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セラフィナの恋
第4話 狩猟祭
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キルレア王国では、王家の公式行事として、秋に狩猟祭が開かれる。基本的には、貴族家の当主夫妻または代表者の参加なので、王立学院の学生はまばらだ。
私はもてなしを行う主催者側の人間として、サヴィーノ殿下はティント王国からの来賓として参加することになっている。
狩猟祭は、管理された王領の狩猟場で行われる。狩猟場の二方向から猟犬を放ち、キツネやシカを追い込み、狩人たち――参加した貴族家の当主や若者たちは、獲物に矢を射かける。そして、一番立派な獲物を狩った人物が優勝者となり、国王より褒美を賜る、というのが狩猟祭の大まかな流れである。
一方、女性たちは、狩りの成功と安全を祈り、出発する男性の手首に、リボンを巻いて送り出すと、その間、野外でチャリティーのお茶会を開き、男性が獲物を携えて戻るのを待つ。
そして、獲物の評価は、出席した女性たちの意見をまとめ、王妃が決定するのだ。
私は、サヴィーノ殿下と、一つ上のお兄様の手首にリボンを巻いた。私の髪色だと、あまりきれいな色ではないので、銀色のリボンにした。
「セラフィナ、今度、時間をとってくれないか? 二人で話をしたいんだ」
「ええ、もちろんよ。サヴィーノ殿下。そういえば、学院で普通に会えるものだから、手紙を書かなくなってしまったわね。ちょっと寂しいと思っていたの。今度ゆっくりお話ししましょう」
それは、親友に「恋の相談」をしたいということかしら?
心の奥がざわめくのを押さえつけて、私は何でもない事のように笑った。
彼は、安心したかのように目元を緩ませると、手首のリボンにキスをして、行ってきます、と告げて狩場へと向かった。
「サヴィーノ殿下、素敵ねえ。見て。令嬢から奥様方まで目を奪われてるわ。セラフィナ殿下、実際の所、彼とはどうなの?」
こそこそと声をかけてきたのは一番上の兄の婚約者の公爵令嬢だ。三つ年上の義姉になる方で、陽気で可愛らしくて、私も大好きな方――でも、言えるわけがない。
「期待させて申し訳ないのですが、彼は、幼い頃からの親友なんです。それに、昔の話、ご存じでしょう?」
彼女は、過去、キルレアからティントへの婚約打診が断られたことを知っている立場だ。
「まあ、でもそれは、過去の事でしょう?」
目線で、あなたは? と問われたがそこは気づかないふりをした。彼の方はまんざらでもなさそうじゃない、と小さくフォローを入れてくれる心遣いを素直に喜べなかった。
会場には、続々と獲物が運び込まれ、参加した狩人達も、戻ってくる。
女性陣も茶会をお開きにして、獲物の選定のため、会場へ戻る途中だった。
会場には、何人かの若者と歓談しているサヴィーノ殿下の姿もあった。私は、彼に怪我がなさそうなのを見て取り、ほっとしてそちらへ向かった。
その時、会場の端の茂みでがさがさと音がして、私が振り返ると、小鹿が茂みから飛び出してきた。
背中に白い斑点を持つ、小さな小鹿だ。
そして、それを追うようにボウガンを構えた数人の貴族の若者が会場に駆け込んでくる。
彼らの構えたボウガンに背筋が凍る。
彼ら自身も、狩場から道を外れて人の多い会場に飛び込んでしまったことにおそらく動転してしまったのだろう。
若者の一人が足をもつれさせて転んでしまい、もう一人は地面に転んだ若者を飛び越えようとした。
そして、その拍子に――
構えたボウガンから一本の矢が放たれる。
彼のボウガンが向いていた先には、サヴィーノ殿下がいて。
そして、私は、その矢道に一番近い場所にいた。
私は、迷わなかった。
背中に衝撃と熱と焼けつくような痛みが走り、私の意識は、そこで途切れた。
私はもてなしを行う主催者側の人間として、サヴィーノ殿下はティント王国からの来賓として参加することになっている。
狩猟祭は、管理された王領の狩猟場で行われる。狩猟場の二方向から猟犬を放ち、キツネやシカを追い込み、狩人たち――参加した貴族家の当主や若者たちは、獲物に矢を射かける。そして、一番立派な獲物を狩った人物が優勝者となり、国王より褒美を賜る、というのが狩猟祭の大まかな流れである。
一方、女性たちは、狩りの成功と安全を祈り、出発する男性の手首に、リボンを巻いて送り出すと、その間、野外でチャリティーのお茶会を開き、男性が獲物を携えて戻るのを待つ。
そして、獲物の評価は、出席した女性たちの意見をまとめ、王妃が決定するのだ。
私は、サヴィーノ殿下と、一つ上のお兄様の手首にリボンを巻いた。私の髪色だと、あまりきれいな色ではないので、銀色のリボンにした。
「セラフィナ、今度、時間をとってくれないか? 二人で話をしたいんだ」
「ええ、もちろんよ。サヴィーノ殿下。そういえば、学院で普通に会えるものだから、手紙を書かなくなってしまったわね。ちょっと寂しいと思っていたの。今度ゆっくりお話ししましょう」
それは、親友に「恋の相談」をしたいということかしら?
心の奥がざわめくのを押さえつけて、私は何でもない事のように笑った。
彼は、安心したかのように目元を緩ませると、手首のリボンにキスをして、行ってきます、と告げて狩場へと向かった。
「サヴィーノ殿下、素敵ねえ。見て。令嬢から奥様方まで目を奪われてるわ。セラフィナ殿下、実際の所、彼とはどうなの?」
こそこそと声をかけてきたのは一番上の兄の婚約者の公爵令嬢だ。三つ年上の義姉になる方で、陽気で可愛らしくて、私も大好きな方――でも、言えるわけがない。
「期待させて申し訳ないのですが、彼は、幼い頃からの親友なんです。それに、昔の話、ご存じでしょう?」
彼女は、過去、キルレアからティントへの婚約打診が断られたことを知っている立場だ。
「まあ、でもそれは、過去の事でしょう?」
目線で、あなたは? と問われたがそこは気づかないふりをした。彼の方はまんざらでもなさそうじゃない、と小さくフォローを入れてくれる心遣いを素直に喜べなかった。
会場には、続々と獲物が運び込まれ、参加した狩人達も、戻ってくる。
女性陣も茶会をお開きにして、獲物の選定のため、会場へ戻る途中だった。
会場には、何人かの若者と歓談しているサヴィーノ殿下の姿もあった。私は、彼に怪我がなさそうなのを見て取り、ほっとしてそちらへ向かった。
その時、会場の端の茂みでがさがさと音がして、私が振り返ると、小鹿が茂みから飛び出してきた。
背中に白い斑点を持つ、小さな小鹿だ。
そして、それを追うようにボウガンを構えた数人の貴族の若者が会場に駆け込んでくる。
彼らの構えたボウガンに背筋が凍る。
彼ら自身も、狩場から道を外れて人の多い会場に飛び込んでしまったことにおそらく動転してしまったのだろう。
若者の一人が足をもつれさせて転んでしまい、もう一人は地面に転んだ若者を飛び越えようとした。
そして、その拍子に――
構えたボウガンから一本の矢が放たれる。
彼のボウガンが向いていた先には、サヴィーノ殿下がいて。
そして、私は、その矢道に一番近い場所にいた。
私は、迷わなかった。
背中に衝撃と熱と焼けつくような痛みが走り、私の意識は、そこで途切れた。
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