君の空になる

mimi*

文字の大きさ
2 / 14
守りたい笑顔

しおりを挟む
 太陽がさんさんと輝く空の下、都子はお弁当を広げた。今日は少し風が強い。視界を邪魔する髪を結んで、ぼさぼさになってしまった前髪を軽く手で梳いて直した。
「わあ……今日も都子のお弁当おいしそうだね」
 隣に座る柚木利恵がいつものように感嘆の声を上げる。
 彼女とは生まれたときからの幼馴染だ。人なつこい彼女は昔から都子のあとをついて回り、都子も彼女のことを妹のようにかわいがっていた。高校受験のときも、「都子と一緒がいい」という理由で志望校のすべてを都子と一緒のものにし、結果こうして今でも利恵は都子の隣にいる。
「都子のお母さん、料理教室の先生だもんね。わたしも教えてもらいたいなあ」
「いいよ、利恵ならいつでもただで教えてあげる」
「えー、都子が教えてくれるわけじゃないでしょー。ちゃんと、都子のお母さんに聞かなくちゃ」
 くすくすと利恵は笑った。口の中にウインナーを放り込んで、笑顔のまま都子を見つめる。
「そういえば、今日どうしたの? いつもの車両に乗れなかった理由……まだ聞いてないなあと思って」
「ああ……」
 嫌なことを思い出した。思わず顔をしかめてしまった都子は箸を止めて空を見上げた。すうっと染みこむように広がる空の青は少なからず都子の心を安らげてくれる。
「ねえ、ツダチアキって知ってる?」
「え?」
「ツダチアキっていう人……背の高い、芸能人みたいな人」
 実を言うと、都子はいまだに彼が芸能人ではないかと疑っていた。彼といたときやたらと人にはじろじろ見られたし、あんなにかっこいいのだ、どこかの事務所に入っていてもおかしくない。
「ああ、知ってるよ」
 やっぱり。
 利恵があっさり肯定したところで都子の疑いは確信に変化した。
「その人って有名なの?」
「うん、すっごく有名だよ。もしかして都子知らないの?」
「……うん」
 まん丸と大きな目を見開いた利恵に、都子は返事を小さくして頷いた。
「わたしテレビなんて全然見ないし……やばいよねえ、利恵も知ってるくらいなんだから少しくらい見た方がいいのかな……」
「え?」
 あれ、と思った。この利恵と同じような表情は今日の朝見たばかりだ。そう、あのツダチアキと一緒の反応。利恵は都子を見て変な顔をする。
「なんか、話がかみ合ってない……?」
 ひゅうう、と、音を立てて一段と強い風が吹いた。
「ツダチアキって芸能人じゃないの?」
「ええ、違うよ! 北高、ほら、すぐ近くに男子校あるでしょ? そこの生徒だよ」
「北高?」
 そういえば、朝本人もそんなことを言っていたような気がする。あれは本当だったのか。ちっとも彼の言葉を信用していなかった都子は少しだけ彼に悪いことをしたと思った。
「津田くんってこの辺じゃものすっごく人気あるんだよ。芸能人顔負けのかっこよさだって、うちの学校にも津田くんを好きだっていう女の子たくさんいるんだから」
「そうなの?」
「そうだよ。もう、都子ってほんと情報不足!」
 利恵の呆れた叫びに、都子はただ苦笑いを返すことしかできなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~

山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」 母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。 愛人宅に住み屋敷に帰らない父。 生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。 私には母の言葉が理解出来なかった。

幼馴染の許嫁

山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

戦いの終わりに

トモ
恋愛
マーガレットは6人家族の長女13歳。長く続いた戦乱がもうすぐ終わる。そんなある日、複数のヒガサ人、敵兵士が家に押し入る。 父、兄は戦いに出ているが、もうすぐ帰還の連絡があったところなのに。 家には、母と幼い2人の妹達。 もうすぐ帰ってくるのに。なぜこのタイミングで… そしてマーガレットの心には深い傷が残る マーガレットは幸せになれるのか (国名は創作です)

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...