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回想、コンスタンス
6
ある日、目覚めたら、私は人妻になっていました。
眠る前まで王太子殿下の婚約者だったはずなのに、一体どういうことなのでしょう。
昨日私は、フィリップ王太子殿下にエスコートされ、国王陛下の即位10周年を祝う舞踏会に参加いたしました。
殿下の服装も自分のドレスも鮮明に覚えているし、殿下とどんな会話をしたのかも覚えております。
それなのに、たった一晩眠っただけなのに、あの舞踏会からすでに4年近くの歳月が流れているというのです。
そしてその間に殿下との婚約が解消され、私は他の男性に嫁いでいるというのです。
一体、何の冗談なのでしょうか。
夢なら早く醒めて欲しいと思います。
だって、信じられるはずがないでしょう?
昨日まで、生涯お側にとお慕いしていた殿下と、もう二度と共に歩む未来を描けないなんて。
王家からの申し入れで幼い頃に決まった婚約ではありましたが、たしかに私たちは、信頼と愛情を育んできました。
それを殿下の隣に立つ日はもう未来永劫やって来ないなどと、どうして受け入れられましょう。
私は現実を受け入れらぬまま、毎日泣き暮らしました。
食事は喉を通らず、家族にさえ会おうと思えず、ただ、部屋に引きこもって泣いてばかりいたのです。
でも。
日が経つうちに、私はなんとかこの哀しみから這い出そうと踠き苦しんでもおりました。
やっぱり私は、私を捨て、公のために生きるよう教育されてきた人間なのです。
殿下が国のために隣国との縁談を受け入れたのなら、私もいつまでもこうして我儘を通していてはいけない。
公爵令嬢として王家の命に従い、受け入れなくてはいけないと思い至ったのです。
そうして顔を上げて周りを見回せば、家族や使用人たちが皆私を気遣い、心から心配してくれているのがわかります。
私はそれを、今更ながら申し訳なく思いました。
それと同時に、部屋の窓辺に飾られている一輪の花にも気づきました。
そしてその花が、ヒース侯爵オレリアン様が毎日贈ってくれるものだということも知ったのです。
ヒース侯爵オレリアン様…、私が存在さえ忘れていた夫の名前です。
そうしてやっと顔を上げた時に知らされたのが、フィリップ殿下が私を側妃に望んでいたというお話でした。
それはとても衝撃的なお話でしたが、かえって私は吹っ切れたような気もいたしました。
殿下への思慕と、未練とをです。
ルーデル公爵家の長女として生まれ、末は王妃になるべく教育を受けた私に、あの方は妾になれと言うのです。
誰がそんな屈辱的なお話を受け入れられましょうか。
その後、私はようやく『夫』であるヒース侯爵オレリアン様にお会いし、これからのお話をいたしました。
そしてオレリアン様のご好意で、私たちは『夫婦』ではなく『お付き合い』から始めることになりました。
彼が、まだ『16歳の私』を慮ってくださったからです。
交流が始まって知ったことは、オレリアン様がとても誠実で優しい方だということでした。
彼は夫のことを覚えていない私を責めるでもなく、労わり、気遣ってくれます。
無理に近づこうともせず、少しずつ、少しずつ私を癒そうと接してくださるオレリアン様に、私も少しずつ心を開いていきました。
彼の私を見る優しい目、私に触れる優しい手から、私を想ってくださっていることは十分伝わってきます。
そんな彼を、私もだんだん心待ちにするようになりました。
そしてこの方となら一緒にこれからの人生を歩いていけるかもしれないと思い始めたのです。
眠る前まで王太子殿下の婚約者だったはずなのに、一体どういうことなのでしょう。
昨日私は、フィリップ王太子殿下にエスコートされ、国王陛下の即位10周年を祝う舞踏会に参加いたしました。
殿下の服装も自分のドレスも鮮明に覚えているし、殿下とどんな会話をしたのかも覚えております。
それなのに、たった一晩眠っただけなのに、あの舞踏会からすでに4年近くの歳月が流れているというのです。
そしてその間に殿下との婚約が解消され、私は他の男性に嫁いでいるというのです。
一体、何の冗談なのでしょうか。
夢なら早く醒めて欲しいと思います。
だって、信じられるはずがないでしょう?
昨日まで、生涯お側にとお慕いしていた殿下と、もう二度と共に歩む未来を描けないなんて。
王家からの申し入れで幼い頃に決まった婚約ではありましたが、たしかに私たちは、信頼と愛情を育んできました。
それを殿下の隣に立つ日はもう未来永劫やって来ないなどと、どうして受け入れられましょう。
私は現実を受け入れらぬまま、毎日泣き暮らしました。
食事は喉を通らず、家族にさえ会おうと思えず、ただ、部屋に引きこもって泣いてばかりいたのです。
でも。
日が経つうちに、私はなんとかこの哀しみから這い出そうと踠き苦しんでもおりました。
やっぱり私は、私を捨て、公のために生きるよう教育されてきた人間なのです。
殿下が国のために隣国との縁談を受け入れたのなら、私もいつまでもこうして我儘を通していてはいけない。
公爵令嬢として王家の命に従い、受け入れなくてはいけないと思い至ったのです。
そうして顔を上げて周りを見回せば、家族や使用人たちが皆私を気遣い、心から心配してくれているのがわかります。
私はそれを、今更ながら申し訳なく思いました。
それと同時に、部屋の窓辺に飾られている一輪の花にも気づきました。
そしてその花が、ヒース侯爵オレリアン様が毎日贈ってくれるものだということも知ったのです。
ヒース侯爵オレリアン様…、私が存在さえ忘れていた夫の名前です。
そうしてやっと顔を上げた時に知らされたのが、フィリップ殿下が私を側妃に望んでいたというお話でした。
それはとても衝撃的なお話でしたが、かえって私は吹っ切れたような気もいたしました。
殿下への思慕と、未練とをです。
ルーデル公爵家の長女として生まれ、末は王妃になるべく教育を受けた私に、あの方は妾になれと言うのです。
誰がそんな屈辱的なお話を受け入れられましょうか。
その後、私はようやく『夫』であるヒース侯爵オレリアン様にお会いし、これからのお話をいたしました。
そしてオレリアン様のご好意で、私たちは『夫婦』ではなく『お付き合い』から始めることになりました。
彼が、まだ『16歳の私』を慮ってくださったからです。
交流が始まって知ったことは、オレリアン様がとても誠実で優しい方だということでした。
彼は夫のことを覚えていない私を責めるでもなく、労わり、気遣ってくれます。
無理に近づこうともせず、少しずつ、少しずつ私を癒そうと接してくださるオレリアン様に、私も少しずつ心を開いていきました。
彼の私を見る優しい目、私に触れる優しい手から、私を想ってくださっていることは十分伝わってきます。
そんな彼を、私もだんだん心待ちにするようになりました。
そしてこの方となら一緒にこれからの人生を歩いていけるかもしれないと思い始めたのです。
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