3 / 12
誕生日と秘密のはじまり
しおりを挟む
ローウェル・バティスチ・ファン・ケロス
バティスチ家の次男。わずか9歳にして王国の魔法研究機関に所属する天才。
父譲りの美しい蒼い瞳に、肩まで伸ばした黒髪を片側に括っていて、誰が見ても納得のいく美少年だ。しかも自覚もある。かなりある。
美しいものを心から愛する性質で……その「美しいもの」の中には、私も含まれているらしい。
「いい加減、ルーナを離してください。ルーナは“僕の”なんだから!」
そう言って父をキッと睨む兄様。……うん、ちょっと怖い。でも美形ってほんとずるい。睨んでも様になるの、ずるい。
「ほう、早かったじゃないか。お前の上司が、“最近は仕事が溜まっていて帰れない”ってぼやいていたが、終わったのか?」
父の言葉はどこか皮肉めいているが、目はまったく怒っていない。むしろ楽しんでいるような顔だ。
……でも兄様はそれに気づかず、鼻で笑って返す。
「“僕の”仕事は溜まってないよ?僕は天才だからね!無能な彼らと一緒にしないでくれる?
それにルーナの一代イベントに支障が出るようなヘマはしない。可愛いルーナのためなら、僕は何だってできる!」
あ、うん。ありがとう。……でもちょっと、好かれすぎてない?気のせいかな?
「はぁ、わかったわかった。私も準備があるから、また後で会おう。ルーナ、また後でパパと遊ぼうな?
ローウェルにいじめられたら、すぐに言うんだぞ~?」
「僕はルーナをいじめたりしませんっ!!」
ぷりぷり怒る兄様を背に、父は私に名残惜しそうにキスをして、部屋を出ていった。
さて……私は回れ右してヴァネッサのところへ戻ろうとした——
その瞬間、兄様に抱き上げられてしまった。
「ねぇ、ルーナ?どこに行こうとしてたの?僕がここにいるのに、どうして背中なんて向けるかな?
君は頭がいいから、僕の言ってること……ちゃんとわかってるよね?ねぇ、“僕の可愛いお姫様”」
……わかるよ、うん。でも正直、怖いよ兄様!
ローウェルはナルシストで、美しいものを偏愛する。そして自分で言うのもなんだけど、今回の私は……確かに可愛い。
ただ、中身が大人だから、自分の振る舞いに妙なギャップを感じてしまう。少しでも変に思われないように、猫を被って生きているのだ。
それにしても、私はこの人生で少し“特別”だという自覚がある。
魔力量も、正直とんでもない。誰よりもある自信がある。
そして、この兄様には……“少し”それがバレている。
「ルーナ?聞こえてるよね?」
笑っているけれど、目がまったく笑っていない。ひえぇ、ごめんなさい……
なぜよりによってこの人にバレたかな……
「にいちゃま……」
「ただいま、ルーナ!最近、会えなくて寂しかったよ!もう、いっそお城に連れていこうかな……
いや、でもルーナをあいつらに見せるなんて……特に“アイツ”には絶対無理……うーん」
「おうち、いる!」
えっ、待って。何言ってるのこの人!?
……って、ヴァネッサ!? 助けを求めようと見たら、床でぐっすり眠っていた。
「ん?あぁ、邪魔だったから寝てもらったよ。だって、ルーナと僕の大切な時間を邪魔されたくないし?」
さらっと恐ろしいこと言ってない……?
兄様は無詠唱で魔法を扱える。それがどれほどすごいことかというと、この才能一つで国から特別に呼ばれて、研究所に所属しているほど。
でも困ったことに——
私も、同じことができる。いや、それ以上に。
私は魔法の“式”を理解し、構築すれば、頭の中で言葉にしなくても発動できてしまう。
むしろ、「こうなったらいいなぁ~」と思うだけで魔法が起こる。……完全にチートである。
「にいちゃま、おろちて……?」
でもここで焦ってはいけない。兄様は私を溺愛している。そこを利用しよう。
この状況を切り抜けるには、あの手しかない。
「…ちゅかれたよぉ……にいちゃまぁ」
上目遣い+うるうる攻撃!
