KOKORO再誕

歴 悠輔

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エピローグ KOKORO再誕

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平成二十二年 五月某日

 気が付くと、由実世は廊下の長椅子に座っていた。フォーマルなパンツスーツを着用し、傍らにはビジネスバックが置いてある。

(ウトウトしちゃった。何か、長い夢を見ていたような……)
 腕時計を確認すると、分針が頂点を刺すところだった。

(いけない! 今から面接だった。急がなきゃ)
 由実世は焦って立ち上がると、応接室のドアをノックする。

「どうぞ、お入り下さい」

「失礼します」
 まずはきちんと返答できたことに安堵する。だが、入室しながらも不穏な動悸が高まっていく。

「仲峯さん、ですね。どうぞおかけください」

 面長&胴長の面接官が着座を促す。由実世は黙礼しながら下座のパイプ椅子に座った。
 疲れ顔の初老面接官が、骨ばった顎をゆっくりと動かす。
「では、まずは履歴書をお願いします」

 由実世が慌ててビジネスバックに手を突っ込むと、引っ張り出した茶封筒を手渡す。
(なんだろう、この胸騒ぎと既視感……)
 上唇を軽く舐めながら、次なる質問を待つ。

「私は理倶知新聞の加須貝かすがいと申します。彼は原田課長です」
 初老面接官が、ぞんざいに片手で名刺を差し出す。由実世は恭しく両手でそれを受け取った。

「ではまず、自己紹介をお願いします」
 胴長の面接官が由実世に話を振る。

 浅く頷いた由実世が、頭の中で模範解答を反芻する。胸の内がドラムの様に跳ね、開いた口からは小さな喘鳴が漏れる。

 二人の面接官の視線が痛かった。夢への道を閉ざす、悲しき症状が由実世を襲っていた。懸命に喋ろうと肺に空気を溜めたその時、由実世の脳裏に異世界の情景が一気に蘇った。

 共に働いた記者仲間との経験。同行した勇者パーティと分かち合った苦楽。そして、大好きだった母との再会と別れ……。

 数々のフラッシュバックが、由実世の心の傷を溶かしていく。自身を取り戻した彼女が、明るい眼差しで面接官を見つめる。

「私、仲峯由実世と申します。新聞記者への強い憧れがあり、御社を志望させていただきました」
 ハキハキと発言するユミヨに対し、面接官たちがホッと胸を撫でおろす。

 由実世は質疑応答しつつ、瞼の端に溜まった涙を人差し指で拭い去る。心の影は完全に晴れ、由実世の人生は再び軌道に乗り始めたのだった。

                       了
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