今時異世界如きは、言葉さえ通じればどうとでもなる

はがき

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第1章 異世界に立つ

第十八話

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~~~セントフォーリア教国、神山亜梨紗視点~~~

 どうしてこうなってしまったのだろう。私の何がいけなかったのか。

「しかしナターシャさん、いくらなんでも処刑はあんまりです」
「本来、教国の持ち物である魔石を、それもこれは特に貴重な魔石なのです。これに手を付けるのは重大な犯罪です」
「でも処刑はやりすぎです」

 リュウトが巫女のナターシャさんに抗議してくれている。でももう良いわ、私は疲れた。
 結局リュウトはターニャさんだけじゃなく、何人もの人と同時に付き合ってるみたい。まるでネット小説のハーレム主人公みたいね。そのハーレムに私も入りたいなんて思ったこともあったけど、もう生きていくことに疲れたわ。

 ランスロットさんも私に見切りをつけたみたいで、寄って来なくなった。それと同時くらいに未来を中心にしていじめが始まったわ。初めは水をかけられたり、ダズわずかな系の魔法をぶつけられたり程度だったけど、だんだんいじめはエスカレートして、とうとう私の部屋に教国の秘宝とか言う魔石が置かれていた。そして私が魔石を見つけるのと同時に、未来たちが私の部屋に来て大騒ぎになった。
 もちろん私が盗んだわけじゃない。そもそも、秘宝があるところなんて知らないし、知っててもそんな場所に入れるわけないのに、私が盗んだことにされてしまった。
 
 クラスメイトの男子が、夜に強姦に来たこともある。それは何とか魔法で撃退して身を守ることが出来たけど、その男子を招き入れたのが聡子だとわかった時、私はもう抵抗する気力を失った。親友だと思っていた3人にいじめられるのは、何よりも辛かった。
 
 そして、今日、いつも朝に集合させられている大広間で、ナターシャさんに罪人だと吊し上げられた。私は盗んでないけど、罪を認めた。もう辛かったから。殺して欲しかったから。

「リュウト、もうやめて。私が盗んだのよ」
「……本当に盗んだのか?」
「ええ……、本当よ」
「アリサ……」

 リュウトの取り巻きたちが騒ぐ。

「厚かましいわね、開き直ってるわ」
「もう良いんじゃない?教国の法で裁くべきよ」
「ビッチ!近藤くんにも色目使ったんでしょ?」
「高橋くんにもよ」

 未来が私の前に立つ。

「いい気味ね、アリサちゃん」
「気が済んだ?未来」

パン!

 未来にビンタされた。珠美と聡子もやってきた。

「アリサがこんな奴とはね、友達だったと思うと恥ずかしいよ」
「ほんと、黒歴史だわ」
「……、良かったわね、これで二度と会うこともないわ……」

 死にたい。
 かつての親友にこんなことを言われて、無理やり異世界なんかに連れて来られて、家族も居ない、味方もいない、私には何もない。
 するとナターシャさんが、

「他ならぬリュウトの頼みです。でしたら国外追放にしましょう。リュウト、それなら良いですね?」

 リュウトは俯き加減で、

「ああ、殺されるよりマシだ……」

 本来なら庇ってくれてありがとうと言わなきゃいけないんだろうけど、今では偽善心を満たしたかっただけなのかなと思ってしまう。私も嫌な女になったわ。

「ならば決まりです。アリサには国外追放の手配が済むまで牢に入ってもらいます」
「好きにしなさいよ」

 もう、どうでも良いんだから。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



~~緑川 明春視点~~

「っ、いつつ……」

 本当に殺されるかもと思った。まさか虎子があそこまでしてくるとは。でも生きている。
 
「うわ……、身体が動かねえ……」

 【身体強化】の影響だろう、身体に酷い筋肉痛のような痛みが走り、頭もクラクラしてまともに立ち上がれない。酷使した筋繊維が悲鳴をあげてるのか、消費した血液で貧血なのか、もちろんどちらもなのだろう。
 
 何とか身体を動かして四つん這いになる。ふと左手を見ると、

「……、傷が……」

 まるで指を切断して数年経過しかたのように、綺麗に小指の傷が塞がっていた。もちろん小指はないが、もう何年も前から小指がないみたいに、綺麗に塞がっている。

「あいつ、回復魔法が使えたのか?」

 間違いなく治療したのは虎子だろう。

「……、やっぱテラたくさんはやり過ぎたな……」

 もちろん俺も死ぬ気はなかった。限界で10秒と思っていたが、結果は5秒もかからずに虎子のワンパンで沈んでしまった。
 しかし、もっと動けないほどのダメージを負っていても良さそうなものだが、禁呪を使って、ボコボコに殴られたのに、何とか這ってなら動くことが出来ている。

「ったく……、デレるなら従魔になれっつうの」

 俺は、何とか屋敷の自室まで移動した。



 2日が経った。
 残った最後の食材で飯を食い、なんとか歩ける程度まで回復したので、荷物を持って屋敷を出る。もうこのまま出るのが良いだろう。どのみち買い溜めの食料も切れた。ならば街に行って買い出しをして、そのまま旅に出よう。この国には長く居られないのだから潮時だ。

「虎子、メイリー婆さん、ありがとう。お前らのことは一生忘れない」

 婆さんを埋めて簡易的な墓廟を刺した墓の前に片膝をつき頭を下げる。俺の制服のブレザーを墓廟にかけて手を合わせて拝む。本当は記念になるものを婆さんの墓に供えたかったが、俺の持ち物と言ったら、制服上下にローファーの革靴、財布と電源が入らなくなったスマホしかない。その中で婆さんにお供えするならブレザーしか思いつかなかった。

 冷蔵庫やシャワーやトイレなどの魔道具は置きっぱなしのままだ。便利なので持っていきたい気持ちはあるが、この歳で禿げたくはない。極力【収納魔法】の使用は避けたかった。

「一年か……。長いようで短かったな。まあ、ここからが本当の異世界だな」

 最後に虎子にもう一度会えなかったのは心残りだが、もう充分拳で語り合った。後悔はない。

「よし、行くか!」

 俺は敷地の木の門を出て、もう一度敷地に90度頭を下げてから、街へと歩き出した。
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