「うっ……わかった。じゃあ今日は、ルーナの“最後の仕上げ”を僕がするってことで許してあげる!」
よっし、ちょろい……!覚えとこう、この手。
「あいがとぉ」
「任せて!ルーナは世界一可愛いし、天才の僕にかかれば完璧に仕上げてあげる!そこのメイドよりずっと上手くね!」
……ローウェルは確かにちょっと残念なところがあるけど、美少年だからすべてが萌えになる。
嬉しそうに頬を染めてるその顔なんて……乙女ゲームの攻略対象そのままだよ、ほんと。
「……うん」
あ、あぶない……顔がニヤけそうになった。
「実はね、ルーナにプレゼントを持ってきたんだ。誕生日だからね。……こうつければ……うん、やっぱり似合う!」
ローウェルがつけてくれたのは、白い小花と赤いルビーがあしらわれた髪飾り。
小さくてシンプルだけど、とても品が良くて綺麗。センス、良すぎる……!
「わぁ、かあいい! あいがとぉ!」
見た目はまだ子どもでも、中身は大人だからね。こういう可愛いアイテム、大好きなんです!
「よかった!……あ、もう時間みたいだ。一緒に行こう、ルーナ!」
「うん!」
そろそろ、誕生日パーティーの時間が始まるようだ。
今日は“魔力量”の測定と、“属性判定”の儀式がある。
属性によって、将来の進路が変わると言われているこの世界——
私は、事前にローウェルが遊びで作った測定機に触れて、それを木っ端微塵にした過去がある。
しかもその瞬間を兄様に見られた。
……それ以来、溺愛がさらに加速した。
最近はヤンデレ気味でちょっと怖い。でも兄様にバレるくらいならいい。
国中に知られたら……きっと私は、研究対象になってしまう。
——なぜなら、私は“全属性持ち”なのだから。
王族ですら三属性でなければ継承権がないこの国で、
すべての属性を扱える私は、正直……危険すぎる存在だ。
そう。私は、この世界の“例外”なのだ。
言葉も魔法も、誰よりも早く覚えられた。
でも、それをひた隠してここまで来た。
この世界で、私はもう一度「生き直す」ことを選んだ。
前世での後悔は思い出せないけれど……だからこそ、今度は後悔しないように生きると決めた。
母のことも、自分の力のことも、全部ちゃんと向き合って生きていく。
もらったこの命を、無駄にはしない。
——ルーナ・ディー・バティスチ、この世界で、きっと幸せになるんだ。
──つづく──
バティスチ家の次男。わずか9歳にして王国の魔法研究機関に所属する天才。
父譲りの美しい蒼い瞳に、肩まで伸ばした黒髪を片側に括っていて、誰が見ても納得のいく美少年だ。しかも自覚もある。かなりある。
美しいものを心から愛する性質で……その「美しいもの」の中には、私も含まれているらしい。
「いい加減、ルーナを離してください。ルーナは“僕の”なんだから!」
そう言って父をキッと睨む兄様。……うん、ちょっと怖い。でも美形ってほんとずるい。睨んでも様になるの、ずるい。
「ほう、早かったじゃないか。お前の上司が、“最近は仕事が溜まっていて帰れない”ってぼやいていたが、終わったのか?」
父の言葉はどこか皮肉めいているが、目はまったく怒っていない。むしろ楽しんでいるような顔だ。
……でも兄様はそれに気づかず、鼻で笑って返す。
「“僕の”仕事は溜まってないよ?僕は天才だからね!無能な彼らと一緒にしないでくれる?
それにルーナの一代イベントに支障が出るようなヘマはしない。可愛いルーナのためなら、僕は何だってできる!」
あ、うん。ありがとう。……でもちょっと、好かれすぎてない?気のせいかな?
「はぁ、わかったわかった。私も準備があるから、また後で会おう。ルーナ、また後でパパと遊ぼうな?
ローウェルにいじめられたら、すぐに言うんだぞ~?」
「僕はルーナをいじめたりしませんっ!!」
ぷりぷり怒る兄様を背に、父は私に名残惜しそうにキスをして、部屋を出ていった。
さて……私は回れ右してヴァネッサのところへ戻ろうとした——
その瞬間、兄様に抱き上げられてしまった。
「ねぇ、ルーナ?どこに行こうとしてたの?僕がここにいるのに、どうして背中なんて向けるかな?
君は頭がいいから、僕の言ってること……ちゃんとわかってるよね?ねぇ、“僕の可愛いお姫様”」
……わかるよ、うん。でも正直、怖いよ兄様!
ローウェルはナルシストで、美しいものを偏愛する。そして自分で言うのもなんだけど、今回の私は……確かに可愛い。
ただ、中身が大人だから、自分の振る舞いに妙なギャップを感じてしまう。少しでも変に思われないように、猫を被って生きているのだ。
それにしても、私はこの人生で少し“特別”だという自覚がある。
魔力量も、正直とんでもない。誰よりもある自信がある。
そして、この兄様には……“少し”それがバレている。
「ルーナ?聞こえてるよね?」
笑っているけれど、目がまったく笑っていない。ひえぇ、ごめんなさい……
なぜよりによってこの人にバレたかな……
「にいちゃま……」
「ただいま、ルーナ!最近、会えなくて寂しかったよ!もう、いっそお城に連れていこうかな……
いや、でもルーナをあいつらに見せるなんて……特に“アイツ”には絶対無理……うーん」
「おうち、いる!」
えっ、待って。何言ってるのこの人!?
……って、ヴァネッサ!? 助けを求めようと見たら、床でぐっすり眠っていた。
「ん?あぁ、邪魔だったから寝てもらったよ。だって、ルーナと僕の大切な時間を邪魔されたくないし?」
さらっと恐ろしいこと言ってない……?
兄様は無詠唱で魔法を扱える。それがどれほどすごいことかというと、この才能一つで国から特別に呼ばれて、研究所に所属しているほど。
でも困ったことに——
私も、同じことができる。いや、それ以上に。
私は魔法の“式”を理解し、構築すれば、頭の中で言葉にしなくても発動できてしまう。
むしろ、「こうなったらいいなぁ~」と思うだけで魔法が起こる。……完全にチートである。
「にいちゃま、おろちて……?」
でもここで焦ってはいけない。兄様は私を溺愛している。そこを利用しよう。
この状況を切り抜けるには、あの手しかない。
「…ちゅかれたよぉ……にいちゃまぁ」
上目遣い+うるうる攻撃!
「うっ……わかった。じゃあ今日は、ルーナの“最後の仕上げ”を僕がするってことで許してあげる!」
よっし、ちょろい……!覚えとこう、この手。
「あいがとぉ」
「任せて!ルーナは世界一可愛いし、天才の僕にかかれば完璧に仕上げてあげる!そこのメイドよりずっと上手くね!」
……ローウェルは確かにちょっと残念なところがあるけど、美少年だからすべてが萌えになる。
嬉しそうに頬を染めてるその顔なんて……乙女ゲームの攻略対象そのままだよ、ほんと。
「……うん」
あ、あぶない……顔がニヤけそうになった。
「実はね、ルーナにプレゼントを持ってきたんだ。誕生日だからね。……こうつければ……うん、やっぱり似合う!」
ローウェルがつけてくれたのは、白い小花と赤いルビーがあしらわれた髪飾り。
小さくてシンプルだけど、とても品が良くて綺麗。センス、良すぎる……!
「わぁ、かあいい! あいがとぉ!」
見た目はまだ子どもでも、中身は大人だからね。こういう可愛いアイテム、大好きなんです!
「よかった!……あ、もう時間みたいだ。一緒に行こう、ルーナ!」
「うん!」
そろそろ、誕生日パーティーの時間が始まるようだ。
今日は“魔力量”の測定と、“属性判定”の儀式がある。
属性によって、将来の進路が変わると言われているこの世界——
私は、事前にローウェルが遊びで作った測定機に触れて、それを木っ端微塵にした過去がある。
しかもその瞬間を兄様に見られた。
……それ以来、溺愛がさらに加速した。
最近はヤンデレ気味でちょっと怖い。でも兄様にバレるくらいならいい。
国中に知られたら……きっと私は、研究対象になってしまう。
——なぜなら、私は“全属性持ち”なのだから。
王族ですら三属性でなければ継承権がないこの国で、
すべての属性を扱える私は、正直……危険すぎる存在だ。
そう。私は、この世界の“例外”なのだ。
言葉も魔法も、誰よりも早く覚えられた。
でも、それをひた隠してここまで来た。
この世界で、私はもう一度「生き直す」ことを選んだ。
前世での後悔は思い出せないけれど……だからこそ、今度は後悔しないように生きると決めた。
母のことも、自分の力のことも、全部ちゃんと向き合って生きていく。
もらったこの命を、無駄にはしない。
——ルーナ・ディー・バティスチ、この世界で、きっと幸せになるんだ。
──つづく──
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。
織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。
父であるアーヴェント大公に疎まれている――
噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる