【完結】最近、格差婚約が流行っている ~ 格差婚約+強制執行、間に合わせ婚約者と幸せになる方法 ~

瀬里@SMARTOON8/31公開予定

文字の大きさ
5 / 20
フランチェスカの恋

第5話 既成事実作戦

しおりを挟む
 今日は、シルヴィオとの久しぶりのデートだ。
 私は、朝からドキドキしていた。

 剣術模擬試合でシルヴィオが優勝した後、彼はとても忙しくて、まともに会えなかった。
 本当は会ってお祝いをしたかったけど、彼にはお祝いのカードをあげただけになってしまった。シルヴィオは、元々筆まめな方ではないから返事は期待していない。

 だから今日は、そのお祝いも兼ねて、色々準備してきたのだ。
 プチサロンで一緒だった時に、シルヴィオがすごく喜んでくれた手作りのお菓子とか、彼の剣帯につける手作りの飾り紐とか。
 シルヴィオは、きちんとした職人に作らせた品物より、こういう手作りのものを好むのだ。温かみがある、と言って。
 あの頃を思い出して、少しは昔のように距離が縮まるかな、なんて思いながら作った。

 けれど、ドキドキの理由は、それではない。
 なぜなら、今日は、既成事実作戦を実行する決意を固めていたからだ。
 聞くところによると、(昔の王子情報しかないんだけど)相手をその気にさせることが重要らしい。その気にさせさえすれば、あとは男に任せればどうとでもなるらしい。男はみんな知っているから。
 みんな知ってることなら、教えてくれればいいのに、王子は意地悪だ。でも、他に聞く当てもなく今日にいたってしまった。

 ただ、その気にさせるために、どうすればいいかは、教えてくれた。とりあえずキ、キスするとか、む、胸を触らせればいいらしい。
 ……
 ……
 ――今日は、できるところまで実行してみようと思う。

 わかってるわよ!! かなり無理目な要求だって! 
 5年も婚約しててキスすらしたことないってどういうことって、今更ながらその事実に愕然としてるわよ!

『婚約破棄前提の格差婚約なんだから、向こうは手を出してこないでしょ』

 そう、私たちは普通の婚約じゃない。だから私から迫らなくちゃいけなかったのよ。今更反省しても遅いわ。だから、これから迫るのよ!
 見てなさい。
 私って、できる子なんだから!
 

  ◇◇◇◇◇◇


 シルヴィオと私は、街を見下ろす丘の上の公園に来ていた。
 ここは、プロポーズにも使われる、恋人たちのメッカとして有名な場所だ。
 街を見下ろせる高台で、景色はよいが人はさほど多くなく、ベンチや涼しい木陰など、リラックスできる雰囲気が非常に人気なのだ。
 王族の方も好きな場所だとか。
 学園の女の子達にもリサーチしたので完璧だ。

 私は今日こそ既成事実作戦を実行させようと、気合いを入れた服装をしていた。
 今日は街中ということで、ドレスでなく街娘がよく着るワンピース。最近は、胸の形を強調する、胸元が広く開いているデザインが人気だ。胸を触らせるというノルマ達成のためには重要要素だ。コルセットは簡単に外せる柔らかいもの。
 最近暑くなってきたので、なるだけ薄着にした。男をその気にさせるのにも、薄着がいいらしい。
 これはクラスの男子生徒情報。
 薄着の方が、そそるよなー、って、聞こえてきたのよ! きっとそういうことでしょ。

 ただ、今日は、シルヴィオの元気がないのが気になる。
「シルヴィオ、もしかして、疲れてる?」
 シルヴィオはびっくりしたようにこちらを見て、私の頭をなでてくれた。
「ああ、大丈夫だ。お前が心配するようなことじゃねーから」
 そして、いつもの私の好きなお日様みたいな笑顔に戻った。

「よかった」
 私は、シルヴィオの腕に腕を絡めて、抱きついてみた。公園にいる他の恋人同士の真似をしてみたのだ。
 あ、これって、胸が当たるんだ!
 新たな発見。
 私は、期せずして「胸を触らせる」をクリアした!

「お、お前!」
「シルヴィオ、あっち行こう! あっちの木陰でこれ食べよう! 私、作ってきたの」
 私は、シルヴィオに抵抗を許さず、引っ張っていくことにした。
 シルヴィオの顔を下からのぞき込むと、ちょっと頬が赤いように見える。
 いい感じじゃない?

