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探検隊結成しますか
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鍵の束は全部で五本。
赤、緑、白、金、銀の色がついている。
「どう考えたって、あの扉の鍵だよね」
足元でミルクがニャ~ンと鳴いた。
催促しているのは分かるよ。でも、何の準備もなしに突撃していいもの?
「ニャーー! ニャン!」
「ちょっと」
私の足をカリカリ引っ掻くから、バタバタと逃げるように部屋を出た瞬間。
「うわっ、うぶっ」
部屋を出たとたん目の前に壁が現れて、思いきり体当たりしてしまった。
壁からいい香りがする。爽やかで少しスパイシーな香りは、最近男達に人気の石鹸『月光と孤高の黒豹』だ。
「おっと。失礼、お嬢様」
「あーー、この壁はロルフか」
いい香りにトリップしていた私は、ロルフに抱きつくような状態になっていたことにやっと気が付いて、渋々身体を離した。
ガッシリした男の胸の中って、気持ちいいんだもん。安心感があるっていうか……ロルフだからかな。
ここが家でよかった。街のオバさん達に見られたら、なんて言われるか。ロルフはオバさん達のアイドルだからね。うっかり手でも繋ごうものなら、ロルフファンクラブのメンバーに「おさわり厳禁!」って叱られてしまうよ。
「そろそろ昼食なので呼びに来たんですけど……、今日のお嬢様はずいぶんと積極的ですね」
ニコリと悩殺スマイルを浮かべたロルフに、少しだけフラッとしただなんて、私も熟女の仲間入りだろうか。いやいやまだ20代前半なんだけどさ。
「後でじっくり……じゃなくて、今日のご飯はなに?」
「今日は海老ピラフとサーモンとクークルのエスカベッシュ、野菜のコンソメスープ。サラダのソースはヨーグルトとバルサミコ酢ですよ」
「詳しいね」
「厨房を通って来ましたから。で、デザートは俺……いや、レモンのソルベです」
「良かった。昼からデザートをおかわりするところだったよ」
大人のジョークを言い合いながら歩いていると、途中で一緒になったレオナルドが思い切り引いていた。
大人の道は遠いよ、レオナルド少年。
※※※※※※※※※※※※※※※
夕食後、宍戸先輩の家にランプを忘れたことに気付いて、再び移動扉を使った。
ランプの中の光る石は、蓄光タイプだから定期的に日に当てないといけない。普通なら昼は勝手に光を吸収するのだけれど、宍戸先輩の家のカーテンを未だに開けられないチキンな私のせいで、光を吸収出来ないんだよね。
クローゼットからボロ扉の鍵を開けて、すぐに扉を閉める。
ガッ。
「え」
扉が閉まる直前、隙間に足が挟まった。
いったい誰の足だ。
背筋がゾクリとする。
恐る恐る顔を上げると、見知った顔がある。
「クルト、ペトラ」
呆然と呼ぶと、クルトがニタリと笑った。
「お嬢さまの秘密、見ぃ~~ちゃった」
とっさに扉を閉めようとして、クルトが身体をねじ込んだ。
「なぁに無かったことにしようとしてんの。
ってかさ、コソコソこんなに面白そうなことして、ズルくない?」
言いながら、少しずつクルトの雰囲気が怪しくなっていく。言葉の端に不機嫌さが見え隠れしている気がする。
「お嬢さまってさぁ、いつも僕らと一線引いてるじゃん。信用してませんって言われてる気がして、ちょっと気分悪いよね」
血の気が引く。
クルトの言ったことは正しい。
奴隷という名で縛っているうちは、主人を裏切る真似は出来ない。だけど、奴隷から解放した後は? 手のひら返して、私の情報を売ることだって出来るだろう。
みんなのことを大事に思っていることは本当だ。
だけど、私が心から信用していないことをクルトは知っている。クルトだけじゃなくて、みんな知っていたとしたら……。
(そんな奴、誰だって嫌だよね)
現にクルトは怒っているし、ペトロネラは表情がない。
「お嬢さまがそんな態度だとさぁ、ーーー痛てっ。ちょっとペトラ! 冗談だってば。本気で殴るのやめて」
「冗談でもダメです」
頭にペトロネラの拳骨を食らったクルトは、凄い音がしたわりにたいして痛がりもせずにヘラリと笑った。
「だからさ、僕とペトラは一生お嬢さまの奴隷でいるから、信用してって話。もともと呪いを受けた時点で死ぬなって覚悟してたんだよ? でもお嬢さまが生かしたんだから、責任とって一生側においてよね」
「私も離れるつもりはありません」
クルトとペトロネラは呪いも末期で、本当に命も消える寸前だった。
命の恩人として感謝している、ということだろうか。
「お嬢さまが嫌だって言っても、絶対くっついて離れないけどね」
「婿と嫁をもらったと思って諦めて下さい」
軽くストーカー宣言をする二人に、私は白旗をあげた。
クルトが挟まったままだった扉を開ける。
「へぇ。ここ、どこ」
切れかけのランプをつけても、部屋はなかなか暗い。そんな中でも、クルトとペトロネラは見えているかのように普通に歩く。
「ん~~、住所は分からないけど、ケンゴ・シシドの家」
「マジ?」
二人の生暖かい目が、じっと私を見た。
「言っておくけど、私はケンゴ・シシドの血縁者とかじゃないからね」
「あーーはいはい」
なんで残念な子を見るような目で見るかな。
赤、緑、白、金、銀の色がついている。
「どう考えたって、あの扉の鍵だよね」
足元でミルクがニャ~ンと鳴いた。
催促しているのは分かるよ。でも、何の準備もなしに突撃していいもの?
「ニャーー! ニャン!」
「ちょっと」
私の足をカリカリ引っ掻くから、バタバタと逃げるように部屋を出た瞬間。
「うわっ、うぶっ」
部屋を出たとたん目の前に壁が現れて、思いきり体当たりしてしまった。
壁からいい香りがする。爽やかで少しスパイシーな香りは、最近男達に人気の石鹸『月光と孤高の黒豹』だ。
「おっと。失礼、お嬢様」
「あーー、この壁はロルフか」
いい香りにトリップしていた私は、ロルフに抱きつくような状態になっていたことにやっと気が付いて、渋々身体を離した。
ガッシリした男の胸の中って、気持ちいいんだもん。安心感があるっていうか……ロルフだからかな。
ここが家でよかった。街のオバさん達に見られたら、なんて言われるか。ロルフはオバさん達のアイドルだからね。うっかり手でも繋ごうものなら、ロルフファンクラブのメンバーに「おさわり厳禁!」って叱られてしまうよ。
「そろそろ昼食なので呼びに来たんですけど……、今日のお嬢様はずいぶんと積極的ですね」
ニコリと悩殺スマイルを浮かべたロルフに、少しだけフラッとしただなんて、私も熟女の仲間入りだろうか。いやいやまだ20代前半なんだけどさ。
「後でじっくり……じゃなくて、今日のご飯はなに?」
「今日は海老ピラフとサーモンとクークルのエスカベッシュ、野菜のコンソメスープ。サラダのソースはヨーグルトとバルサミコ酢ですよ」
「詳しいね」
「厨房を通って来ましたから。で、デザートは俺……いや、レモンのソルベです」
「良かった。昼からデザートをおかわりするところだったよ」
大人のジョークを言い合いながら歩いていると、途中で一緒になったレオナルドが思い切り引いていた。
大人の道は遠いよ、レオナルド少年。
※※※※※※※※※※※※※※※
夕食後、宍戸先輩の家にランプを忘れたことに気付いて、再び移動扉を使った。
ランプの中の光る石は、蓄光タイプだから定期的に日に当てないといけない。普通なら昼は勝手に光を吸収するのだけれど、宍戸先輩の家のカーテンを未だに開けられないチキンな私のせいで、光を吸収出来ないんだよね。
クローゼットからボロ扉の鍵を開けて、すぐに扉を閉める。
ガッ。
「え」
扉が閉まる直前、隙間に足が挟まった。
いったい誰の足だ。
背筋がゾクリとする。
恐る恐る顔を上げると、見知った顔がある。
「クルト、ペトラ」
呆然と呼ぶと、クルトがニタリと笑った。
「お嬢さまの秘密、見ぃ~~ちゃった」
とっさに扉を閉めようとして、クルトが身体をねじ込んだ。
「なぁに無かったことにしようとしてんの。
ってかさ、コソコソこんなに面白そうなことして、ズルくない?」
言いながら、少しずつクルトの雰囲気が怪しくなっていく。言葉の端に不機嫌さが見え隠れしている気がする。
「お嬢さまってさぁ、いつも僕らと一線引いてるじゃん。信用してませんって言われてる気がして、ちょっと気分悪いよね」
血の気が引く。
クルトの言ったことは正しい。
奴隷という名で縛っているうちは、主人を裏切る真似は出来ない。だけど、奴隷から解放した後は? 手のひら返して、私の情報を売ることだって出来るだろう。
みんなのことを大事に思っていることは本当だ。
だけど、私が心から信用していないことをクルトは知っている。クルトだけじゃなくて、みんな知っていたとしたら……。
(そんな奴、誰だって嫌だよね)
現にクルトは怒っているし、ペトロネラは表情がない。
「お嬢さまがそんな態度だとさぁ、ーーー痛てっ。ちょっとペトラ! 冗談だってば。本気で殴るのやめて」
「冗談でもダメです」
頭にペトロネラの拳骨を食らったクルトは、凄い音がしたわりにたいして痛がりもせずにヘラリと笑った。
「だからさ、僕とペトラは一生お嬢さまの奴隷でいるから、信用してって話。もともと呪いを受けた時点で死ぬなって覚悟してたんだよ? でもお嬢さまが生かしたんだから、責任とって一生側においてよね」
「私も離れるつもりはありません」
クルトとペトロネラは呪いも末期で、本当に命も消える寸前だった。
命の恩人として感謝している、ということだろうか。
「お嬢さまが嫌だって言っても、絶対くっついて離れないけどね」
「婿と嫁をもらったと思って諦めて下さい」
軽くストーカー宣言をする二人に、私は白旗をあげた。
クルトが挟まったままだった扉を開ける。
「へぇ。ここ、どこ」
切れかけのランプをつけても、部屋はなかなか暗い。そんな中でも、クルトとペトロネラは見えているかのように普通に歩く。
「ん~~、住所は分からないけど、ケンゴ・シシドの家」
「マジ?」
二人の生暖かい目が、じっと私を見た。
「言っておくけど、私はケンゴ・シシドの血縁者とかじゃないからね」
「あーーはいはい」
なんで残念な子を見るような目で見るかな。
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