156 / 162
森の秘密
しおりを挟む
「今日の予定ですが、ランタナ国の屋敷で、ルシオ・セルバンテス様に水路計画への投資金の受け渡し。サリア共和国へお米と醤油の買い出し。夕方にサンダル建設と共に、バート村の建設場所の確認。
変更はございますか?」
朝食の後、いつものようにアルバンが今日の予定を確認に来た。
私の予定も、なかなかグローバルな計画になって来たな。
「それから、森の家の場所の検討がつきました」
「そう」
まるでついでの話のようにサラリと言うから、流してしまいそうになった。これは流したら駄目なやつだ。
「ちょっと待って。どういうことか、一から十まで説明をお願いします」
私は一を聞いて十を知るタイプじゃないから、しっかり説明求むよ、アルバン。
という訳で、宍戸先輩の森の家にやって来た。
メンバーはアルバン、ベルタ、クルト、パウル、ヴィム。
本日、エドガーはレイダック国。ペトロネラはランタナ国にいる。
アルバンが広げた大きな紙のまわりに、みんなが集まって覗き込む。
大きな世界地図だった。
世界地図といっても、地球の世界地図をイメージしたら、子供の落書きみたいな大雑把な地図だ。
「ここがグランヴァルト国。ここがランタナ国で、サリア共和国がこちらですね」
一から十までって言ったから、アルバンは丁寧に説明をしてくれる。
やがて、アルバンの指が止まった。
「オルネ国とドルーナ公国、そしてカルルーク国。この三国に囲まれた、この場所を見てください。広大な森があります。未開の森と呼ばれているそうですが、私はこの場所こそ、ケンゴ・シシドの森だと確信しております」
「ワシもカルルークで聞いたな。未開の森はデカイ獣がいるから、誰も中に入らないんだと」
そのデカイ獣って、森の主なのでは? と思ったけど、言わないでおこう。もうパウル達が倒しちゃったし、今は私達の血肉になっちゃったもの。過去一の肉質だったよ。
静かに聞いていたベルタが手を挙げる。
「私も聞いたことがあります。
私はドルーナ公国出身ですが、ドルーナ公国では、この森は神聖な神の森と呼ばれていて、立入禁止なんです。この辺りは有名な神殿があるんですよ」
「なるほど……まずは正確な位置を知るために、何か目印になるような物を探しましょうか」
私は宍戸先輩の手帳をパラパラと捲った。
ドルーナ公国。
この世界唯一、公国とつく国だ。国土の3分の1が森林で、女神が降臨した地だと言われている。
宍戸先輩曰く、別に女神が意図を持ってドルーナ公国に降臨したわけじゃない。女神はただ落とし物を拾いに降りただけ。それを人間に見られちゃったものだから、あら大変。ニッコリ手を振ってすぐ消えたけど、いつの間にか女神降臨の地となった。あの女神なら、あり得る話だ。
小国といえども、神聖な国と言われているから、他の国は手を出したりしない。
オルネ王国。
通称、酒の国。良質なアルコール類の産地。
ワインが一番有名だけど、宍戸先輩のお好みは果実酒などの甘いお酒らしい。女みたいだと笑われたと、宍戸先輩が悪筆をさらに崩して書いている。
イライラしながら書いたんだろうね。その後の文字はとても読めたような物じゃない。
「ん? ええと、読めるのは……『馬鹿? 阿保?』……子供の喧嘩みたいだね。
ええと、あとは……う~~っ、全然読めない。あ、ここ。『ロ……ビン……のくせに……』って、ロビンってあのロビン? ロビン・ハルガス?」
何とか読めた文字に、知っている名前を見つけて、私は大きな声を出してしまった。
みんなが私に注目する。
「あ、ちょっとよく読めないんだけど、ロビンって書いてある。たぶんケンゴ・シシドは、オルネ国でロビン・ハルガスと喧嘩したみたい」
宍戸先輩はロビン・ハルガスの名前を借りて、旅をしていた。
ロビンさんと一緒にお酒を飲んでいたなら、ロビンさんがオルネ王国に住んでいた可能性があるんじゃないか。
何にしろ、ロビン・ハルガスの名前を聞いたのは久しぶりだ。
「私、オルネ王国に行ってみたいな」
宍戸先輩の家で最初に見つけたロビン・ハルガスへのメモ。いくつか見つかった扉の納品書。それと同じ数の請求書もあった。
どうやら扉は後払いだったようで、未払いのままの物がけっこう残っていたのだ。
ロビン・ハルガスさんが今も生存しているかは分からない。それでも家族はいるはずだ。
「ロビン・ハルガスさんを探して、請求書のお金を渡さなきゃ」
宍戸先輩のお金を預かる者として。
一方、私以外は。
「クルト、お前は北を探せ。ヴィムは西へ。わしは南に行く」
「「了解」」
「分かりました。エドガーが戻り次第、東へ向かわせます」
あれよあれよと言ううちに、森の本格的散策が決定していた。
森の捜索の結果は一週間もしないうちに出た。
「北はカルルーク国の端っこだったよ。でもさ、かなり遠かった。行かない方がいいよ」
「南はドルーナ公国。刺や毒のある植物が多かったから、近付かない方がいいだろう」
「東は北と同じ、カルルーク国王の国土だった」
「西はオルネ王国だった。近くにそこそこ大きい街があった。草の背丈が高いから歩きにくいが、草を刈ればマイカも行けると思う」
西に決定だ。
問題はなかなか遠いこと。野宿は必須だ。
変更はございますか?」
朝食の後、いつものようにアルバンが今日の予定を確認に来た。
私の予定も、なかなかグローバルな計画になって来たな。
「それから、森の家の場所の検討がつきました」
「そう」
まるでついでの話のようにサラリと言うから、流してしまいそうになった。これは流したら駄目なやつだ。
「ちょっと待って。どういうことか、一から十まで説明をお願いします」
私は一を聞いて十を知るタイプじゃないから、しっかり説明求むよ、アルバン。
という訳で、宍戸先輩の森の家にやって来た。
メンバーはアルバン、ベルタ、クルト、パウル、ヴィム。
本日、エドガーはレイダック国。ペトロネラはランタナ国にいる。
アルバンが広げた大きな紙のまわりに、みんなが集まって覗き込む。
大きな世界地図だった。
世界地図といっても、地球の世界地図をイメージしたら、子供の落書きみたいな大雑把な地図だ。
「ここがグランヴァルト国。ここがランタナ国で、サリア共和国がこちらですね」
一から十までって言ったから、アルバンは丁寧に説明をしてくれる。
やがて、アルバンの指が止まった。
「オルネ国とドルーナ公国、そしてカルルーク国。この三国に囲まれた、この場所を見てください。広大な森があります。未開の森と呼ばれているそうですが、私はこの場所こそ、ケンゴ・シシドの森だと確信しております」
「ワシもカルルークで聞いたな。未開の森はデカイ獣がいるから、誰も中に入らないんだと」
