今時異世界如きは、言葉さえ通じればどうとでもなる

はがき

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第1章 異世界に立つ

第三話

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「アレなら出来るかも」

 俺はガバッと顔を上げ、女神の次の言葉を待つ。女神は両手をワチャワチャ動かし、

「そ、そんな期待されても困ります!」
「……良いから。何?」
「い、言っておきますが大した事じゃありませんよ!スキルは【翻訳】で決まりですし」
「……じゃあなんだよ」
「そこまで大きなことは出来ませんが、1つだけ選ばせてあげます!」

 選ぶ?何をだ?スキルが選べないのに、選択するものなんてあるだろうか。

「本当期待しないでください!大きなことは出来ないと言いました。それにスキルは変えることが出来ませんからねっ」
「わかったから速く」
「転移される場所です」

 女神は説明を始めた。通常であれば勇者召喚をした国、セントフォーリア教国の魔法陣に転移することになる。しかしそれを女神は、セントフォーリア教国の魔法陣か、セントフォーリアの城下町か、どこかわからないランダム転移のどれかを選ばせてくれると言う。そしてそれぞれのメリットとデメリットも説明してくれた。

 通常通りセントフォーリア教国に転移すれば、数年は教育をしてくれて衣食住も面倒見てくれると言う。昔は役に立たない奴は即殺していたようだが、今ではとりあえず教育はしてくれるようだ。だが、その教育課程が終わると、セントフォーリア教国の軍部で強制的に働かされたり、他の国々に売られたりすると言う。それは逆らえないようなシステムになっているようだ。
 城下町に転移すれば、日本人とバレない限りはセントフォーリアの強制労働や人身売買からは逃れられるだろうが、当面の金がなかったり、異世界の常識がわからなかったりでなかなか苦労すると言う。それにいつまでも城下町に居れば、日本人とバレてしまう可能性もあがり、バレた時にどうなるかは予想つかないと言う。
 ランダム転移は、最も自由だが最も危険だ。最悪、転移直後に魔物に襲われて死ぬ可能性もある。

 これは素晴らしい情報でアドバンテージだ。クラスの奴らはチートを貰えたけど、奴隷、または半奴隷状態のようだ。そして当然俺もそこに転移される予定だった。それが魔法陣に乗り遅れてしまったことにより、そこから抜け出せたと言う事だ。

「なんだよ、あんじゃねーか」
「でも、危険もいっぱいですから」
 
 序盤の安全のみを考えればセントフォーリアの魔法陣もアリだろう。隷属魔法的なものがあったとしても、数年の教育時間があるなら、その間に何とか出来るかもしれないし。
 ランダム転移は論外だ。チートスキルがあるならワンチャン狙うのもアリだが、俺のスキルは【翻訳】だ。ワンチャンすらない。ラノベの主人公みたいにご都合主義が起こるかどうかに賭けるほど、俺は無謀な性格ではない。
 城下町は2つの間くらいの危険度だろう。一番安パイに感じるが、良く考えて欲しい。いくら文明が発達しているからと言って、アメリカのニューヨークに無一文でいきなり飛ばされて生活出来るだろうか。しかも言葉こそ通じるが、異世界は人の命は軽く、犯罪も地球と比べられないほど多いと言う。ニューヨークでもニューヨークのスラム街並みに危険か、スラム街の方がまだマシな程の倫理観の可能性も充分あり得る。そんな場所なら、むしろ街の方が危ないまである。どれも一長一短ではあるわけだ。
 
「……、まあ、城下町一択だな」
「…………、良いのですか?はっきり言って楽ではありませんよ?次の食事にありつけないまま餓死の可能性もありますよ?」
「ああ、それでも城下町で良い」

 俺がキッパリと言い切ると、ホッとした顔をした。面倒事が終わったと思っているのか。
 
「では、本当に気をつけてください。地球の危険な土地より、更に人の命は軽いですから」
「わかってるよ」

女神が右手を上げると、俺は意識が遠くなった。
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