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それぞれの役割
サンフォース領にて
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ラウルが去った後、クロードは酷い後悔に押しつぶされそうになっていた。
今までアリスが何度も襲われていたという事実は、何も知らずに平和ぼけしていたクロードを打ちのめした。
この半年の間にも、アリスがそんな目に遭った日があったのかもしれない。
そういえば、子犬のタロを拾ったあの日も、アリスとオペラに出かけたあの日も、護衛の数が多めだとは感じていた。
だが、伯爵家の当主ともなればこのくらい護衛が必要なのだろうと特に疑問にも思わなかった。
今思えば、とんだマヌケな話だ。
あのデート中も二人きりのつもりだったが、おそらく博物館にも劇場にも護衛が潜んでいたに違いない。
王族の護衛騎士である自分がそんなことにも気付かないなんて、いくら舞い上がっていたとは言えお笑い種だ。
それに…。
自分は今回二日間の休みを取ってアリスに会いに行くつもりだった。
もしあの時王女の制止を押し切って会いに行けていたら、彼女の遭難に立ち会えたかもしれない。
いや、立ち会えなかったとしても、クロードと会うことで予定がズレ、襲われることを回避できたかもしれないのだ。
(いや…。俺は王女の護衛騎士だ。王女の制止を振り払うなんて出来るわけがない。…こんな近くにいたのに、顔を見ることも出来ないなんて…)
クロードは俯き、唇を噛んだ。
しかし今回のことで、クロードはあらためて思い知ったことがある。
アリスと自分では、背負うものがこれほど違うのだということを。
◇◇◇
日を少し遡りーー。
休暇を過ごすために故郷のサンフォース領に帰ったアリスは、久しぶりに会う両親と穏やかな日を過ごしてきた。
領地に着くまでは精力的に仕事を熟していたが、実家にいる間の二週間は、普通の娘のように両親に甘えて生活してきたのだ。
「婿殿はどんな塩梅だ?アリス」
領地に着いた日、アリスは父からそう聞かれていた。
一見温厚で一人娘を溺愛しているように見える父だが、領地経営と商売には百戦錬磨の強者である。
早くに地位を譲ったのは、それだけ娘アリスの才覚と、その周囲に使えるようにラウルたちを信じきってのことである。
「今旦那様は、王女殿下に付いて離宮に行っておりますわ」
アリスは父にそう答えた。
王女の護衛騎士になったことはその時点で伝えてある。
それを聞いた父は苦虫を潰したような顔になる。
「…本当に、事業には全く役に立たない婿殿だ」
「いいんです。私がそう望んだんですから」
離縁前提であることは、もちろん父には話していない。
そんなことを話したら、父はすぐに離縁してもっといい男をつかまえろと言うに違いない。
「ところでな」
ここにはアリスと二人だというのに、父が声をひそめるようにしてそう言った。
「…何かありましたか?」
「いや…、実は昨日、コラール家の三男が邸に来てな」
「三男…?レイモン様ですか?」
レイモンなら王都を出る前に商談で顔を合わせている。
その時自分も近々領地に帰る予定があり、サンフォース領とは隣り合わせなので、寄らせてもらうとか何とか言っていたかもしれない。
しかしいくら親族になったからといって弟がいないのにその嫁の実家を訪ねてくるのはおかしな話だ。
だからあれは社交辞令かと思っていたのに…。
「それで、レイモン様は何の用でここに来たのですか?お父様が私に会わせなかったのには、何か理由があるのでしょう?」
「それがな…」
父は言いづらそうに眉を顰めた。
「実は、おまえに求婚するために来たと言っていたんだ。だから、おまえに会わせずに追い返した」
「………はぁ?」
コラール家の三男レイモンは、アリスの父にクロードとアリスの夫婦仲は悪く、離縁は秒読みだと伝えたらしい。
それにクロードは二年後には王女について隣国テルルに行ってしまい、もう帰ってくることはないことも。
だからクロードとは速やかに離縁させて、新たに自分と縁を結び直させて欲しいと訴えに来たのだ。
自分なら両家の事業に役に立つ人間だし、何より、ずっとアリスの側にいてあげられるからと。
レイモンには婚約者がいるはずだと問いただせば、彼女とはすでに破談にしたと言う。
父はレイモンの話に呆れ果て、空いた口も塞がらなかったらしい。
次男と婚約破棄して四男と結婚し、また離縁して三男と結婚するー。
