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幼馴染。
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3:多喜田友佑
「はよパス出せや!」
「ちょっ、わかってるって!」
推し活は楽しいけど、現実は辛さがつきものだ。
体育の授業では出席番号でペアをつくりバスケのパス練習があった。
僕は出席番号だと都筑勝浬とペアになる。勝ちゃんは不機嫌そうに赤みのある瞳を細め、僕を怒鳴りつける。
小学低学年の頃は何故彼と張り合えていたのか不思議でならないほどに、僕はあのドッヂボール以降運動が全然できなかった。それまでの競技がたまたまできていたに過ぎなくて、どうやら僕は運動音痴らしい。特に、球技は全くボールを制御できなくて駄目だった。
僕が勝ちゃんに向けて放ったつもりのボールは彼のいない見当違いの方向に飛んでいく。勝ちゃんは盛大な舌打ちをして、それをキャッチする。多分、彼じゃなかったらボールは吹っ飛んでいただろう。
「こンの下手くそが!」
「仕方ないだろー! 誰もが君みたいにできるわけじゃないんだから!」
「うるせぇ! お前ができねぇと一生テスト受かんねぇんだぞ! もっと危機感持てよ!!」
「危機感はあるけどできないものはできないんですー!」
ギャアギャアと言い合いながら、僕はパステストに受かるために額に青筋が浮かび上がっている勝ちゃんにパスのやり方を教わる。手の使い方、狙う場所、教えてくれるのはいいが終始怒鳴るようなガナリ声を上げられる。
その声にげんなりするけど、ふと昨日のヒナちゃんを思い浮かんだ。
「……ヒナちゃんだったら受け入れてくれるんだろーなぁ」
「ハァ? ヒナチャン?」
僕がボソッと呟いたのが聞こえたようで、勝ちゃんは眉間のシワを深くしながらその名前を繰り返した。
「何だお前。一丁前に女いるのかよ」
「女って……言い方やめなよ。てか別に彼女じゃないよ」
「彼女じゃねぇのに受け入れてもらう気満々なのかよ。キッショ」
「い、いいだろ、別に……」
僕が反抗すると、勝ちゃんは僕に引いて口元を引き攣らせていた。
「ろくに女と話せねぇのにまた顔で好きになってんだろ、お前」
「……そのうち話せるようになるし」
てか男だし。
思わず呟いた僕が悪いのだが引かれた挙句馬鹿にされて、僕は内心もうここまま勝ちゃんもパス合格しなくていいかななんて思いながら、それでも結局はちゃんと彼の指導通りに動く自分に呆れた。
彼の指導のおかげで、僕はパステストを合格できた。勝ちゃんはテストが受かったことでもう僕の元から遠ざかる気満々である。かつて仲良かった頃の面影は、一切ない。もしかして、彼は覚えていないのではないだろうか。
「お疲れー! 都筑! 多喜田!」
無言で僕から離れようとした勝ちゃんにクラスメイトの男鹿大夢が駆けつける。彼は愛想よく笑いながら平然と勝ちゃんの肩をポンポンと叩く。
勝ちゃんは自分と連名で僕が呼ばれたことが納得いかなかったのか口をこれでもかというくらいひん曲げて男鹿くんを睨んだ。
「いやぁ、ヒヤヒヤするパス回しだったけど一発で受かってよかったな!」
「うん。勝ちゃんが僕のへなちょこパス拾ってくれたからだね」
「はっ! 俺と組んで落ちるなんてありえねーんだよ!」
「その割には都筑、ちょっと焦ってたと思うけどな?」
「焦ってねーし!」
ずっとフンフンと怒っている勝ちゃんを男鹿くんが宥めながら、彼はようやく僕の前から離れた。勝ちゃんは高校に入ってからは男鹿くんといることが多い。小学まではスポーツ万能で周りの人が彼に惹かれついて行っていたが、中学からはあまりに強く勝敗に拘る様子や何でも卒なくこなす隙のなさ、そして決して褒められた性格ではないところから、どんどんと周りの人は離れていった。中学では不良っぽい子とつるんでいたけど、高校は離れたので今では男鹿くんのような珍しいタイプの人しか関わりに行かない。
それにしても男鹿大夢くんは大らかな人で、勝ちゃんのような偏屈な人から僕のような日陰の人間でも、笑顔で話してくれる。それこそ、ヒナちゃんの言う何でも受け入れてくれる人のようだった。男鹿くんの穏やかな様子は、話し方とかは違えどどこかヒナちゃんの雰囲気を感じることがある。
なんて、クラスメイトのことどんな目で見てるんだ……。
僕は深い溜息を吐いて、他のクラスメイトテストをぼんやりと眺めた。
「はよパス出せや!」
「ちょっ、わかってるって!」
推し活は楽しいけど、現実は辛さがつきものだ。
体育の授業では出席番号でペアをつくりバスケのパス練習があった。
僕は出席番号だと都筑勝浬とペアになる。勝ちゃんは不機嫌そうに赤みのある瞳を細め、僕を怒鳴りつける。
小学低学年の頃は何故彼と張り合えていたのか不思議でならないほどに、僕はあのドッヂボール以降運動が全然できなかった。それまでの競技がたまたまできていたに過ぎなくて、どうやら僕は運動音痴らしい。特に、球技は全くボールを制御できなくて駄目だった。
僕が勝ちゃんに向けて放ったつもりのボールは彼のいない見当違いの方向に飛んでいく。勝ちゃんは盛大な舌打ちをして、それをキャッチする。多分、彼じゃなかったらボールは吹っ飛んでいただろう。
「こンの下手くそが!」
「仕方ないだろー! 誰もが君みたいにできるわけじゃないんだから!」
「うるせぇ! お前ができねぇと一生テスト受かんねぇんだぞ! もっと危機感持てよ!!」
「危機感はあるけどできないものはできないんですー!」
ギャアギャアと言い合いながら、僕はパステストに受かるために額に青筋が浮かび上がっている勝ちゃんにパスのやり方を教わる。手の使い方、狙う場所、教えてくれるのはいいが終始怒鳴るようなガナリ声を上げられる。
その声にげんなりするけど、ふと昨日のヒナちゃんを思い浮かんだ。
「……ヒナちゃんだったら受け入れてくれるんだろーなぁ」
「ハァ? ヒナチャン?」
僕がボソッと呟いたのが聞こえたようで、勝ちゃんは眉間のシワを深くしながらその名前を繰り返した。
「何だお前。一丁前に女いるのかよ」
「女って……言い方やめなよ。てか別に彼女じゃないよ」
「彼女じゃねぇのに受け入れてもらう気満々なのかよ。キッショ」
「い、いいだろ、別に……」
僕が反抗すると、勝ちゃんは僕に引いて口元を引き攣らせていた。
「ろくに女と話せねぇのにまた顔で好きになってんだろ、お前」
「……そのうち話せるようになるし」
てか男だし。
思わず呟いた僕が悪いのだが引かれた挙句馬鹿にされて、僕は内心もうここまま勝ちゃんもパス合格しなくていいかななんて思いながら、それでも結局はちゃんと彼の指導通りに動く自分に呆れた。
彼の指導のおかげで、僕はパステストを合格できた。勝ちゃんはテストが受かったことでもう僕の元から遠ざかる気満々である。かつて仲良かった頃の面影は、一切ない。もしかして、彼は覚えていないのではないだろうか。
「お疲れー! 都筑! 多喜田!」
無言で僕から離れようとした勝ちゃんにクラスメイトの男鹿大夢が駆けつける。彼は愛想よく笑いながら平然と勝ちゃんの肩をポンポンと叩く。
勝ちゃんは自分と連名で僕が呼ばれたことが納得いかなかったのか口をこれでもかというくらいひん曲げて男鹿くんを睨んだ。
「いやぁ、ヒヤヒヤするパス回しだったけど一発で受かってよかったな!」
「うん。勝ちゃんが僕のへなちょこパス拾ってくれたからだね」
「はっ! 俺と組んで落ちるなんてありえねーんだよ!」
「その割には都筑、ちょっと焦ってたと思うけどな?」
「焦ってねーし!」
ずっとフンフンと怒っている勝ちゃんを男鹿くんが宥めながら、彼はようやく僕の前から離れた。勝ちゃんは高校に入ってからは男鹿くんといることが多い。小学まではスポーツ万能で周りの人が彼に惹かれついて行っていたが、中学からはあまりに強く勝敗に拘る様子や何でも卒なくこなす隙のなさ、そして決して褒められた性格ではないところから、どんどんと周りの人は離れていった。中学では不良っぽい子とつるんでいたけど、高校は離れたので今では男鹿くんのような珍しいタイプの人しか関わりに行かない。
それにしても男鹿大夢くんは大らかな人で、勝ちゃんのような偏屈な人から僕のような日陰の人間でも、笑顔で話してくれる。それこそ、ヒナちゃんの言う何でも受け入れてくれる人のようだった。男鹿くんの穏やかな様子は、話し方とかは違えどどこかヒナちゃんの雰囲気を感じることがある。
なんて、クラスメイトのことどんな目で見てるんだ……。
僕は深い溜息を吐いて、他のクラスメイトテストをぼんやりと眺めた。
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