7歳の侯爵夫人

凛江

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16歳、やり直し

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「父上、このこと、フィリップ殿下には?」

エリアスは父ルーデル公爵にたずねた。

泣き疲れて眠ってしまったコンスタンスに付き添い母も部屋を出たので、今は父とエリアスの2人きりである。

父はほとんど正直な事実をコンスタンスに伝えていたが、あえて伏せていたこともあったように思う。

例えば、事故の理由。

コンスタンスはオレリアンの元恋人を庇って事故に遭ったが、公爵はその事実を話さなかった。

それから、フィリップがコンスタンスを側妃に望んでいる事実。

それにはオレリアンの背景も、2人が1年間どのような夫婦だったのかも説明が必要だから割愛したのだろうが。

今夜のコンスタンスはもうキャパオーバーで、壊れてしまいそうなほどだから。


「もちろん殿下に話すつもりはない。
また側妃になどと騒がれては厄介だ」

そう言ってルーデル公爵は眉間に皺を寄せた。

どうあっても、可愛い愛娘を側妃に差し出すなど、承服できるわけがない。

権力欲しさに娘を後宮に上げて王子を産ませたがる輩もいるだろうが、ルーデル公爵家にそんな必要はない。

ずっと昔から王家と縁を結び、一番の忠臣であったルーデル公爵家は、かえって王家に頼られる存在であるのだから。

公爵家に見限られないようにといつも気を使っているのは王家の方で、婚約解消後のコンスタンスに躍起になって結婚相手を探したのもそんな背景もある。


「オレリアンには…」

「気の毒だが、しばらく会わせるわけにはいかないだろう。
今のコニーの精神状態では耐えられまい」

慕っていた王太子との婚約解消で打ちのめされているコンスタンスに、赤の他人同然の夫など、会わせるわけにはいかない。

本当は事実だって教えたくなかったくらいだ。

耳を塞ぎ、部屋に閉じ込めて、大事に守ってやりたかった。

だが聡いコンスタンスのことだ、隠されたり、また、別のルートで耳に入ったりしたら、それもまた彼女を傷つける。

歪んだ噂を耳にするよりは、と、断腸の思いで伝えたのだ。

「とにかくしばらくはこの公爵邸で静養させ、本人が望めば公爵領に行かせることも考えよう。そしていずれは…」

離縁も考えるようだろう…、という言葉を、公爵は飲み込んだ。

オレリアンには悪いが、今回のコンスタンスがオレリアンの存在を受け入れるのは相当厳しいだろう。

最近では娘に対する彼の愛情深さと誠実さを認めていたので残念だが、コンスタンス自身のメンタルが最優先だ。

「…そうですね。
しばらくこちらには来ないように連絡しましょう」

エリアスもそう言うと唇を噛んだ。

エリアス自身、最近のオレリアンを気に入り、義弟として認め始めたところだったから。

あの不器用な男は悲しみ、また自分を責めるのだろうな…、と、そう思うと、エリアスはやるせなかった。
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