底辺冒険者になった没落令嬢は、超巨大戦艦と古代の軍団(レギオン)を掘り当て、皇帝を目指す!

文屋源太郎

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第1章 帝国の継承者と古代の遺産

第13話 天空の巨大戦艦

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 朝、完全に警戒が緩み切ったルチアは、ベッドの上で寝息を立てながら寝ていた。
 大地が唸るような地響きで目を覚ます。

「うにゃ? なに?」

 まだ、寝ぼけているのか視界がぼやけている。
 突如、とてつもない揺れが、ルチアを襲う。

「きゃあああ!」

 ベッドの上にはいつくばって耐えようとするもあまりの衝撃に耐えられず、ベッドから転がり落ちる。
 
「痛っつう。ん? あれ? ティナは?」
  
 ルチアは強打した頭を押さえながら、肌身離さず持ち歩いている短刀を探す。
 しかし、見つからない。
 姿見で、よく自分の姿を見ると上等なネグリジェを着ている。しかもここは、スラム街の実家より広い黄金の装飾があしらわれた豪華な部屋で、寝ていたのは、あの柔らかな天蓋付きのベッド。まるでどこかの国のお姫様だ。
  ルチアがあたりを見回している間にも部屋は揺れ続ける。
 
「ここってまさかあの遺跡の中!? ゆ、夢じゃなかった。昨日は確かって……きゃあ」

  床に押し付けられるような重力がかかったかと思うと今度はふわっと浮き上がったかのような感覚に陥る。
  しばらくすると揺れと音が収まり、静かになる。
 
「何がどうなっているの?」

 ここは千年前の遺跡、もしかするとどこか崩れ始めたのかもしれない。
 このまま手をこまねいていては、崩落した遺跡に押しつぶされて、生き埋めになってしまう。

「早くティナを探さないと。もう、この格好じゃ動きづらい」
 
 ルチアはネグリジェを脱ぎ捨てる。
 無駄に広い部屋を探し回り、高級な金の装飾が施された衣装ダンスから着慣れた軽装の革鎧を見つけ出す。愛用の短刀は見当たらないが、素早く着替える。

「ふう、こっちのほうが落ち着くわ。これは頂戴してっと」
 
 少しでも金目の物を持ち帰ろうと、金になりそうな絹のネグリジェを袋に詰め込んでいるとドアをノックする音が聞こえる。

「誰?」

 いつもの癖でルチアは身構える。

「私、私、ルーナだよ」

 ドアが開いて、蛍光ピンクのきわどい衣装のルーナが現れる。

「おっ、さすが盗賊。抜け目ないね」
「ま、まあね」

 ルチアは慌てて、ネグリジェをぐちゃぐちゃに押し込んだ袋を後ろに隠す。

「あなたは確か、昨日のマギアマキナ?」
「あれれ? 覚えてないの? ショック~」
「忘れる方が無理だと思うけど」
「まあまあ、そんなに警戒しない。わざわざ起こしに来てあげたんだし」
 
 ルーナは両手をあげてひらひらと振り、降参のポーズをとる。

「……わかった。それで今の揺れは? ティナは無事なの?」
 
 ルチアはようやく警戒を解く。

「ふうん、自分のことより友達の心配だなんていいとこあるじゃん」
「馬鹿にしてる?」
「違う違う、褒めてんの」
 
 ルーナは満足そうな表情だ。

「ま、全部、外に出ればわかるっしょ。ティナ様はこれから起こしに行くとこ。一緒に行こうと思ってさ。わざわざ誘いに来てあげたってわけ。早く行こ」
 
 ルーナはルチアを連れて、昇降式の床や階段を利用して上へ上へと登る。

「ここって、こんなに広かった? それに昨日まで埃だらけだったのに、新品みたいにピカピカ」

 最初に見た時から千年前の遺跡にもかかわらず、あまり劣化してはいなかったが、どんよりとした空気が流れていた。
 それが今は嘘のよう。艦内は照明に煌々と照らされ、まるで宮殿にいるようだ。

「あったりまえじゃん。総出で大掃除したからね。もうくたくた。でも、だいぶきれいになったでしょ。この船もだいぶまともになってきたって感じ」

 ルーナは鼻歌交じりに歩いていく。
 ルチアはこの遺跡は、古代の巨大な魔導艦だとベリサリウスが言っていたのを思い出す。

「じゃあ、さっきの揺れって……」

 今朝の揺れや音についてルチアが尋ねようとすると

「ついたよ」

 と昇降式の床に揺られ、ルーナとルチアは地上にでる。

「なっ……!」

 ルチアは正面を向き言葉を失う。
 空だ。見渡す限り広大な蒼空。

「うそでしょ。ここが魔導艦の上だって言うの……」
 
 今立っている場所は甲板だろうが、両端は見えない。
 今朝の轟音と揺れの謎も一気に解消された。超巨大魔導艦クラッシス・アウレアは千年の呪縛から解き放たれて、大空へと舞い上がったのだ。
 黄金に彩られたクラッシス・アウレアは、円形の島に真ん中で割った二つの巨大な戦艦をくっつけたような形だ。この世に唯一無二の超兵器に、あえて、艦種で分類するのなら超巨大双胴航空戦艦とでも呼ぶべきだろうか。
 地中深くに封じられていた巨大魔導艦クラッシス・アウレアの姿はルチアの想定をはるかに上回るものだった。

「ルチア、馬には乗れる?」
「乗れるけど」
 
 ルーナが口笛を吹くとどこからともなく、二匹の馬が駆け寄ってくる。

「じゃあ、この子たちでしゅっぱーつ」
 
 ルチアはルーナにされるがままに、馬に乗せられ、駆けだす。
 船の上だというのに、馬で移動するほど、この船は巨大だ。

「この馬、もしかして魔導機械? 早い」

 妙におとなしく、乗りこなしやすいと思ったらどうやらこの馬は普通の馬ではないらしい。

「そそ、ガイウスからちょっと借りてきた鉄馬。普通の馬より頑丈で早いの。すごいっしょ。もっと、飛ばすよ!」

 ルーナは、ルチアの乗った鉄馬の尻を叩く。ゴーレム馬は口から蒸気を吐き出すと風を切って走り出す。
 ルチアは鉄馬にしがみつきながら超巨大魔導艦クラッシス・アウレアを見物する。
 魔導艦というよりは、島に近い。白い石畳で舗装された広大な甲板にはいくつもの施設が、建てられている。
 馬で移動しなければならないというだけで、その巨大さは想像に難くない。
 五万人は収容できそうな豪壮な迫力ある円形闘技場、優雅な全貌をあらわにした白亜の万神殿《パンテオン》、白濁したお湯が沸き出る湯煙に覆われた大浴場《テルマエ》。
 残念ながら多くは半壊してしまっているが、遺跡としての魅力は十二分だ。
 古代の大都市が、まるごと浮かんでいるかのような大迫力の光景に圧倒される。 
 普段は、古臭い遺跡など金づる程度にしか思っていないルチアでも感動し、年ごろの少女らしく興奮している。
 ルチアは思わず遠い船の端へと駆け出し身を乗り出す。

「離陸しただけで軽い災害ね」

 この船が埋められていた地面には大穴が空き、地下水があふれ出て湖のようになっていた。その直上にこの空飛ぶ宮殿は浮いている。
 船の外装はすべて黄金で覆われ、まるで太陽のごとく燦然と輝いている。
 側面から何千何万と等間隔に飛び出たオールが、波打つように動き、この百段櫂船とも呼ぶべき、巨艦は優雅に空という無限の大海を進んでいる。

「バカでかいのに大砲はついてないのね。まあ、本当に千年前に作られたなら仕方ないけど」
 
 風情のないこの娘は実用的なところにばかり目が行ってしまう。
 ルチアの知る魔導艦は輸送船を除き、船の側面にはぎっしりと大砲が並べられていることが多い。しかし、この船はオールがあるばかりで大砲は一門もない。
 
「大砲? 魔力で鉄の玉を打ち出すあれのことね。この船には、魔導砲があるから問題ないわ」

 ルーナは大砲についてはあまり知らない様子だ。
 それもそうだろう。大砲や魔導マスケット銃と言ったものは近年、急速に普及してきた新兵器で、古代帝国の時代には影も形もない。
 動力源から莫大な魔力を供給し、収束させて放つ魔導砲という今の時代から考えれば、規格外の兵器を搭載しているクラッシス・アウレアに大砲は無用の長物だ。

「マギアマキナの兵士は魔法も使えるの?」
「当たり前じゃん。私たちは魔力で動いてるんだから」
「ふーん。魔法が使える機械の兵士。そりゃ大砲も、銃もいらないわね」

 銃や大砲は、高度な攻撃魔法が使えない一般人でも簡単に兵士にできる。しかし、優秀なマギアマキナの軍団兵が居ればそもそも、そんな中途半端な戦力は必要ない。

「便利すぎるのも考え物だけどね」

 ルチアは、汗一つ流さずに黙々と作業に従事するマギアマキナたちを見る。まだ目覚めたばかりだというのにみな、働き詰めだ。
 しかし、結果的にはマギアマキナに任せきりになったせいで、民衆が堕落し、帝国崩壊の遠因となったのだろうとルチアはどこかの書物で読んだことがある。

「ついたわ」
 
 ルーナとルチアはひときわ巨大な建造物の前につく。
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