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銀のイヴリン
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結局、白の扉と金の扉はダメだった。
金の扉は、島国グリムランに繋がっているみたいだから、行ってみたかったんだけどね。
宍戸先輩の四人目の恋人は、ユリア。才色兼備なお嬢様だったらしい。
島国グリムランはパウルの故郷だ。パウル曰く、島国特有の独自の文化も多いらしいから興味あったんだけど。
グリムランに繋がっていることをパウルに言ったら、表情は変わらなかったけど、行きたくはなさそうだった。
「じゃあ、最後の銀の扉に行きますか」
今日のメンバーはヴィムとクルト。
銀の扉も先の扉と同様に、すでに使えない扉かもしれない。
「この先に繋がってるのは、サリア共和国。知ってる?」
「知ってる~~。小島が100個くらいあって、町中に水路が流れてる国だよね。水上都市で有名な。
僕は行ったことないけどさ、一年に一回、水に沈むんでしょ」
「俺は昔一度行ったことがある。狭い水路を小さな舟がすいすい通って、なかなか個性的な国だった」
話だけ聞くと、イタリアのベネチアが思い浮かぶ。
ベネチアでは、アクアアルタと呼ばれる高潮の影響で街が水没するけど、サリア共和国ではどうなんだろう。
「あの国は、国民から選ばれる大統領が国を纏めているんだ」
「あ~~、あのドロドロしたヤツかぁ。毒殺、暗殺、満載のヤツねぇ。他国まで話題に出てたよ。あんなんで、よく国民から選ばれたって言えるよな」
「何それ、怖い国?」
共和国というからには君主制でないことは分かっていたけど、地球で知る大統領選挙とはまた違うみたいだ。
この国にいる宍戸先輩の五人目の恋人は、イヴリン。金髪碧眼の美女で、宍戸先輩の最も好みの外見だった。手帳には、容姿を褒める言葉ばかりだ。
「まぁ、とにかく行ってみよっか。開くとも限らないしね」
金の鍵を扉に差し込む。
ーーーーカチャリ。
「開いたじゃん」
あっさり開いてしまった。
「じゃ、開けるよ」
軋む音もなく、スムーズに扉は開いた。
少しだけ開いて、覗き込む。もう少しよく見ようと頭を突っ込んだ。けれど、すぐに頭を戻して静かに扉を閉めた。
「何? 中に何かあった?」
「どうかしたのか?」
ヴィムとクルトが私の顔を覗き込む。
私はたった今自分で見た光景が信じられなくて、固まってしまった。
だってこれはヤバい。
「ちょっと、二人とも。覗いて見てよ」
再び扉を開くと、さっき私がしたように二人とも扉に頭だけを入れた。
すぐに二人は無言で扉を閉める。
「とりあえず、部屋の中に人の気配はなかったよ」
「だが、侵入者を拒む罠がいくつかあった」
部屋の中に人がいないのも、罠があるのは当然だ。扉の向こう側は、誰彼も入れる場所ではない。
扉を開けてすぐ目の前に見えたのは、硝子のようなケースに入った、きらびやかな黄金の王冠だった。
金はこの世界でも価値が高い。更に子供の拳大くらいの赤い宝石が嵌め込まれ、全体的に色鮮やかな小さな宝石で飾られている。
王冠なんて権力の象徴だから、これでもかってくらい豪華なデザインなのは分かるけど……これを頭に乗せたら、かなり重いだろうな。
王冠だけならまだしも、その周りには宝石だらけのアクセサリーや、宝石のついた実用性のなさそうな剣なども飾られていた。
あの部屋は、もしかして……。
「宝物庫……だったりするのかな」
「だろうな。一瞬見ただけだったが、あの王冠はサリア共和国の先代大統領の就任式で見たことがある」
「デリック王の呪いの指輪があったから、サリア共和国の宝物庫で間違いないよ。あれって毎回大統領候補者達を呪い殺してるって噂の指輪じゃん」
まさか銀の扉が宝物庫に保管されているなんて。
確かに移動扉は希少だけれど、世界的にはまだいくつも残っている。王冠や有名な宝石なんかと一緒の扱いになっているなんてね。
「扉が宝物庫に繋がっているということは……」
「盗み放題だね」
「盗みません」
「痛てっ。ヴィム兄ちゃん、足踏むとか幼稚すぎ……痛いってばぁ」
盗まないけど、私達が宝物庫の中にいるなんて誰かに見られたら、絶対に怪盗美女だと思われちゃう。
クルトの視線が痛い気がするのは、私の気のせいだよね。
「んじゃさ、僕とヴィム兄ちゃんで宝物庫に抜け道作れるかやってみる」
二人が言うには、宝物庫は普段から警備を強化する場所じゃないらしい。大抵、入り口の外側に警備兵がいるだけ。
入り口から中に人を入れなければ、問題ないものね。まさか中に突然人が現れるなんて、誰も考えないし。
「その間、私は宝物見学してようかな」
気になる物がたくさんあったんだよね。国の秘蔵のお宝なんて、めったに見れる物じゃないし。
「マイカはあまり動くなよ。罠が作動したら死ぬこともあるから」
「そうそう。お嬢さまって、なぁんかヤラかしそうだよねぇ」
失礼な。
うろうろするつもりはないよ。扉の周辺にある物で我慢するよ。
扉のすぐ裏側にある、ワインレッドのいかにもなマントを見ようとした時。
「「あ」」
ヴィムとクルトの声が重なる。
「え?」
振り向く間もなく、私の足元から床が消えた。
金の扉は、島国グリムランに繋がっているみたいだから、行ってみたかったんだけどね。
宍戸先輩の四人目の恋人は、ユリア。才色兼備なお嬢様だったらしい。
島国グリムランはパウルの故郷だ。パウル曰く、島国特有の独自の文化も多いらしいから興味あったんだけど。
グリムランに繋がっていることをパウルに言ったら、表情は変わらなかったけど、行きたくはなさそうだった。
「じゃあ、最後の銀の扉に行きますか」
今日のメンバーはヴィムとクルト。
銀の扉も先の扉と同様に、すでに使えない扉かもしれない。
「この先に繋がってるのは、サリア共和国。知ってる?」
「知ってる~~。小島が100個くらいあって、町中に水路が流れてる国だよね。水上都市で有名な。
僕は行ったことないけどさ、一年に一回、水に沈むんでしょ」
「俺は昔一度行ったことがある。狭い水路を小さな舟がすいすい通って、なかなか個性的な国だった」
話だけ聞くと、イタリアのベネチアが思い浮かぶ。
ベネチアでは、アクアアルタと呼ばれる高潮の影響で街が水没するけど、サリア共和国ではどうなんだろう。
「あの国は、国民から選ばれる大統領が国を纏めているんだ」
「あ~~、あのドロドロしたヤツかぁ。毒殺、暗殺、満載のヤツねぇ。他国まで話題に出てたよ。あんなんで、よく国民から選ばれたって言えるよな」
「何それ、怖い国?」
共和国というからには君主制でないことは分かっていたけど、地球で知る大統領選挙とはまた違うみたいだ。
この国にいる宍戸先輩の五人目の恋人は、イヴリン。金髪碧眼の美女で、宍戸先輩の最も好みの外見だった。手帳には、容姿を褒める言葉ばかりだ。
「まぁ、とにかく行ってみよっか。開くとも限らないしね」
金の鍵を扉に差し込む。
ーーーーカチャリ。
「開いたじゃん」
あっさり開いてしまった。
「じゃ、開けるよ」
軋む音もなく、スムーズに扉は開いた。
少しだけ開いて、覗き込む。もう少しよく見ようと頭を突っ込んだ。けれど、すぐに頭を戻して静かに扉を閉めた。
「何? 中に何かあった?」
「どうかしたのか?」
ヴィムとクルトが私の顔を覗き込む。
私はたった今自分で見た光景が信じられなくて、固まってしまった。
だってこれはヤバい。
「ちょっと、二人とも。覗いて見てよ」
再び扉を開くと、さっき私がしたように二人とも扉に頭だけを入れた。
すぐに二人は無言で扉を閉める。
「とりあえず、部屋の中に人の気配はなかったよ」
「だが、侵入者を拒む罠がいくつかあった」
部屋の中に人がいないのも、罠があるのは当然だ。扉の向こう側は、誰彼も入れる場所ではない。
扉を開けてすぐ目の前に見えたのは、硝子のようなケースに入った、きらびやかな黄金の王冠だった。
金はこの世界でも価値が高い。更に子供の拳大くらいの赤い宝石が嵌め込まれ、全体的に色鮮やかな小さな宝石で飾られている。
王冠なんて権力の象徴だから、これでもかってくらい豪華なデザインなのは分かるけど……これを頭に乗せたら、かなり重いだろうな。
王冠だけならまだしも、その周りには宝石だらけのアクセサリーや、宝石のついた実用性のなさそうな剣なども飾られていた。
あの部屋は、もしかして……。
「宝物庫……だったりするのかな」
「だろうな。一瞬見ただけだったが、あの王冠はサリア共和国の先代大統領の就任式で見たことがある」
「デリック王の呪いの指輪があったから、サリア共和国の宝物庫で間違いないよ。あれって毎回大統領候補者達を呪い殺してるって噂の指輪じゃん」
まさか銀の扉が宝物庫に保管されているなんて。
確かに移動扉は希少だけれど、世界的にはまだいくつも残っている。王冠や有名な宝石なんかと一緒の扱いになっているなんてね。
「扉が宝物庫に繋がっているということは……」
「盗み放題だね」
「盗みません」
「痛てっ。ヴィム兄ちゃん、足踏むとか幼稚すぎ……痛いってばぁ」
盗まないけど、私達が宝物庫の中にいるなんて誰かに見られたら、絶対に怪盗美女だと思われちゃう。
クルトの視線が痛い気がするのは、私の気のせいだよね。
「んじゃさ、僕とヴィム兄ちゃんで宝物庫に抜け道作れるかやってみる」
二人が言うには、宝物庫は普段から警備を強化する場所じゃないらしい。大抵、入り口の外側に警備兵がいるだけ。
入り口から中に人を入れなければ、問題ないものね。まさか中に突然人が現れるなんて、誰も考えないし。
「その間、私は宝物見学してようかな」
気になる物がたくさんあったんだよね。国の秘蔵のお宝なんて、めったに見れる物じゃないし。
「マイカはあまり動くなよ。罠が作動したら死ぬこともあるから」
「そうそう。お嬢さまって、なぁんかヤラかしそうだよねぇ」
失礼な。
うろうろするつもりはないよ。扉の周辺にある物で我慢するよ。
扉のすぐ裏側にある、ワインレッドのいかにもなマントを見ようとした時。
「「あ」」
ヴィムとクルトの声が重なる。
「え?」
振り向く間もなく、私の足元から床が消えた。
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