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夏祭り
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「よし!それにしても同い年の男の子やのにえらい違うのぉ…」
悠一の帯を締めた後、ポンと腰を叩いた祖母が真白と見比べながら呟いた。
「なんやオレ、悪口言われとるん?浴衣着るんやめようかな…」
「そうじゃないよ!」
浴衣姿の悠一に見惚れていた真白が首と手を左右に振って全力で否定する。
「悠一はカッコいいし似合ってる!だから脱がないで!」
「そ、そうか?」
真白に褒められ、まんざらでもない悠一の目尻が下がった。
お揃いの柄で真白は紺、悠一は濃いグレーと色違いの浴衣を身につけている。
それ故に2人の対照的な体型や顔つきが際立つのだ。
「はぁ?これタコ入っとらんのやけど!」
「じゃあ僕のタコあげる。はい」
「ホンマに?ありがとー」
神社境内の石階段に座って仲良くたこ焼きを食べる悠一と真白。
そんな2人の背後から怪しい影が近づいてくる…
「悠一!お前梨菜のことフッたんか!?」
「羨ましいのぉ、この色男がぁー!」
突然の大声に驚いた真白が悠一の腕に身体を寄せた。
ムッとして振り向いた悠一の先で雫と大河がニヤニヤと笑っている。
「はぁ?何でもう知っとんや?」
「さっき梨菜から聞いたんよ」
結局梨菜は女友達と来ているらしい。
幼なじみの雫と大河に、フラれた怒りをぶちまけたようだ。
「なんや『他に好きな人がおる』って言うたらしいの」
「好きな人!?」
大河の言葉に反応した真白が思わず悠一に目線を送る。
「えぇ?そんなこと言うた覚えないんやけどな…」
真白の眼差しに困惑する悠一が首を捻った。
「何とぼけとんじゃ?誰やの?好きなヤツってよ?」
「真白君も気になるよなぁ?」
「うん!気になる!」
雫に話を振られた真白が興奮気味に何度も頷く。
しかし…実際、悠一はそんなことは言っておらず、全て梨菜の想像でしかないのだ。
それでもしつこい友人達に圧され、仕方なく考え込んだ。
「うー…うーん…やっぱり…真白…やなぁ」
頬杖をついて唸っていた悠一がポツリと漏らした。
「え?」
「はぁ?」
「えぇ?」
雫、大河、真白、全員の視線が一斉に悠一に注がれる。
「オレずっと弟欲しかったからなぁ。真白は弟みたいなもんやし」
「弟?」
そっか、僕は弟…なんだ…
「まぁ、真白君はめっちゃ可愛いけん弟属性やわな!」
「オレのことお兄ちゃんって呼んでみて?」
雫君や大河君にも僕は悠一の弟っぽく見えるんだ。
やっぱり彼氏…には…見えないか…そうだよ、無理だよね。
悠一は身体が大きいだけじゃなくて心も広いから年より上に見える。
だけど僕は何もかもが小さい。
だからどうしても頼りない弟に見えるんだ。
ドンッ!
花火が打ち上げられ爆発音が辺りに響く。
「あっ!花火始まったで」
夜空が一気に明るくなり、きらびやかな光に包まれる。
悠一に続いて真白も空を見上げた。
色とりどりの光がキラキラと瞬きながら消えてゆく。
「綺麗…」
「そうやろ。毎年綺麗なんよ」
小さな町の花火大会なので規模が大きいとはいえない。
ただ、1年に1度の夏祭りに相応しい美しさと華やかさを兼ね備えており、県内外の観光客からの評判も良い。
「もう…夏も終わってしまうんやなぁ…」
悠一のしんみりとした小さな声と共に瞳に映る最後の花火。
「悠一…」
改めて別れの時が近づいていると気付かされた。
もう僕たちは離れ離れになってしまう…
悠一は僕がいなくなった後、寂しいって思ってくれますか?
僕は…
「なぁ真白、来年もこうやって一緒に見てくれるか?」
「え?」
「再来年もそのまた後も…ずっと…」
真白の細く小さな手の甲を包み込む大きく分厚い手のひら。
真白はその上に左手を重ねた。
「うん。ずっとずっと悠一の傍にいたい。もう離れたくないよ」
唇を震わせる真白の頬を一筋の涙がつたう。
「ずっとおったらええのに…」
俯いた真白がすがるように悠一の肩へもたれ掛かった。
花火が終わると人々は少しずついなくなり、賑やかだった夏祭りも静かになっていく。
いつの間にか雫君と大河君は帰っていなくなっていた。
だけど終わりを認めたくない僕は悠一の胸にしがみついて離れなかった。
こんなワガママで面倒くさい僕に呆れて、いっそのこと突き放してくれたら別れの時の辛さが減るかもしれない。
嫌いになってくれた方が痛みは少なくなるかもしれない。
だから僕は悠一に嫌われたくてわざと離さなかったのに…。
悠一は僕が泣き止むまで何も言わず、いつまでも背中を撫でてくれた。
悠一の帯を締めた後、ポンと腰を叩いた祖母が真白と見比べながら呟いた。
「なんやオレ、悪口言われとるん?浴衣着るんやめようかな…」
「そうじゃないよ!」
浴衣姿の悠一に見惚れていた真白が首と手を左右に振って全力で否定する。
「悠一はカッコいいし似合ってる!だから脱がないで!」
「そ、そうか?」
真白に褒められ、まんざらでもない悠一の目尻が下がった。
お揃いの柄で真白は紺、悠一は濃いグレーと色違いの浴衣を身につけている。
それ故に2人の対照的な体型や顔つきが際立つのだ。
「はぁ?これタコ入っとらんのやけど!」
「じゃあ僕のタコあげる。はい」
「ホンマに?ありがとー」
神社境内の石階段に座って仲良くたこ焼きを食べる悠一と真白。
そんな2人の背後から怪しい影が近づいてくる…
「悠一!お前梨菜のことフッたんか!?」
「羨ましいのぉ、この色男がぁー!」
突然の大声に驚いた真白が悠一の腕に身体を寄せた。
ムッとして振り向いた悠一の先で雫と大河がニヤニヤと笑っている。
「はぁ?何でもう知っとんや?」
「さっき梨菜から聞いたんよ」
結局梨菜は女友達と来ているらしい。
幼なじみの雫と大河に、フラれた怒りをぶちまけたようだ。
「なんや『他に好きな人がおる』って言うたらしいの」
「好きな人!?」
大河の言葉に反応した真白が思わず悠一に目線を送る。
「えぇ?そんなこと言うた覚えないんやけどな…」
真白の眼差しに困惑する悠一が首を捻った。
「何とぼけとんじゃ?誰やの?好きなヤツってよ?」
「真白君も気になるよなぁ?」
「うん!気になる!」
雫に話を振られた真白が興奮気味に何度も頷く。
しかし…実際、悠一はそんなことは言っておらず、全て梨菜の想像でしかないのだ。
それでもしつこい友人達に圧され、仕方なく考え込んだ。
「うー…うーん…やっぱり…真白…やなぁ」
頬杖をついて唸っていた悠一がポツリと漏らした。
「え?」
「はぁ?」
「えぇ?」
雫、大河、真白、全員の視線が一斉に悠一に注がれる。
「オレずっと弟欲しかったからなぁ。真白は弟みたいなもんやし」
「弟?」
そっか、僕は弟…なんだ…
「まぁ、真白君はめっちゃ可愛いけん弟属性やわな!」
「オレのことお兄ちゃんって呼んでみて?」
雫君や大河君にも僕は悠一の弟っぽく見えるんだ。
やっぱり彼氏…には…見えないか…そうだよ、無理だよね。
悠一は身体が大きいだけじゃなくて心も広いから年より上に見える。
だけど僕は何もかもが小さい。
だからどうしても頼りない弟に見えるんだ。
ドンッ!
花火が打ち上げられ爆発音が辺りに響く。
「あっ!花火始まったで」
夜空が一気に明るくなり、きらびやかな光に包まれる。
悠一に続いて真白も空を見上げた。
色とりどりの光がキラキラと瞬きながら消えてゆく。
「綺麗…」
「そうやろ。毎年綺麗なんよ」
小さな町の花火大会なので規模が大きいとはいえない。
ただ、1年に1度の夏祭りに相応しい美しさと華やかさを兼ね備えており、県内外の観光客からの評判も良い。
「もう…夏も終わってしまうんやなぁ…」
悠一のしんみりとした小さな声と共に瞳に映る最後の花火。
「悠一…」
改めて別れの時が近づいていると気付かされた。
もう僕たちは離れ離れになってしまう…
悠一は僕がいなくなった後、寂しいって思ってくれますか?
僕は…
「なぁ真白、来年もこうやって一緒に見てくれるか?」
「え?」
「再来年もそのまた後も…ずっと…」
真白の細く小さな手の甲を包み込む大きく分厚い手のひら。
真白はその上に左手を重ねた。
「うん。ずっとずっと悠一の傍にいたい。もう離れたくないよ」
唇を震わせる真白の頬を一筋の涙がつたう。
「ずっとおったらええのに…」
俯いた真白がすがるように悠一の肩へもたれ掛かった。
花火が終わると人々は少しずついなくなり、賑やかだった夏祭りも静かになっていく。
いつの間にか雫君と大河君は帰っていなくなっていた。
だけど終わりを認めたくない僕は悠一の胸にしがみついて離れなかった。
こんなワガママで面倒くさい僕に呆れて、いっそのこと突き放してくれたら別れの時の辛さが減るかもしれない。
嫌いになってくれた方が痛みは少なくなるかもしれない。
だから僕は悠一に嫌われたくてわざと離さなかったのに…。
悠一は僕が泣き止むまで何も言わず、いつまでも背中を撫でてくれた。
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