 シートを引いて座った場所は、ちょっと人目につきにくい木陰。
「おー、これ、前にサロンで作ったやつじゃん」
「そうそう、あの時、キッチンを粉だらけにしちゃって大変だったよねー」
 私たちは、過去の思い出話に花を咲かせる。

 飾り紐もすごく喜んでくれた。
 シルヴィオといるのは、ほんとに楽しい。
 でも、今日の目的はこれじゃない。
 
 私は、二つ目のチャレンジに挑戦する。
 シルヴィオの唇を奪うのだ!
「ねえ、シルヴィオはさ、そういうこと、興味ないの?」
「ん? そういうことって何?」
「こっ、ここここ、こういうこと!」 
 私は、心臓をばくばく言わせながら、胡坐をかいて座っているシルヴィオの側に、地面に手をついて近づく。
 途中、シルヴィオの目線が私の胸元をさまよって、彼の頬に朱がさした。はっ、やった! この服成功!
 さらにシルヴィオの背が高くてちょっと届かなかったので、彼の膝に手をかけて伸びあがった。
「お前、ちょっと変だぞ!」
「変じゃない、私は興味ある!」
 自分で言ってて馬鹿じゃないのって思ったけど、もういい! 彼をその気にさせれば、なんでもいいのだ。
「……俺だって、興味はなくはない。だけど、それは……」
「じゃあさ、試してみない?」
 私は、シルヴィオが肯定的な返事を返したので、彼の言葉を遮ってたたみかけるように続ける。
「ほら、将来を考えても、れ、練習は必要じゃない?」
 結婚式で失敗とか、絶対ヤダ。

 彼は、一瞬泣きそうに顔を歪めた。
 あれ?
 でも、すぐにいつもの、私が何かしでかしたときにする、不機嫌な顔に変わる。

「お前、俺には何してもいいと思ってるだろう。じゃあ、練習、つきあってやるよ!」

 途端に視界がくるりと変わる。
 私は、自分が地面に押し倒されているのに気づいた。

 シルヴィオの顔が近い。
 きれいな、浅葱色の碧い瞳。
 今日は、なんだか熱を感じさせる。

 私のばくばくいう心臓は、もう限界に近いけど、次の瞬間、さらに跳ね上がった。

 彼の唇が私の唇をふさいだ。
 息ができない、と思うと、その瞬間に離れて、また唇が重なる。
 めぇつぶれ、シルヴィオのかすれる声で私は目を閉じた。
 角度を変えて、重なって。離れて。
 その度に息が上がる。

 何回繰り返しただろう。
 シルヴィオは、私の上から体を起こすと、私から顔をそらした。

「これにこりたら、煽るな」

 どうしよう。うれしい、すごくうれしい。
 これって、私にその気になってくれたってことでしょう?

 私は、体を起こすと、向こうを向いてしまった彼の顔を両手ではさんで、こっちを向かせた。
 やっぱり、彼の顔はかなり赤かった。

「また、練習してくれる?」
「おい、わかってないだろ」
「わ、わかってるわよ。シルヴィオに何してもいいなんて思ってない。何されてもいいって思ってるけど!」
「絶対、わかってねー!」

「……ねえ、もう1回練習しない?」

 ――私たちの影は、また、一つになった。


しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

誰も愛してくれないと言ったのは、あなたでしょう?〜冷徹家臣と偽りの妻契約〜

山田空
恋愛
王国有数の名家に生まれたエルナは、 幼い頃から“家の役目”を果たすためだけに生きてきた。 父に褒められたことは一度もなく、 婚約者には「君に愛情などない」と言われ、 社交界では「冷たい令嬢」と噂され続けた。 ——ある夜。 唯一の味方だった侍女が「あなたのせいで」と呟いて去っていく。 心が折れかけていたその時、 父の側近であり冷徹で有名な青年・レオンが 淡々と告げた。 「エルナ様、家を出ましょう。  あなたはもう、これ以上傷つく必要がない」 突然の“駆け落ち”に見える提案。 だがその実態は—— 『他家からの縁談に対抗するための“偽装夫婦契約”。 期間は一年、互いに干渉しないこと』 はずだった。 しかし共に暮らし始めてすぐ、 レオンの態度は“契約の冷たさ”とは程遠くなる。 「……触れていいですか」 「無理をしないで。泣きたいなら泣きなさい」 「あなたを愛さないなど、できるはずがない」 彼の優しさは偽りか、それとも——。 一年後、契約の終わりが迫る頃、 エルナの前に姿を見せたのは かつて彼女を切り捨てた婚約者だった。 「戻ってきてくれ。  本当に愛していたのは……君だ」 愛を知らずに生きてきた令嬢が人生で初めて“選ぶ”物語。

