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本音
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東京から戻ってきた後も悠一の生活リズムは変わらない。
真白が眠るまで傍に寄り添い胸か背中を優しく撫で、眠ったあと自分のことを済ませる。
真白の穏やかな寝顔を確認した悠一がポキポキと首を鳴らしながら欠伸をした。
「真白は?」
「寝たけん風呂借りるで。移動で疲れたみたいでの気持ち良さそうに寝よるわ」
真白が寝た安心感からなのか、目を擦る悠一の表情にも疲れがみえる。
「ほうか。悠一もゆっくり入ってき。おつかれさん」
「ありがと」
9月とはいえ真夏と変わらない暑い日々が続いている。
熱い湯船に浸かった悠一は広い浴槽に背中を預けて天井を見つめた。
「悠一君、このスイカね、めちゃくちゃ甘いんだよ!」
真っ赤なスイカを両手で持ち、上目遣いで笑いかけてくる真白の顔と声が浮かぶ。
キラキラと輝く真白の瞳に反射する悠一の表情は…。
「…オレ…もうそろそろ…限界かもしれん…」
目尻から一筋の涙がこぼれ落ち、両手で顔を覆った。
昂る気持ちが鎮まるまでかなりの時間を費やした悠一は、しばらく浴室にこもっていた。
しかしリビングには祖母の姿。
「あれ?ばあちゃんまだ起きとったん?」
「ちょっとええか?悠一」
「んー?」
コップの水を一気に飲み干すと、祖母の正面に腰掛けた。
「悠一見よったらこっちが辛なるわ」
いつもとは違う強めの語気に悠一の顔つきが引き締まる。
「え?」
「アンタは昔っから変わらん。いっつも我慢して自分の中に溜め込んで…」
「あはは。そんなこと…」
笑って否定しようとしたが、この後に続く言葉が見つからない。
「正直に全部吐き出しまい。ばあちゃんに教えてよ?」
「……」
俯いたまま唇を固く結んだ悠一と何も言わずにただ見守る祖母。
数分間の沈黙後、悠一が視線を上げて祖母と目を合わせた。
「真白には絶対に言わんとってよ?」
「うん」
真白には秘密にしてほしい。
それは祖母が最も恐れていた…真白を拒絶すること。
重すぎる感情をぶつけてくる真白をこれ以上受け止められない悠一の気持ちは痛いくらい理解できる。
ただ、悠一がいなくなった後の真白は…どうなってしまうのか?
今のままだと悠一が…悠一の願いを叶えると真白が…どちらにしても傷ついてしまう。
この状況は避けられない。
「もう…このまま真白の記憶が戻らんかったらええのに。なんて思うたらいかんよな」
「え?」
それは悠一の苦しみが永遠に続くということ…の、はず。
「オレ、今の真白のこと好きになってしもた。今の真白は本当の真白やないて分かっとるのに。本当の真白とちゃうのに…ごめんな。ばあちゃんの大切な孫にこんな感情持ってしもて。きしょいよなぁ…ごめんなぁ」
「悠一」
老婆とは思えない速さで立ち上がり悠一を抱きしめた。
「ありがとう。ホンマにアンタはええ子や。せやけどホンマに鈍感やわ。アホがつくくらいに鈍感や」
「え?ばあちゃん?何?オレ悪口言われとるん?」
「ちゃうわ。褒めよるんよ。悠一は死んだじいちゃんによう似とる。ホンマ男前になったなぁ」
「はぁ?オレじいちゃんみたいにツルツルになるん?」
祖母はまだ濡れている悠一の黒髪をぐしゃぐしゃと鷲掴みにしながら涙ぐんだ。
真白が眠るまで傍に寄り添い胸か背中を優しく撫で、眠ったあと自分のことを済ませる。
真白の穏やかな寝顔を確認した悠一がポキポキと首を鳴らしながら欠伸をした。
「真白は?」
「寝たけん風呂借りるで。移動で疲れたみたいでの気持ち良さそうに寝よるわ」
真白が寝た安心感からなのか、目を擦る悠一の表情にも疲れがみえる。
「ほうか。悠一もゆっくり入ってき。おつかれさん」
「ありがと」
9月とはいえ真夏と変わらない暑い日々が続いている。
熱い湯船に浸かった悠一は広い浴槽に背中を預けて天井を見つめた。
「悠一君、このスイカね、めちゃくちゃ甘いんだよ!」
真っ赤なスイカを両手で持ち、上目遣いで笑いかけてくる真白の顔と声が浮かぶ。
キラキラと輝く真白の瞳に反射する悠一の表情は…。
「…オレ…もうそろそろ…限界かもしれん…」
目尻から一筋の涙がこぼれ落ち、両手で顔を覆った。
昂る気持ちが鎮まるまでかなりの時間を費やした悠一は、しばらく浴室にこもっていた。
しかしリビングには祖母の姿。
「あれ?ばあちゃんまだ起きとったん?」
「ちょっとええか?悠一」
「んー?」
コップの水を一気に飲み干すと、祖母の正面に腰掛けた。
「悠一見よったらこっちが辛なるわ」
いつもとは違う強めの語気に悠一の顔つきが引き締まる。
「え?」
「アンタは昔っから変わらん。いっつも我慢して自分の中に溜め込んで…」
「あはは。そんなこと…」
笑って否定しようとしたが、この後に続く言葉が見つからない。
「正直に全部吐き出しまい。ばあちゃんに教えてよ?」
「……」
俯いたまま唇を固く結んだ悠一と何も言わずにただ見守る祖母。
数分間の沈黙後、悠一が視線を上げて祖母と目を合わせた。
「真白には絶対に言わんとってよ?」
「うん」
真白には秘密にしてほしい。
それは祖母が最も恐れていた…真白を拒絶すること。
重すぎる感情をぶつけてくる真白をこれ以上受け止められない悠一の気持ちは痛いくらい理解できる。
ただ、悠一がいなくなった後の真白は…どうなってしまうのか?
今のままだと悠一が…悠一の願いを叶えると真白が…どちらにしても傷ついてしまう。
この状況は避けられない。
「もう…このまま真白の記憶が戻らんかったらええのに。なんて思うたらいかんよな」
「え?」
それは悠一の苦しみが永遠に続くということ…の、はず。
「オレ、今の真白のこと好きになってしもた。今の真白は本当の真白やないて分かっとるのに。本当の真白とちゃうのに…ごめんな。ばあちゃんの大切な孫にこんな感情持ってしもて。きしょいよなぁ…ごめんなぁ」
「悠一」
老婆とは思えない速さで立ち上がり悠一を抱きしめた。
「ありがとう。ホンマにアンタはええ子や。せやけどホンマに鈍感やわ。アホがつくくらいに鈍感や」
「え?ばあちゃん?何?オレ悪口言われとるん?」
「ちゃうわ。褒めよるんよ。悠一は死んだじいちゃんによう似とる。ホンマ男前になったなぁ」
「はぁ?オレじいちゃんみたいにツルツルになるん?」
祖母はまだ濡れている悠一の黒髪をぐしゃぐしゃと鷲掴みにしながら涙ぐんだ。
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