上 下
24 / 78
始まり〜シイ村

16才になった

しおりを挟む
すっかり忘れてました。すみません。
一年経ちましたので、16才です。

==========================


ギルマスとお茶を静かに啜っている。
時々遠くを見てため息をついて・・・・・・現実逃避しているようだった。
彼が理解できるまで待つよ。
急ぐ用事は何もない。

エンにもお茶菓子のクッキーをあげて、私も食べる。
そういえば、私が魔法で出した魔素の食べ物以外は、体内でナノレベルにまで分解されて消化、ならぬ浄化されているのだとか。
そんなんどうでもいい情報だけど、だからつまり、排泄が全くないのだ。
月のものもないから楽。
本当に便利な体だと思うよ。

そうそう、異世界に来て1年経ったから16才になったんだった。
実質1才だけどね。
お誕生日会はしなかったし、祝われても嬉しくもなんともないわ。
これからどんだけ長い時間生きる?と思うと、お誕生日とか、どうでもいいやって思っちゃう。

あ、お茶、飲み終わっちゃったよ。

そろそろどうかな?

「アレクさん、改めまして、ワタクシ妖精のシイです。
 シイ・ルック・クリスチアーヌ・ル・フェと申します。
 以後お見知り置きを」

自分の名前、自分でつけたのにすっかり忘れていて、自分のステータスを見ながら名乗った。
覚える気はなかった。

ギルマスはゆっくりティーカップを置いて、ゆっくり頭を下げた。
まだ夢の世界だったかな?

「シイ殿・・・・・・あ、いや、シイ様。
 無礼をお許しください」

深々と腰を折って頭を下げている。
そのままテーブルに頭をぶつけそうだ。

「頭をあげてよ。どんな無礼をしたの?
 普通に接してもらって構わないよ。
 普通でお願いします」

「!!!!!
 寛大なお方だ!!!!!」

「ふふふ。ね、びっくりしちゃったでしょ?」

少しずつギルマスの白い顔が色付いてくる。
でもやっと青になったくらい。

「ええ、驚きました。
 シイ様、我がギルドへようこそおいでくださいました。
 ギルド一同シイ様を歓迎いたします」

「ありがとう。
 で、も、他の冒険者と同じように対応してよ」

ぶるぶるぶるぶると首を横に振って、すごい勢いだから体全身がぶるぶる震えちゃってた。

「一度会ったらお友だちって言葉があるの。
 だから、私達、もうお友だちだからね。
 よろしく、アレク」

勝手にお友だち認定。
街に行ったら街の人もみんなお友だちになっちゃうね。

「・・・・・・冒険者ランクは、いかがいたしましょう?
 何かご希望はありますか?」

エン情報によると、私ってば神に近いスペックの妖精だから(魔力無限大)、いきなりSランクでもいいらしい。
でも護衛任務のノウハウ知らないんだけど、いきなりSで本当にいいのかな?

「ん-、特にないけど、いきなりSってありなの?」

ギルマスは大きく頷く。

「もちろんです。シイ様のようなお方にはSランクで問題ありません。
 本来のランクアップ条件も全て免除されます。
 仮に経験がなくとも、災害級の能力をお持ちの方の前に、盗賊の急襲や魔物の襲撃など塵のようなものですから。
 全く問題ありません。
 さらに近年、Sランクの上にSSランクを設けるべきか否かの議論が本部でされております。
 シイ様のお許しをいただけたならば、シイ様の情報を本部へ流してもよろしいでしょうか?」

「うん、もちろんいいよ。
 全然秘匿するつもりはないからね」

Sランクの上にSSランク?
それってもしかして、神々の娯楽絡みかな?
ソーマは人畜無害なスペックだったし、のんびり異世界楽しみたい人種だったから、彼じゃないよね。
他の8人か。
今後どっかで接触するのだろうか。

「ありがとうございます!」

ギルマスの元気な声でランクのことを思い出した。

「じゃ、ランクはエンと同じにする?」

右肩に乗っている小猫のエンに訊いてみた。

『ああ、Sランクだ』

念話で答えてくれた。

「えっと、じゃあ、Sランクでお願いします」

こうして私の冒険者ランクは、冒険者登録したその場で最高ランクSランクになったという、ギルド始まって以来の前代未聞のランク付けとなった。

そして翌日には、情報を秘匿しなくて良いというシイの言葉で、神の如きスペックの妖精が顕われたと、全世界が震撼したのだった。

そんなこと露にも思わず、透明なプレートを得意げに首にかけて私は喜んでいた。
Sランクって、黒とか金かなと思ってたけど、透明のプレートだったよ。
すっごくキレイ!
服の中に入れて普段は隠しておくんだろうけど、マルコたちに見せびらかすんだ!

買取のお金も貰って、ギルマスと別れた。

人類とは別次元のSランクだから、基本自由にしていいと説明があった。
国からの要請にはできるだけ応えてほしいとか無いし、更新期限とかも無い。
できるだけ死蔵クエストを請け負っていただきたいですが、基本自由です。と言われた。

そっか、死蔵クエストやってほしいのか。
暇だし、やってもいいよ。
しおりを挟む

処理中です...