9 / 9
彼の席
しおりを挟む
「起立ーー。」
「礼ーー。」
「着席。」
学校の授業が始まった。
一平くんのいなくなった学校は、行ってみると一見何ら変わりのない光景だった。
クラスメイトも、担任の先生も、私の席も、昨日までと変わらない。ただ一つ、彼の席が一人分、ないことを除いて……。
(どうして、こんなことになっちゃったんだろう……全部夢だったらいいのに。)
授業も上の空の私を端から見ていて心配したのか、隣の席の郁美ちゃんが休み時間に声を掛けてきた。
「美波、今日なんか変じゃない? 何かあった?」
「え……うん……。」
何か大ありである。でも、郁美ちゃんにどう説明したらいい?
そもそも、この世界では子持ちの中学生っていう事実が、どう受けとめられているんだろう。私はそれとなく郁美ちゃんに聞いてみようと試みた。
「郁美ちゃん、あのさ……私のこと、どこまで知ってるっけ?」
「ん? どこまでって、何の件?」
「うーーんと……私のさ、家族とか、その……、」
「なあに? ……一平ちゃんの話?」
(やっぱり! 普通に出てきた。)
「そう、一平くんのこと……なんだけど、」
「そろそろ保育所とか考えてるの?」
「え?」
「だってさ、今の時代、子育てと学校の両立って難しいじゃん。うちなんか、美波みたいに親が全然面倒みてくれないからさ、沙羅が一平くんくらいの月齢のときに保育所に入れたもんね、覚えてる?」
「え、え?」
(保育所?? 沙羅? なにそれちょっとタンマ、どういうことだ。)
郁美ちゃんは、固まったままの私から不安の感情だけは読み取ったみたいで、
「今が一番大変だよね、ちゃんと寝れてないでしょ? 保育所のこともそうだけど、勉強だっていつでも相談に乗るし、助けるから言ってね。あ、休み時間終わっちゃうね、私トイレ行ってくるわーー。」
ポン、と私の肩を優しく叩いて行ってしまった。
ホワット???
何が一体、起きている――?
~~~~~~~~
この世界では、女性の出産適齢期が大幅に低年齢化しており、成人を迎えるころには妊娠率が大幅に下がってしまうという問題が深刻となっていた。
大幅な人口減少を食い止めるためにも、政府がとった対策として、早期の性教育と子育て支援事業の拡大、そして後期妊娠や出産の安全性や確率を上げるための最新医療の発展に力を入れているとのこと――。
夢ならば、何ともシビアな設定でしょう。私の頭なんかでは考えつかない内容に、やはりこれは夢なんかではない、という気持ちが強くなった。
この日一日、学校の授業を受けて何となくわかってきたが、クラスメイトの半数以上が既に子持ちであること、校内には保育所もあること、保健体育の内容が全然違うこと! 私は不思議の国のアリスの気分で家路についた。
(……私これから、どうしたらいいんだろう。)
(……あ……、結局、一平くんの父親って誰なわけ??)
私は一人で考える時間がほしかったが、家に帰るとそうさせてくれない存在が私のことをずっと待っていたんだ。
一平くん、たぶん月齢三ヶ月くらい。愛しの我が子。うーー、胸が痛いよ。
「礼ーー。」
「着席。」
学校の授業が始まった。
一平くんのいなくなった学校は、行ってみると一見何ら変わりのない光景だった。
クラスメイトも、担任の先生も、私の席も、昨日までと変わらない。ただ一つ、彼の席が一人分、ないことを除いて……。
(どうして、こんなことになっちゃったんだろう……全部夢だったらいいのに。)
授業も上の空の私を端から見ていて心配したのか、隣の席の郁美ちゃんが休み時間に声を掛けてきた。
「美波、今日なんか変じゃない? 何かあった?」
「え……うん……。」
何か大ありである。でも、郁美ちゃんにどう説明したらいい?
そもそも、この世界では子持ちの中学生っていう事実が、どう受けとめられているんだろう。私はそれとなく郁美ちゃんに聞いてみようと試みた。
「郁美ちゃん、あのさ……私のこと、どこまで知ってるっけ?」
「ん? どこまでって、何の件?」
「うーーんと……私のさ、家族とか、その……、」
「なあに? ……一平ちゃんの話?」
(やっぱり! 普通に出てきた。)
「そう、一平くんのこと……なんだけど、」
「そろそろ保育所とか考えてるの?」
「え?」
「だってさ、今の時代、子育てと学校の両立って難しいじゃん。うちなんか、美波みたいに親が全然面倒みてくれないからさ、沙羅が一平くんくらいの月齢のときに保育所に入れたもんね、覚えてる?」
「え、え?」
(保育所?? 沙羅? なにそれちょっとタンマ、どういうことだ。)
郁美ちゃんは、固まったままの私から不安の感情だけは読み取ったみたいで、
「今が一番大変だよね、ちゃんと寝れてないでしょ? 保育所のこともそうだけど、勉強だっていつでも相談に乗るし、助けるから言ってね。あ、休み時間終わっちゃうね、私トイレ行ってくるわーー。」
ポン、と私の肩を優しく叩いて行ってしまった。
ホワット???
何が一体、起きている――?
~~~~~~~~
この世界では、女性の出産適齢期が大幅に低年齢化しており、成人を迎えるころには妊娠率が大幅に下がってしまうという問題が深刻となっていた。
大幅な人口減少を食い止めるためにも、政府がとった対策として、早期の性教育と子育て支援事業の拡大、そして後期妊娠や出産の安全性や確率を上げるための最新医療の発展に力を入れているとのこと――。
夢ならば、何ともシビアな設定でしょう。私の頭なんかでは考えつかない内容に、やはりこれは夢なんかではない、という気持ちが強くなった。
この日一日、学校の授業を受けて何となくわかってきたが、クラスメイトの半数以上が既に子持ちであること、校内には保育所もあること、保健体育の内容が全然違うこと! 私は不思議の国のアリスの気分で家路についた。
(……私これから、どうしたらいいんだろう。)
(……あ……、結局、一平くんの父親って誰なわけ??)
私は一人で考える時間がほしかったが、家に帰るとそうさせてくれない存在が私のことをずっと待っていたんだ。
一平くん、たぶん月齢三ヶ月くらい。愛しの我が子。うーー、胸が痛いよ。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる