異世界でお金を使わないといけません。

りんご飴

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大人買いの快感

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 屋台ストリートから外れると、アジトと同じようなゲルがいくつも並ぶようになった。
 少しアジトと形状が違うのは、移動式か固定式かの違いらしい。

「この国の家って、みんなこんな感じ?」

「はい。木材も輸入ですし、この国の石は固すぎて加工に向かないので、家は全てゲルです」

「…………ゲルね。そのままの名前なんだ……」

 私の頭の中で勝手にゲルって呼んでいたけど、本当にゲルと言うらしい。女神の手抜きじゃないかな、コレ。

 家は全てゲルと言っても、王宮は別だ。
 王宮はさすがに輸入した石をふんだんに使用した、財に物を言わした造りらしい。
 王族は貧民のガリガリ具合を知っているのかな。知っていたら、クズ草なんて食べていないか。

 王宮は例外だけれど、貴族の家はゲルだ。
 もちろんただのゲルではない。特大サイズのゲルと大小様々なサイズのゲルを組み合わせた、豪華版のゲルだ。

 もちろん平民も、もっと下層のガリガリな貧民達も、ゲルだ。
 貧民達が使っているゲルは小型の物が主流で、手直しに手直しを加え、親子代々使っているらしい。

 レイダック国の生活習慣に習って、私もアジトのボロゲルを修理しようかな……なんて思って、ゲルの素材を売っているゲル工房に来てみたんだけど……。

「いらっしゃい! うちは新品から中古まで、素材からロープ一本まで、なんでも取り揃えていますよ!」

 明るい女性が営業スマイル全開で近寄って来た。
 この世界の商売人は、商魂たくましい人が多い気がする。

 私がゲルの外布用の素材を触ったのを見て、すぐにいくつかの商品を集めて来た。

「こちらが新品です。色合いは白から灰色まで様々ですが、白の性能は貴族様御用達と変わらないほど最高品ですよ!
 次に、少し質は落ちますが、こちらの素材も通気性抜群でオススメですよ! 新品にしては値段もお得です!
 後は……中古品ですが、貴族様のお下がり品です。少々手直ししていますが、元々の品質が最高級品なので、お値段以上の品ですよ!」

 確かにどれも質はいい。って言うか、アジトのボロ布と比べたら、なんでもよく見えるよね。

 値段はゲルの大きさで変わるけど、全て貨幣での支払いのようだった。
 それなら貨幣に縁がない貧民達は、ゲルの素材をどうやって調達しているんだろう。
 ゲルの骨組み一本でも、竹のような軽くてしなやかな輸入植物を使用しているから、それなりの値段がするのに。
 その疑問を口にしたとたん、店員の態度が急変した。

 チッと舌打ちする。

「はっ、そんないい服着てるくせして、貧乏人かい! 貧乏人ならコレで十分だろ?」

 出された品は、廃棄品じゃないのかと思うくらいのボロだった。
 アジトの継ぎはぎだらけの外布といい勝負かもしれない。汚れが少ない分、こっちの方がマシかも程度の物だ。

「ガロ肉なら20匹分。アスのチーズなら3つだよ」

 やっぱり貧民の収入源はガロ肉とチーズなのか。っていうか、ガロ肉は肉屋で嫌っていうほど見て来た。サイズで値段は違うけれど、だいたい150ペリン~300ペリンほど。
 ガロ肉のシチューが一人前30ペリン。
 そう考えると、このボロ布がガロ肉20匹分って……最低でも3000ペリンでしょう? シチュー100食分だよ? こんなボロ布が。これは貧民がガリガリになるわけだよね~~。
 ゲル一式揃えたら、ボロゲルでも、かなりの出費になるじゃないか。

 ペトロネラが店員の女性をジッと見ていて、何やら怖い感じが……。

「お嬢様。私とこの子達は少し外に出ています」

「あ、うん」

「失礼します。……行くよ」

 ペトロネラが両手に子供の首根っこを持ち、マインが残りの子供達を促しながら外に出て行った。

 何だったんだろう。トイレタイム?

「あ~~、あれはさぁ、あの女の態度を見て飛び付きそうになってたガキんちょ達に、教育的指導ってヤツ? 僕よりペトラの方が加減上手いから大丈夫だよ~~」

「え~~っ、野生動物じゃあるまいし。そんなすぐ飛び付かないでしょ」

「甘い甘い。ガキはすぐ噛みつくんだって」

 それは……思春期? 反抗期? 学校の窓ガラスを割って歩きたいくらいの、もどかしい気持ちのヤツ? 年頃独特のヤツかもしれないな。

「ちょっと、あんたら! 買う気ないなら今すぐ出ていきな! こっちも商売なんだ。貧乏人の遊びに付き合う気はないよ!」

 痺れを切らした店員が大きな声を出す。

 そうそう。私は買い物しなくちゃ。

 あのボロゲルは、どんなに外側を整えても駄目だ。盗賊達が暮らした匂いが染み付いているからね。私が嫌だ。
 それならばーーーー。

「大きいゲル一式を一つと、小さめのゲル一式を6つ。色は灰色で、全て新品の最上級の物をちょうだい」

「は? 冷やかしなら……」

 ジャラジャラ。

 派手な音を鳴らして、テーブルの上に出した大金貨一掴み。さすがに足りないかと思って、さらにもう一掴み。

 ええと、値段を聞く前に出しちゃったけど……足りないかな。さすがに豪邸一つ分よりは安いよね?
 もう一掴み出したところで、店員が悲鳴をあげた。

「貧乏人なもので、このくらいしかお金がないんだけど……足りるかしら?」

「い、今すぐ計算しますっ!!」

 金額を誤魔化されないように、クルトがニコリと微笑みながら、店員の側に張り付いた。
 焦って計算する店員にわざと口出ししては、店員がヒィヒィ言いながら計算をやり直している。

 さてさて、次の買い物に行きますか。

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