに関係しそうなものは全て、ユユにも信じてもらえるよう、一緒に調べたいと思っている。



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