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新たな謎の肉

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「そういえば、エドガーとヴェロニカはどんな武器を使うの?」

 武器屋は様々な武器が揃っている。
 ヴィムの時は剣一択だったけど、これだけ種類があれば選び放題だ。
 弓は狩り向けで街中の護衛に向かないし、ヌンチャクみたいな武器は二人のイメージに合わないな。むしろパウルさんなら似合いそうだ。買って行こうかな。
 店の端の方に、棒とトゲトゲの鉄球が鎖で繋がっている武器があった。何だこれ。こんなの、振り回したら、間違って自分に当たって致命傷になるよ。鎖鎌も以下同文。
 あ、でも鎖鎌があれば、庭の悪魔の蔓をシュパパパパッと出来るかも知れない……パウルさんが。

「それ、メイスの一種で最新のモーニングスターだね。普通のモーニングスターはこっち」 

 ヴェロニカの指さす方を見ると、棒の先端にトゲトゲの鉄球がついた武器があった。これが通常のモーニングスターか。最新型よりずっと使い勝手が良さそうだ。狩りならね。街中ではトゲトゲはいらないよ。怖いよ。

「私はレイピアと短剣かな。エドガーは?」

 エドガーは寡黙な男だ。話しかけても必要最小限の返事しか帰って来ない、孤高の剣士みたいな印象を持っていた。たった今まで。

「エ、エドガー? エドガーさぁん? お~~い」

 寡黙な男、エドガーが目をキラキラさせながら武器を眺めている。私の呼びかけも聞こえないくらい。別に構わないよ。好きなだけ見なさい。やっぱり男の子だねぇ。

「エドガーは置いといて、ヴェロニカは好きなの選ぼうよ。これはどう?」

 一番目立つように飾っていたレイピアを指差すと、ヴェロニカが少し狼狽えた。

「あ、あれはミスリル製で最高級品だよ。さすがにあれは……」

「でも、あれが一番素敵じゃない?」

 品のある光沢を放った剣先は、華奢ですぐに折れてしまいそうだ。それをカバーするのが、異世界スーパー素材のミスリル。軽く強度もある。持ち手も上品な透かし彫りになっていて、美人剣士のヴェロニカにピッタリだ。
 鮮やかな赤毛に、高身長で、スタイル抜群なヴェロニカ姉さんがこのレイピアを持ったら……。
 それはまるで……。
 まるで「ベ◯薔薇」じゃないか! 素晴らしい!

「ヴェロニカ……もし、気に入らないとかじゃなければ、私の為にもコレにして欲しいな」

「マイカがそう言うなら、喜んで。こんな高級品ありがとう」

「いやいや、こちらこそお礼を言いたいくらいですよ。ふぉっふぉっふぉっ」

 私の目の保養にもなるしね。
 さて、次はトリップしているエドガーだ。

「エドガー、決まった?」

 肩を叩くと、エドガーはビクリと肩を揺らした。そんなにビックしなくても……そうとう深い部分までトリップしていたんだな。

「決まった?」

「い、いや。まだ……です」

 あららら……眺めるだけで満足なタイプ? コレクター気質でもあるのかな。

「いつもどんな武器を使うの?」

「昔は大剣を使っていた……ました」

「よし、まず敬語いらないから。普通に話そう」

 大剣か……バート村のイザークさんが背負っていたやつか。街中で大剣を振り回されたら被害者続出だな。街の外でならいいと思うけど……。

「じゃあ大剣と、短めのメイスにしようか。街中の護衛はメイスで対応出来そうだし。どうかな?」

「いいと思う」

 エドガーは武器に関しては、結構優柔不断そうだからな。私が選ぼう……と言っても武器の善し悪しは私には分からない。
 ここはヴェロニカの時と同じ、店のイチオシっぽい目立つ展示品だね。
 大剣のイチオシは……。

「……うん、普通っぽい」

 何の変哲もない大剣だった。何でこれがイチオシなのだろう。私にはさっぱり分かりません。
 
「いい大剣だ!」

 エドガーが喜んでいるから良しとしよう。

 メイスは一番シンプルなタイプを選んだ。ゴテゴテ飾りのついた物や、いかにも痛そうなのもあったけど、エドガーのイメージに合わないからね。お巡りさんの警棒みたいなイメージで良いチョイスだと思う。街中警護だからね。

 ヴェロニカも短剣を選び終えたようだし、お金を払おう。

 レイピア 60万ペリン。
 短剣 6万ペリン。
 大剣 80万ペリン。
 メイス 3万ペリン。

 大剣、高いな。普通の見た目なのに80万って……馬買えちゃうよ? あのサラブレッド並みに走る馬と、何の変哲もない見た目の剣と同じ値段だなんて……。名刀なのかな。それとも素材?

