砂漠と鋼とおっさんと

ゴエモン

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ブラッククィーン編

時には昔の話を

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 錫乃介がジャイロキャノピーとブローニングの修理に赴いたのは、ロボオに紹介された『鋼と私』という車の整備工場がでかくなったハンガーのある工場に着く。鉄臭さが全身を覆い、馬鹿でかいモーター音と甲高い旋盤の音が響いている。


 「サーセン!ユニオンの紹介で来ました!」
 

 と、大きめの声をかけると、ごっついゴーグルをつけた背の低い、オレンジのツナギを来た爺さんが奥から出てきた。ツナギの上からでもわかる程、逞しい筋骨隆々の肉体をしている。


 「あいよ、どうした?」
 「ご覧の通りでジャイロキャノピーが傷だらけになっちまったんで、修理の方をお願いしやっす!」


 ちょっと強面なので、少し低姿勢でいこう。


 「お前さん、これで旅して機獣とやり合ってんのか?」
 

 近寄って来たゴーグル親父は物珍しそうに、ジャイロキャノピーを見回す。


 「まぁ、これで何とかやってます。でも、今回やられたのは街中なんですよ。人攫い共にやられ、やり返した結果です」


 “先に発砲したのこちらですがね”
 それは内緒。


 「この前あったっていう銃撃事件はお前さんの仕業か?」

 「お恥ずかしい。人助けの為だったんで、ご容赦ください」

 「ガハハハ、威勢が良いじゃねぇか。そういうノリ嫌いじゃねーぜ。いいぜ、修理任せな!」

 バンバン背中を叩かれる。

 イテーな。

 「ありがとうございます。上のブローニングにも被弾したので、こちらもお願いします」
 
 「ブローニングなんざ朝飯前よ!」

 「それで見積もりいくらくらいですか?」

 「ざっと見、修理だけなら2,000ってとこだな」

 「了解です。それじゃあ修理お願いします」


 と言って去ろうとすると、待てよ、肩に食い込むくらいの圧力で掴まれる。


 イッテーって。馬鹿力だな。


 「おい、チューンはいいのか?」

 「出来るんですか?」

 「出来るんですか?だと、なめんじゃねーぞ、いくらだってできらぁ。エンジン出力アップに防弾強化、武装増設、なんなら、戦車砲だってつけてやるぜ」

 「こんなジャイロキャノピーで戦車砲撃ったら、こっちが吹っ飛んじゃうんじゃないですか?」

 「んなこたぁねぇ。無反動砲ならいける。まぁ後輪もう4輪増設して、エンジン出力もそうだな、最低でも20倍いや30倍には上げなきゃなんねーがな。無反動砲の自動装填装置も必要だろうから、リアボックスももっとでかいのにするか、増設するか。なんなら無反動砲そのもの牽引してもいいな!それだったら連装砲にもできるぞ!」

 
 な…、なんだ…と……。
 
 ゴーグル親父の悪ノリに、錫乃介は対物ライフルで頭を撃たれたような衝撃を受ける。


 なにそれ!ジャイロキャノピーに連装無反動砲なんて、魔改造もいいところ!
 な、な、なんて、夢とロマンがひろがりんぐなんだ!胸がときめいてきたんだけど!


 だが、待てよ……


 「そ、それって予算どれくらい……するんすかね……?」


 夢とロマンは広がるが、そんな魔改造いくらかかるかしれたもんじゃない。恐る恐る聞いてみる。


 「やる気になったか!そうさな、100万ってとこだな。連装砲ならもっとだ。前金で30万置いてきゃ作業始めてやる、半月後にはできっから完成後に全額だ」
 
 
 おいおい、バギーどころかトラック買えちゃうぜ。
 

 「きょ、今日のところは修理だけで良いです」

 「まぁ普通そうなるわな。でもな、ハンターならユニオンから融資も受けられるぜ。そうすりゃ直ぐにお前さんの物だ。返済とか金利とか詳しいことはユニオンで直接聞け」

 「なるほど、ローンってことですね。ユニオンは金融もやってるのか」

 「そうだな。ただ、踏み倒したりしようもんなら、速攻で抹殺されて財産全部取られるらしいがな」


 ヤクザかよ!マフィアかよ!


 「と、とりあえず修理だけお願いします」

 「おうよ、明後日には仕上げとくぜ」


 バイクをゴーグル親父に任せ、工場を後にする錫乃介。


 
 ああ、でも良いなぁ、ジャイロキャノピー戦闘用フォルム。今後の目標にするか、ジャイロキャノピーの魔改造。
 それにしても豪快な親父だったな。ドワーフとか現実にいたらあんな感じなんだろうな。
 
 
 “火力が欲しかったとは言え、それはやりすぎじゃないですか?素直に軍用車両でも買った方が……”


 ナビ…。1つ教えておいてやる。男は自分の美学とロマンに生きなきゃなんねーんだよ。それが出来なきゃ生きてる意味がねぇ。俺の尊敬する人の言葉に…。

 “飛ばねぇ豚はただの豚だ”ですか?

 先回りすんじゃねーよ。今の俺の見せ場じゃん!

 “誰も見てませんよ”


 グダグダ話しながらこれからの事を考える錫乃介。



 これからどうするかな?商売道具は修理中として、また用水路整備でもするか。

 “今の装備じゃそれくらいしか出来無さそうですね”
 
 結局ユニオンに戻るのね。


 
 そしてユニオンに戻り、まだ居たロボオにリクエスト受注の手続きをしてもらい、工業区の用水路に向かった。

 今回は初めてスライムと邂逅したが、天井から落ちて来ることさえ警戒してれば、なんて事はない、用水路に叩き落として、メタンガス発電送りにすればいいだけあった。
 

 なんかさ、ドラクエのスライム期待してたんだけどさ、そりゃ無理な話なのは分かってるよ?でもさ、期待しちゃうじゃん?スライムっていったら、日本国民の9割はアレを想像すると思うよ。なのにさ、なにアレただの動くヘドロじゃん。スッゲー期待外れ。期待外れどこじゃないよ。落胆?この世界来てから最も裏切られた感じだね俺。

 “別に姿形に関してはスライムに罪があるわけじゃないんですが。常識的に考えて、不定形生物があんな可愛らしいマスコットキャラなわけ無いんですけどね。

 そうそう、アメーバに毛が生えたような奴がそんなキャラなわけ無いのは分かってんだけどさ。アレは鳥山先生の才能の賜物だよな。でもさあいつ、あの様子だとああやって有機物取り込んで分解してるんだろ?土壌微生物の親玉みたいなわけで、学問的には“分解者”なわけだ。環境学的にはクッソ重要な位置を占めてるよな。

 “そうですね、食物連鎖の生態系の物質循環では、有機物を分解して無機物にする役割ですね。彼ら居なくては生態系そもそもが成り立ちません”

 ナウシカの腐海みたいな奴らかもな。放射性物質を分解して無害にしてるかもしれん。

 “研究の余地は大いにありますね”

 無限の財力と時間、設備とそれ相応の脳みそ持ってりゃやるんだけどな。興味はあるが実力が追いつかねーよ。

 
 そんな、少しアカデミックな話しも交えつつ、ウージーを乱射していくが、今日はいつもと違いいちいち薬莢を拾っている。
 
 “錫乃介様も薬莢拾いを?”

 ジャイロキャノピー魔改造タイプの足しに少しはなればと思ってな。

 “セコセコしてますね~”

 こういうとこから、金持ち街道が始まるんだよ。


 こんな感じで、この日も陽が落ちるまで巨大虫とネズミとスライムと戯れていた。

 さて、そろそろ終わりだな。ドブさらいもここまでっと。
 
 作業を終え、相変わらず30キロの背嚢を背負いながらブラブラ歩いて工業区から出ようとする時であった。


 「「おじさーん!」」
 「「おっさーん!」」

 ん?

 と、声がかかる方を見れば、先日の子供達が駆け寄ってくるとこだった。
 
 「おっさん!」

 はぁはぁ言いながら、リーダー格の少年がこちらに向かって眼を飛ばす。
 後ろにピートとメロディ、薪ざっぽ三人衆もいる。


 「どうした?俺まだ、何にもしてねーぞ」
 

 あんなことがあったのに、元気そーじゃねーか。いや、そうでもしなきゃ食ってけねーのかコイツら。


 「おっさん、この前俺たちの事助けてくれたんだって?さっさと逃げちまったからよ、お礼言わなきゃならねーと思って…」


 はは!律儀なガキじゃねーか。可愛いとこあるな。


 「はぁ?知らねーよ、あの日はお前らにどつかれて、一日中うずくまってたんだよ」

 
 「ほらみろ、アル!」
 「こんなよえーやつがそんな事できっかよ!」
 「斬首つかまつる!」


 後ろの薪ざっぽ三人衆が声を上げる。

 あのリーダー格、アルってのか。やんちゃそうな名前だ。


 「でも、自警団の人達が…」

 メロディが庇うように声をだす。


 「知らねーもんは知らねーよ。さっさと帰れ、また攫われっぞ。後これ、この前の詫びの追加な。んじゃな」
 
 「わ!重っ」

 ドシャリ、と薬莢が沢山入った重みのある袋を渡されたメロディ。
 唖然とする子供達を背に、スタスタその場を去る錫乃介。
 

 「なんだよアイツ!自警団の人達も何なんだよ。わけわんねーよ」
 

 アルが大声で愚痴る。


 「ねぇ、なんでおじさんアタシ達が攫われたの知ってるの?言って無いよね?」
 「うん、それに僕、バイクのガラスで顔は見えなかったけど、あの背負ってるリュックは同じ物。やっぱりあのおじさんだよ」
 「じゃあ、やっぱり……」
 「ピートが言うんじゃ」
 「そうなんだろうな」
 「己、いっぱい食わされたか…」

 「あのオッサンめ!」


 (((ありがとうよ!)))



 子供達の叫び声に応えたのかどうか、夕日に向かってスタスタ歩く錫乃介は、軽く右手を上げるだけだった。








 決まったな……

 “アホですか、素直にお礼聞いときゃ良いでしょ”

 ガキに懐かれんのは、慣れてねーんだよ。


 真っ赤に染まる錫乃介の顔は、それはもうニヤニヤニヤニヤして、たいそう気味が悪かったそうな。
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