神々の娯楽に巻き込まれて強制異世界転生ー1番長生きした人にご褒美有ります

ぐるぐる

文字の大きさ
60 / 78
始まり〜シイ村

心の中は、大嵐

しおりを挟む
ギルマス室を出る時にちょっとだけ声が聞こえた。

「つい先日出かけたばかりでもう帰ってくるとか有り得ない。
 ここからどれだけ遠くの場所にある品々か・・・・・・
 それだけでシイ様の偉大さがわかるだろう?
 常軌を逸している。
 情報の取り扱いからシイ様への対応、全てにおいて間違いを犯すなよ。
 シイ様は妖精だが、神の如き、妖精だ。
 忘れるなよ」

ドアを閉めて部屋から遠ざかっても最後まで聞こえてしまったギルマスの言葉。

あらやだわたし、裏話が聞こえちゃって、いや、聞いちゃって、知らんぷりしたほうが良いかしら???

神の如き妖精だって思っているくせに、こうして遠くから人の声を拾ってしまうだろうって、考えないのかしら?
常軌を逸しているって言ってるくせにねー。

でも悪口じゃないし、別に良いんだ。


「シイ、あの金額の価値をちゃんと理解しているか?」

ギルドから出るとエンが話しかけてきた。

「桁が多すぎてわからなかったよ」

前世にはカンマという記号があってね、という話をしてやったけど、考えれば価値がどれほどかわかったはずだと怒られた。

「あれは、白金貨10枚分だ」

「ふーん。・・・・・・ん?白金貨って1番大きい金貨じゃん。
 あれの1/5ってことは、村の口座に白金貨2枚いれちゃったってことじゃん?
 それって凄くない?
 村人全員一生遊んで暮らせるね」

「そうだ。やりすぎだ」

そう言われましても、遅かりし。

いや、でも、ポジティブに考えよう!
これで村のために急いでお金を用意しなくちゃいけないってことがなくなったんだよ。
のんびり旅を楽しみながら冒険に行けるんだよ。
楽しまなちゃそんなの冒険じゃないよね。
急がなくて良くなった!
やったー!

「ふむ、さすがシイだな」

エンがため息ついた。




外に出て、村に帰る前に屋台の食べ物をたくさん買って、孤児に渡した。
もうだいぶ警戒しなくなって、私を見かけたら近寄るようになってきた孤児達。
彼らは粗末ながらも屋根や壁のある居場所があるみたい。
そこが彼らにとって安らげる場所であるなら、この街で彼らが元気に育ってくれたらいいと思う。

それからいろんな色、いろんな柄の生地や糸針ボタンなど、食材も買って村へ帰った。



エンの背に乗ってひとっ飛びで村の門に着いたんだけど、村で私たちを待っていたものは・・・・・・

高く聳え立つ私とエンの銅像。
いや、木造だから、木像かな。

猫耳と猫の尻尾がついてる私と、肩に乗るエン。
正面下には妖精シイ様って彫ってあった。


え?
なんでこんなもの作っちゃった?
許可してないけど?
結構うまいけど?

あいつか、あいつ。
工作班ですっごいじょうずな人居たよね、あいつだ。
他の荒い部分は他のヤツがやってみんなで作ったんだろうね。
共同作か。
仲良くやってんじゃん。


・・・・・・いやいやいや、そうじゃなくて、なんで?
恥ずかしいからやめてよー!
私の本当の姿は猫耳とか尻尾とかないし!
エンはでっかいドラゴンだし!

木像はこんな青空の下に置いといたら雨風ですぐに劣化するしね?
やめてよー・・・・・・



「シイ様!お帰りなさい!」

ひとりが気づくとわらわらと村人がどこからともなく集まってきた。
なんだか愛されてる気がしてすごく嬉しくなった。

「ただいまー!」

「シイ様、お疲れでしょう。
 中でお茶とおやつをどうぞ」

みんな満面の笑顔ですっごく歓迎してくれた。
後ろから遅れて集まってきた子ども達も笑顔だ。
あ、また増えたんだね。
部屋の数は大丈夫かな?

「うん、ありがとー!
 みんなにも屋台の食べ物と、お土産もあるから、全員おいでよ!」

お土産という言葉に喜んで歓声があがった。

しかし皆さん、お土産の前に確認しなきゃいけないことがあるんだよ。

「工作はーん!!!!ちょっと来て」

呼ぶとさっと前に現れた工作班4人。
何かを期待しているのか見えない尻尾をブンブン振って、仲良く並んでいる。

「えっとさー・・・・・・あれはどうしたの?」

必死に笑顔を取り繕っている私の顔の筋肉が痛い。
心の中は大嵐だよ。
こんな像は恥ずかしい。
やめて。
そう思っていても、出来は悪くないし、仲良くしてるし、怒る要素は全くないから、怒れない。
褒めて伸ばす。
ふたたび???

「俺たちの癒しでもあるねーさんが居なくて寂しくて、ねーさんが無事に一刻でも早く帰ってきますようにって考えてたらいつの間にか出来てました!」

なんだそれー!
結構な大作!いつの間に出来上がるもんじゃないよ。
どんだけ一心不乱に彫ってたんだよ。

彼らを褒めなきゃいけないと思うんだけど、全然言葉が出てこない。


「姐御、俺たちは、寂しかったんです。
 良かったらあの木像に保護魔法をかけてください」

以前マグカップを作ってくれたおじさまに先を越された。
処分できないじゃーん。

「いや、あのね、ちょっと恥ずかしいよ、あれは」

「お許しください。
 みんな姐御が大好きで、姐御が出かけてる間みんな拝んでました。
 もうなくてはならない物です」

定着してるー

とりあえず彼らの願いを叶えるべく、保護魔法をかけてやった。

処分できないなら、ちょっと設置場所を考えよっかな。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

私のアレに値が付いた!?

ネコヅキ
ファンタジー
 もしも、金のタマゴを産み落としたなら――  鮎沢佳奈は二十歳の大学生。ある日突然死んでしまった彼女は、神様の代行者を名乗る青年に異世界へと転生。という形で異世界への移住を提案され、移住を快諾した佳奈は喫茶店の看板娘である人物に助けてもらって新たな生活を始めた。  しかしその一週間後。借りたアパートの一室で、白磁の器を揺るがす事件が勃発する。振り返って見てみれば器の中で灰色の物体が鎮座し、その物体の正体を知るべく質屋に持ち込んだ事から彼女の順風満帆の歯車が狂い始める。  自身を金のタマゴを産むガチョウになぞらえ、絶対に知られてはならない秘密を一人抱え込む佳奈の運命はいかに―― ・産むのはタマゴではありません! お食事中の方はご注意下さいませ。 ・小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 ・小説家になろう様にて三十七万PVを突破。

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

処理中です...