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運命の始まり
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「運命の女神、ファタ様。どうか我らの願いを叶えてください」
黄金で飾られた神殿。
山のような貢ぎ物と、それを運ぶ見目麗しい男女。
一際きらびやかな祭壇の上から、運命の女神ファタは美しい物を眺めて、ニコリと微笑んだ。
その姿に人々はホゥと息を吐く。
女神ファタは美しい。
波打つ黄金の髪に青色の瞳。溢れんばかりの豊かな胸を見せつけるかのような、扇情的なラインのドレス。
誰しもが見惚れ、跪く。
ファタは美しい物が何より好きだ。
黄金の神殿のあるアストロン王国の王族は特に美しく、ファタのお気に入りだ。
「アストロンの王よ。そなたの願いを申すが良い」
「はい。我が王族は三百年程前に、愛の女神様の怒りをかい、本当に愛する者と結ばれなければ子が出来ぬ呪いを受けました。しかし幸いにもこの三百年、愛に恵まれ、今も一族は絶えることなく続いています。
現在唯一の皇太子は25歳になるにも関わらず、未だに決まった女性も作らず遊び歩き……。このままでは我が王族は滅びます。
どうかファタ様の運命の加護をいただきたく、お願い申し上げます」
「ふむ」
三百年程前にアストロンの王族が、愛の女神の侍女を弄び、女神の怒りをかった。
そのことは、ファタにはどうすることも出来ない。
この国王は愛する女を正妃に迎え、息子を授かったにもかかわらず、すぐ後に側室を三人迎えたことで、正妃との間に次の子を授かることはなかった。
政治的な政略結婚だったが、また愛の女神に睨まれたようだ。
「姉上の怒りが消えぬ以上、加護は授けられぬ」
しかし、お気に入りの王族が途絶えるのは、もったいない。
アストロン王族の特徴でもある、艶やかな白金色の髪、色素の薄い水色の瞳はファタの好みだ。
色の濃淡こそあれ、ファタの金髪碧眼と似ているからかもしれない。
美しい物が大好きなファタの、一番のお気に入りなのだ。
「……次の満月の夜、丘の上の大木に行くように、皇太子に伝えよ。必ず一人で行くのだ」
「そこに何があるのですか?」
「運命は可能性の一つ。自らの行動で、如何様にも変化する。強制することは許されない。そなた達は何も知らずともよい」
運命は抗うことの出来ない決定事項ではない。
ファタが示した運命も、皇太子の行動一つで消えてなくなる程度の道だ。
「さて、どんな結末になるか。我はしばらく目を瞑ろう。その方が面白い」
ファタが手を振った瞬間。祭壇からファタの姿が消えた。
※※※※※※※※※※※※※※※
アストロン王国の皇太子アレクシスは、夜の丘に向かっていた。
一人ではない。
アレクシスの隣には黒髪の令嬢がいる。アレクシスの腕に自分の腕を絡めて、しなだれかかるように歩いていた。
「すみません、ミラベル嬢。今夜は君とゆっくりするはずだったのに」
本来なら今頃、ミラベル伯爵令嬢とベッドでイチャイチャしていた頃だというのに。
「あら、わたくしはアレクシス様と一緒にいられたら、どこだって構いませんわ。アレクシス様と一緒に満月の夜の散歩だなんて、素敵です」
アレクシスの腕にピタリとくっついて、柔らかな胸を押し付けた。あざとくも可愛らしい仕草に、アレクシスはクスリと笑って、ミラベルの頭にキスをする。
(全く……王命とはいえ、なぜこんな場所に)
ミラベル伯爵令嬢との熱い夜を邪魔されたことは、別に構わない。どうせ明日はエメリーン侯爵令嬢と会うことになっている。
アレクシスは白金色の髪をかきあげて、ため息をついた。
国王陛下に丘の上に行くように言われたとき、理由を聞いても一切教えてくれなかった。
一人で行くようにと言われたが、一人だろうが二人だろうが問題はないだろう。今夜は先にミラベル伯爵令嬢との約束が入っていたのだから仕方がない。
(ここに何があるというんだ……)
今夜は満月。夜とはいえ、月明かりだけで十分なほど明るい。
夜風も気持ちがいい。
(まぁ、たまには夜の散歩も悪くないか)
気持ちを切り替えて二人寄り添いながら、丘の上を目指して歩く。
ようやく大木が見えて来た。
「アレクシス様、あれは何でしょう?」
「ん? なんだ、あれは」
大木がぼんやりと光っている。
月明かりとは違う。金緑色の光だ。
「ミラベル伯爵令嬢。少しここでお待ちください。危険がないか確認します」
「は、はい。お気をつけて!」