「この大剣て、素材は何?」

「アダマントだな」

 うん。知らない。きっと高級異世界素材なんだな。

「マイカ、それも買うの?」

 私が手に持っている武器を見て、ヴェロニカが首をかしげた。

「うん。パウルにお土産」

 ヌンチャク 5万5000ペリン。
 鎖鎌 70万ペリン。

 鎖鎌高すぎだろ。
 





「ようこそいらっしゃいました。マイカ・イシカワ様。こちらへどうぞ」

 役所に入るや否や、近くにいた職員に連れられて、応接スペースに案内される。
 何だか私が来ると大口取引が行われると、思っているみたいだ。
 今日は相談だけなんだけどな。

「ただ今、イシカワ様担当のクライブを連れてまいります。お待ち下さい」

「はい?」

 誰、クライブって。私の担当っていつの間に出来たの?

 私が椅子に座ると、エドガーとヴェロニカは私の後ろに控えるように立った。

「なんで二人とも座らないの?」

 主人の許可なく座れないとかそんな理由かと思ったら、ヴェロニカが困り顔で首を振る。

「護衛とはそういうものだよ。いつでもマイカを守れるようにね」

「ふぅ~~ん」

 そういえば、地球でもVIPの側にはサングラスと黒スーツのSPがいて、守るように人壁を作ってたっけ。私はVIPの気持ちでいればいいんだね。

「お待たせしました。マイカ・イシカワ様」

 やって来たのは、いつものお兄さんだ。
 この人がクライブさんか! やっと名前が判明したよ!

「こんにちは、クライブさん」

 やっと名前を呼べるよ。良かったよ。
 私が名前を呼ぶと、クライブさんは少し目を見開いた。この顔……さては私が名前を知らないと思っていたな。今度から何回でも呼ぶからね。

「今日はどういったご用件でしょうか」

「ご用件って言うか……相談なんですけど、あの家のお風呂を直したいんです。どこにお願いすればいいですかね?」

「それでしたら……」
 
 建築関係専門の人を紹介してもらった。地図を書いてもらったから、護衛二人に任せて案内してもらおう。





 路地裏の穴場食堂『金平糖』は今日もお客は一人もいなかった。

「いらっしゃいませ~~! あらあら、また来てくれて嬉しいわ!」

 愛想のいいオバちゃんが案内してくれる。
 今日は昨日より人数少ないから、じっくりメニューを選ぼう。

「ヴェロニカとエドガーは何食べたい?」

「「肉」かな」

 声を揃えて肉を推す二人が面白い。二人とも肉好きなんだね。

「ジャンジャン頼んで、三人でシェアしようか」

 メニューを見ても私には分からないし、三人で協力して肉料理を五品、魚料理を二品、サラダとスープを三人前、パンを注文した。
 ……多いよね? でもヴェロニカとエドガーなら大丈夫なはず。だってヴィムと同じくらい食べるんだもん。

 テーブルにズラリと料理が並ぶ。
 初めて見る、クークルじゃない肉もある。

「こ、これは!!」

肉料理の中に、日本人の憧れのアレがあった。

「マンガ肉だぁ!!」

 肉の塊に、両側に骨が突き出たアノ形をした肉だ。これを出されたら日本人なら齧り付きたくなるよね!

「皆さん! このマンガ肉、私は全部食べられません! が、しかし! 私は猛烈に齧り付きたい! 齧り付いてもいいでしょうか?」

「も、もちろん構わないよ。ねぇ、エドガー」

「ああ、構わない」

 私の熱いパッションが伝わったのか二人とも頷いてくれた。引かないでね……私じゃなくても、日本人は皆、同じ反応するから……多分。

「それでは、いただきます」

「「いただきます」」

 マンガ肉に齧り付くと、ムチムチっとした肉に歯が食い込む感触がする。以外と肉質は柔らかく、お歳暮のハムに噛りついているみたいだ。続いてジュワッと肉汁が口に溢れる。
 これ! 多くの日本人はこれを求めてるんだ!

「何? この肉は何?」

「それはモルントの肉だよ」 

 オバちゃんが教えてくれたけど……モルントって何?
 クークルにモルントに、謎の肉が増えたけど……正体は知らなくてもいいかな。見た目グロくて食欲なくなったら嫌だしね。

「オバちゃん! この店の料理、どれも美味しいね!」

「ありがとね。見ての通り寂れた店だけど、喜んでくれたら嬉しいよ」

 何でこんなに美味しい店に客足がないんだろう。場所かな? 口コミで広めてみようか。

「あんたたち、いい食べっぷりだね」

 オバちゃんが目を丸くして言うのも仕方がない。
 エドガーとヴェロニカの食べっぷりと言ったら気持ちがいいくらいだ。あっという間になくなって、エドガーなんてマンガ肉を追加した。
 モルント肉……今日の買い出しで買おうかな。フーゴならきっとキラキラした美味しい料理にしてくれるはず。うん、決定。
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