婚約者のことが大大大好きな残念令息と知らんふりを決め込むことにした令嬢

綴つづか
恋愛
――私の婚約者は完璧だ。 伯爵令嬢ステラリアの婚約者は、将来の宰相として期待されている筆頭侯爵令息のレイルだ。冷静で大人びていて文武にも長け、氷の貴公子などと呼ばれている完璧な男性。 でも、幼い頃から感情と表情が読み取りづらいのレイルの態度は、婚約者として可もなく不可もなく、ステラリアはどこか壁を感じていた。政略なこともあるが、引く手あまたな彼が、どうして平凡な伯爵令嬢でしかないステラリアと婚約を結び続けているのか、不思議で不安だった。 だが、そんなある日、偶然にもステラリアは見てしまった。 レイルが自室でベッドローリングをしながら、ステラリアへの愛を叫んでいる瞬間を。 婚約者のことが大好き過ぎるのに表情筋が動かな過ぎて色々誤解をされていた実は残念な侯爵令息と、残念な事実を知ったうえで知らんふりをすることにした伯爵令嬢のラブコメです。 ヒーローとヒロインのどちらかの視点で基本お話が進みますが、時々別キャラ視点も入ります。 ※なろうさんにも掲載しています。

離婚寸前で人生をやり直したら、冷徹だったはずの夫が私を溺愛し始めています

腐ったバナナ
恋愛
侯爵夫人セシルは、冷徹な夫アークライトとの愛のない契約結婚に疲れ果て、離婚を決意した矢先に孤独な死を迎えた。 「もしやり直せるなら、二度と愛のない人生は選ばない」 そう願って目覚めると、そこは結婚直前の18歳の自分だった! 今世こそ平穏な人生を歩もうとするセシルだったが、なぜか夫の「感情の色」が見えるようになった。 冷徹だと思っていた夫の無表情の下に、深い孤独と不器用で一途な愛が隠されていたことを知る。 彼の愛をすべて誤解していたと気づいたセシルは、今度こそ彼の愛を掴むと決意。積極的に寄り添い、感情をぶつけると――

初恋をこじらせたやさぐれメイドは、振られたはずの騎士さまに求婚されました。

石河 翠
恋愛
騎士団の寮でメイドとして働いている主人公。彼女にちょっかいをかけてくる騎士がいるものの、彼女は彼をあっさりといなしていた。それというのも、彼女は5年前に彼に振られてしまっていたからだ。ところが、彼女を振ったはずの騎士から突然求婚されてしまう。しかも彼は、「振ったつもりはなかった」のだと言い始めて……。 色気たっぷりのイケメンのくせに、大事な部分がポンコツなダメンズ騎士と、初恋をこじらせたあげくやさぐれてしまったメイドの恋物語。 *この作品のヒーローはダメンズ、ヒロインはダメンズ好きです。苦手な方はご注意ください この作品は、小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。

あなたの隣は私ではないけれど、それでも好きでいてもいいですか、レオナルド様

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢エリアーナには、三年間ずっと抱えてきた秘密がある。 婚約者であるヴァルフォード公爵・レオナルドへの、誰にも言えない恋心だ。 しかし彼の隣にいるのは、いつも幼馴染の伯爵令嬢・ソフィア。 儚げな笑顔と上目遣いで男性を虜にするあざとい彼女に、レオナルドも例外ではないようで—— 「レオ、私のこと嫌いにならないでね?」 「……そんなことにはならない」 また始まった二人の世界。

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

【完結】愛してるなんて言うから

空原海
恋愛
「メアリー、俺はこの婚約を破棄したい」  婚約が決まって、三年が経とうかという頃に切り出された婚約破棄。  婚約の理由は、アラン様のお父様とわたしのお母様が、昔恋人同士だったから。 ――なんだそれ。ふざけてんのか。  わたし達は婚約解消を前提とした婚約を、互いに了承し合った。 第1部が恋物語。 第2部は裏事情の暴露大会。親世代の愛憎確執バトル、スタートッ! ※ 一話のみ挿絵があります。サブタイトルに(※挿絵あり)と表記しております。  苦手な方、ごめんなさい。挿絵の箇所は、するーっと流してくださると幸いです。

結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。

佐藤 美奈
恋愛
伯爵令嬢のアメリアは幼馴染のジェームズと結婚して公爵夫人になった。 結婚して半年が経過したよく晴れたある日、アメリアはジェームズとのすれ違いの生活に悩んでいた。そんな時、机の脇に置き忘れたような手紙を発見して中身を確かめた。 アメリアは手紙を読んで衝撃を受けた。夫のジェームズは不倫をしていた。しかも相手はアメリアの親しい友人のエリー。彼女は既婚者で2児の母でもある。ジェームズの不倫相手は他にもいました。 アメリアは信頼する兄のニコラスの元を訪ね相談して意見を求めた。

処理中です...