腰の剣帯に手をかけ、いつでも剣を抜けるようにしながら、アレクシスは大木へ向かって慎重に進んだ。
ーーーーーーーーーー
明日も投稿します。その後は日曜日と水曜日、週二で頑張ります。
黄金で飾られた神殿。
山のような貢ぎ物と、それを運ぶ見目麗しい男女。
一際きらびやかな祭壇の上から、運命の女神ファタは美しい物を眺めて、ニコリと微笑んだ。
その姿に人々はホゥと息を吐く。
女神ファタは美しい。
波打つ黄金の髪に青色の瞳。溢れんばかりの豊かな胸を見せつけるかのような、扇情的なラインのドレス。
誰しもが見惚れ、跪く。
ファタは美しい物が何より好きだ。
黄金の神殿のあるアストロン王国の王族は特に美しく、ファタのお気に入りだ。
「アストロンの王よ。そなたの願いを申すが良い」
「はい。我が王族は三百年程前に、愛の女神様の怒りをかい、本当に愛する者と結ばれなければ子が出来ぬ呪いを受けました。しかし幸いにもこの三百年、愛に恵まれ、今も一族は絶えることなく続いています。
現在唯一の皇太子は25歳になるにも関わらず、未だに決まった女性も作らず遊び歩き……。このままでは我が王族は滅びます。
どうかファタ様の運命の加護をいただきたく、お願い申し上げます」
「ふむ」
三百年程前にアストロンの王族が、愛の女神の侍女を弄び、女神の怒りをかった。
そのことは、ファタにはどうすることも出来ない。
この国王は愛する女を正妃に迎え、息子を授かったにもかかわらず、すぐ後に側室を三人迎えたことで、正妃との間に次の子を授かることはなかった。
政治的な政略結婚だったが、また愛の女神に睨まれたようだ。
「姉上の怒りが消えぬ以上、加護は授けられぬ」
しかし、お気に入りの王族が途絶えるのは、もったいない。
アストロン王族の特徴でもある、艶やかな白金色の髪、色素の薄い水色の瞳はファタの好みだ。
色の濃淡こそあれ、ファタの金髪碧眼と似ているからかもしれない。
美しい物が大好きなファタの、一番のお気に入りなのだ。
「……次の満月の夜、丘の上の大木に行くように、皇太子に伝えよ。必ず一人で行くのだ」
「そこに何があるのですか?」
「運命は可能性の一つ。自らの行動で、如何様にも変化する。強制することは許されない。そなた達は何も知らずともよい」
運命は抗うことの出来ない決定事項ではない。
ファタが示した運命も、皇太子の行動一つで消えてなくなる程度の道だ。
「さて、どんな結末になるか。我はしばらく目を瞑ろう。その方が面白い」
ファタが手を振った瞬間。祭壇からファタの姿が消えた。
※※※※※※※※※※※※※※※
アストロン王国の皇太子アレクシスは、夜の丘に向かっていた。
一人ではない。
アレクシスの隣には黒髪の令嬢がいる。アレクシスの腕に自分の腕を絡めて、しなだれかかるように歩いていた。
「すみません、ミラベル嬢。今夜は君とゆっくりするはずだったのに」
本来なら今頃、ミラベル伯爵令嬢とベッドでイチャイチャしていた頃だというのに。
「あら、わたくしはアレクシス様と一緒にいられたら、どこだって構いませんわ。アレクシス様と一緒に満月の夜の散歩だなんて、素敵です」
アレクシスの腕にピタリとくっついて、柔らかな胸を押し付けた。あざとくも可愛らしい仕草に、アレクシスはクスリと笑って、ミラベルの頭にキスをする。
(全く……王命とはいえ、なぜこんな場所に)
ミラベル伯爵令嬢との熱い夜を邪魔されたことは、別に構わない。どうせ明日はエメリーン侯爵令嬢と会うことになっている。
アレクシスは白金色の髪をかきあげて、ため息をついた。
国王陛下に丘の上に行くように言われたとき、理由を聞いても一切教えてくれなかった。
一人で行くようにと言われたが、一人だろうが二人だろうが問題はないだろう。今夜は先にミラベル伯爵令嬢との約束が入っていたのだから仕方がない。
(ここに何があるというんだ……)
今夜は満月。夜とはいえ、月明かりだけで十分なほど明るい。
夜風も気持ちがいい。
(まぁ、たまには夜の散歩も悪くないか)
気持ちを切り替えて二人寄り添いながら、丘の上を目指して歩く。
ようやく大木が見えて来た。
「アレクシス様、あれは何でしょう?」
「ん? なんだ、あれは」
大木がぼんやりと光っている。
月明かりとは違う。金緑色の光だ。
「ミラベル伯爵令嬢。少しここでお待ちください。危険がないか確認します」
「は、はい。お気をつけて!」
腰の剣帯に手をかけ、いつでも剣を抜けるようにしながら、アレクシスは大木へ向かって慎重に進んだ。
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