一人の娘が四兄弟のうち三人の男と縁を結ぶなど、そんな話、聞いたこともない。
万が一サンフォース家がそんな話にのったら、醜聞どころの騒ぎではない。
事業でも信用をなくすだろうし、恥ずかしくて社交界になど顔を出せなくなるだろう。
何故、レイモンはそんな厚顔無恥な提案をしてきたのだろうか。
こんなバカバカしい話を真剣に話すレイモンに、父は薄ら寒くなったという。
「アリスは大事な娘だ!そんな、猫の子のようにあっちとくっつけたりこっちとくっつけたり出来るものか!」
怒鳴りつけてやると、レイモンは「諦めない」と言い捨てて出て行ったらしい。
その自信は、一体どこからくるのだろうか。
「あの家の息子は次男も三男もおかしいぞ、アリス。早まったかもしれないな」
呆れ顔の父に、アリスも頷くしかなかった。
「それに、四男もな、アリス」
父はレイモンとの不毛なやり取りを話した後、本題はこちらだとばかりにアリスに向き合った。
「婿殿が、王女について隣国に行くとは初耳だな。護衛騎士になったのは知っていたが、王女が輿入れするまでの話だと思っていたぞ」
「それは…」
「結婚しておきながら妻をおいて隣国に行くなど、そんな不誠実な男に娘を預けてはおけん。すぐに離縁しなさい、アリス」
やはりそういう話になるのかと、アリスはこっそりため息をついた。
「王女様の輿入れまでまだ一年以上ありますから、それまでは黙って見ていていただけますか?」
「まさか、後継だけもうけて仮面夫婦のまま過ごすつもりか?」
「いいえ…お父様の言う通り、いずれは離縁を考えております。でも時期は私に任せていただけますでしょうか?」
父は最後まで苦虫を噛み潰したような顔のままだったが、否とは言わなかった。
◇◇◇
二週間領地で過ごしたアリスが王都に帰京する日になった。
馬で駆ければ半日の場所にクロードがいて、ひょっとしたらちょっとでも顔を見に来てくれるのではないかという淡い期待は砕かれた。
しかしアリスは、クロードは仕事で来ているのだから、そんな時間は無いはずと自分に言い聞かせて領地を発つ。
領地を出た直後に馬車を襲われるというアクシデントがあったが、それは選び抜かれた精鋭たちが阻止してくれた。
正直、アリスはこういうことには慣れている。
そのために傭兵上がりの護衛を多数雇っているし、馬車だって頑丈に作ってあるのだから。
父は簡単な気持ちでアリスに爵位を譲ったわけではない。
いつ襲われるともしれない娘を守るため、万全の体制を取った上で領地に戻ったのだ。
「さぁ、王都へ帰ろう。私は私の仕事を頑張らないと」
今までアリスが何度も襲われていたという事実は、何も知らずに平和ぼけしていたクロードを打ちのめした。
この半年の間にも、アリスがそんな目に遭った日があったのかもしれない。
そういえば、子犬のタロを拾ったあの日も、アリスとオペラに出かけたあの日も、護衛の数が多めだとは感じていた。
だが、伯爵家の当主ともなればこのくらい護衛が必要なのだろうと特に疑問にも思わなかった。
今思えば、とんだマヌケな話だ。
あのデート中も二人きりのつもりだったが、おそらく博物館にも劇場にも護衛が潜んでいたに違いない。
王族の護衛騎士である自分がそんなことにも気付かないなんて、いくら舞い上がっていたとは言えお笑い種だ。
それに…。
自分は今回二日間の休みを取ってアリスに会いに行くつもりだった。
もしあの時王女の制止を押し切って会いに行けていたら、彼女の遭難に立ち会えたかもしれない。
いや、立ち会えなかったとしても、クロードと会うことで予定がズレ、襲われることを回避できたかもしれないのだ。
(いや…。俺は王女の護衛騎士だ。王女の制止を振り払うなんて出来るわけがない。…こんな近くにいたのに、顔を見ることも出来ないなんて…)
クロードは俯き、唇を噛んだ。
しかし今回のことで、クロードはあらためて思い知ったことがある。
アリスと自分では、背負うものがこれほど違うのだということを。
◇◇◇
日を少し遡りーー。
休暇を過ごすために故郷のサンフォース領に帰ったアリスは、久しぶりに会う両親と穏やかな日を過ごしてきた。
領地に着くまでは精力的に仕事を熟していたが、実家にいる間の二週間は、普通の娘のように両親に甘えて生活してきたのだ。
「婿殿はどんな塩梅だ?アリス」
領地に着いた日、アリスは父からそう聞かれていた。
一見温厚で一人娘を溺愛しているように見える父だが、領地経営と商売には百戦錬磨の強者である。
早くに地位を譲ったのは、それだけ娘アリスの才覚と、その周囲に使えるようにラウルたちを信じきってのことである。
「今旦那様は、王女殿下に付いて離宮に行っておりますわ」
アリスは父にそう答えた。
王女の護衛騎士になったことはその時点で伝えてある。
それを聞いた父は苦虫を潰したような顔になる。
「…本当に、事業には全く役に立たない婿殿だ」
「いいんです。私がそう望んだんですから」
離縁前提であることは、もちろん父には話していない。
そんなことを話したら、父はすぐに離縁してもっといい男をつかまえろと言うに違いない。
「ところでな」
ここにはアリスと二人だというのに、父が声をひそめるようにしてそう言った。
「…何かありましたか?」
「いや…、実は昨日、コラール家の三男が邸に来てな」
「三男…?レイモン様ですか?」
レイモンなら王都を出る前に商談で顔を合わせている。
その時自分も近々領地に帰る予定があり、サンフォース領とは隣り合わせなので、寄らせてもらうとか何とか言っていたかもしれない。
しかしいくら親族になったからといって弟がいないのにその嫁の実家を訪ねてくるのはおかしな話だ。
だからあれは社交辞令かと思っていたのに…。
「それで、レイモン様は何の用でここに来たのですか?お父様が私に会わせなかったのには、何か理由があるのでしょう?」
「それがな…」
父は言いづらそうに眉を顰めた。
「実は、おまえに求婚するために来たと言っていたんだ。だから、おまえに会わせずに追い返した」
「………はぁ?」
コラール家の三男レイモンは、アリスの父にクロードとアリスの夫婦仲は悪く、離縁は秒読みだと伝えたらしい。
それにクロードは二年後には王女について隣国テルルに行ってしまい、もう帰ってくることはないことも。
だからクロードとは速やかに離縁させて、新たに自分と縁を結び直させて欲しいと訴えに来たのだ。
自分なら両家の事業に役に立つ人間だし、何より、ずっとアリスの側にいてあげられるからと。
レイモンには婚約者がいるはずだと問いただせば、彼女とはすでに破談にしたと言う。
父はレイモンの話に呆れ果て、空いた口も塞がらなかったらしい。
次男と婚約破棄して四男と結婚し、また離縁して三男と結婚するー。
一人の娘が四兄弟のうち三人の男と縁を結ぶなど、そんな話、聞いたこともない。
万が一サンフォース家がそんな話にのったら、醜聞どころの騒ぎではない。
事業でも信用をなくすだろうし、恥ずかしくて社交界になど顔を出せなくなるだろう。
何故、レイモンはそんな厚顔無恥な提案をしてきたのだろうか。
こんなバカバカしい話を真剣に話すレイモンに、父は薄ら寒くなったという。
「アリスは大事な娘だ!そんな、猫の子のようにあっちとくっつけたりこっちとくっつけたり出来るものか!」
怒鳴りつけてやると、レイモンは「諦めない」と言い捨てて出て行ったらしい。
その自信は、一体どこからくるのだろうか。
「あの家の息子は次男も三男もおかしいぞ、アリス。早まったかもしれないな」
呆れ顔の父に、アリスも頷くしかなかった。
「それに、四男もな、アリス」
父はレイモンとの不毛なやり取りを話した後、本題はこちらだとばかりにアリスに向き合った。
「婿殿が、王女について隣国に行くとは初耳だな。護衛騎士になったのは知っていたが、王女が輿入れするまでの話だと思っていたぞ」
「それは…」
「結婚しておきながら妻をおいて隣国に行くなど、そんな不誠実な男に娘を預けてはおけん。すぐに離縁しなさい、アリス」
やはりそういう話になるのかと、アリスはこっそりため息をついた。
「王女様の輿入れまでまだ一年以上ありますから、それまでは黙って見ていていただけますか?」
「まさか、後継だけもうけて仮面夫婦のまま過ごすつもりか?」
「いいえ…お父様の言う通り、いずれは離縁を考えております。でも時期は私に任せていただけますでしょうか?」
父は最後まで苦虫を噛み潰したような顔のままだったが、否とは言わなかった。
◇◇◇
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領地を出た直後に馬車を襲われるというアクシデントがあったが、それは選び抜かれた精鋭たちが阻止してくれた。
正直、アリスはこういうことには慣れている。
そのために傭兵上がりの護衛を多数雇っているし、馬車だって頑丈に作ってあるのだから。
父は簡単な気持ちでアリスに爵位を譲ったわけではない。
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