そのデカイ獣って、森の主なのでは? と思ったけど、言わないでおこう。もうパウル達が倒しちゃったし、今は私達の血肉になっちゃったもの。過去一の肉質だったよ。
静かに聞いていたベルタが手を挙げる。
「私も聞いたことがあります。
私はドルーナ公国出身ですが、ドルーナ公国では、この森は神聖な神の森と呼ばれていて、立入禁止なんです。この辺りは有名な神殿があるんですよ」
「なるほど……まずは正確な位置を知るために、何か目印になるような物を探しましょうか」
私は宍戸先輩の手帳をパラパラと捲った。
ドルーナ公国。
この世界唯一、公国とつく国だ。国土の3分の1が森林で、女神が降臨した地だと言われている。
宍戸先輩曰く、別に女神が意図を持ってドルーナ公国に降臨したわけじゃない。女神はただ落とし物を拾いに降りただけ。それを人間に見られちゃったものだから、あら大変。ニッコリ手を振ってすぐ消えたけど、いつの間にか女神降臨の地となった。あの女神なら、あり得る話だ。
小国といえども、神聖な国と言われているから、他の国は手を出したりしない。
オルネ王国。
通称、酒の国。良質なアルコール類の産地。
ワインが一番有名だけど、宍戸先輩のお好みは果実酒などの甘いお酒らしい。女みたいだと笑われたと、宍戸先輩が悪筆をさらに崩して書いている。
イライラしながら書いたんだろうね。その後の文字はとても読めたような物じゃない。
「ん? ええと、読めるのは……『馬鹿? 阿保?』……子供の喧嘩みたいだね。
ええと、あとは……う~~っ、全然読めない。あ、ここ。『ロ……ビン……のくせに……』って、ロビンってあのロビン? ロビン・ハルガス?」
何とか読めた文字に、知っている名前を見つけて、私は大きな声を出してしまった。
みんなが私に注目する。
「あ、ちょっとよく読めないんだけど、ロビンって書いてある。たぶんケンゴ・シシドは、オルネ国でロビン・ハルガスと喧嘩したみたい」
宍戸先輩はロビン・ハルガスの名前を借りて、旅をしていた。
ロビンさんと一緒にお酒を飲んでいたなら、ロビンさんがオルネ王国に住んでいた可能性があるんじゃないか。
何にしろ、ロビン・ハルガスの名前を聞いたのは久しぶりだ。
「私、オルネ王国に行ってみたいな」
宍戸先輩の家で最初に見つけたロビン・ハルガスへのメモ。いくつか見つかった扉の納品書。それと同じ数の請求書もあった。
どうやら扉は後払いだったようで、未払いのままの物がけっこう残っていたのだ。
ロビン・ハルガスさんが今も生存しているかは分からない。それでも家族はいるはずだ。
「ロビン・ハルガスさんを探して、請求書のお金を渡さなきゃ」
宍戸先輩のお金を預かる者として。
一方、私以外は。
「クルト、お前は北を探せ。ヴィムは西へ。わしは南に行く」
「「了解」」
「分かりました。エドガーが戻り次第、東へ向かわせます」
あれよあれよと言ううちに、森の本格的散策が決定していた。
森の捜索の結果は一週間もしないうちに出た。
「北はカルルーク国の端っこだったよ。でもさ、かなり遠かった。行かない方がいいよ」
「南はドルーナ公国。刺や毒のある植物が多かったから、近付かない方がいいだろう」
「東は北と同じ、カルルーク国王の国土だった」
「西はオルネ王国だった。近くにそこそこ大きい街があった。草の背丈が高いから歩きにくいが、草を刈ればマイカも行けると思う」
西に決定だ。
問題はなかなか遠いこと。野宿は必須だ。
1
あなたにおすすめの小説
【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。
和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。
黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。
私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと!
薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。
そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。
目指すは平和で平凡なハッピーライフ!
連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。
この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。
*他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~
鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。
そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。
そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。
「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」
オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く!
ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。
いざ……はじまり、はじまり……。
※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜
あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい!
ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット”
ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで?
異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。
チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。
「────さてと、今日は何を読もうかな」
これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。
◆小説家になろう様でも、公開中◆
◆恋愛要素は、ありません◆
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる