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第一章

南楓はちょっぴりお怒り

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『ねえ、何か忘れてませんかー?』
『何かって?』
『いや、忘れてるならいいですよー』
『ヒント』
『スイパラ』
『それヒントじゃなくて答え 忘れてたわけじゃないよ 期末考査もあったしタイミングが...』
『ふーん 本当かなぁ?私はいつ誘ってくれるのかなーって待ってたのに全然連絡くれないし』
『悪かった』

 俺が映画を観ていると、スマホが振動し、メッセージが届いたことを知らせてくれた。
 相手は楓で、中間考査が終わった後に約束したスイパラの件だった。文面からお怒りモードであることと察せられる。

 本当に忘れていたわけではなく、タイミングがなかったのだ。中間考査が終わったと思えば、すぐに期末考査がやってきたし。
 いや、本当に忘れていたわけでは......。

 とりあえず、期末考査も終わったことだし、今週あたり誘ってみるか。

『今週の土曜日は空いてる?』
『うん 空いてる』
『じゃあ今週の土曜日行こう どこで待ち合わせる?』
『いつもみたいに迎えに行くよ! 二時過ぎに迎えに行くから待ってて!』
『了解』

 最後に何のキャラかわからない笑顔のスタンプが送られてきたので、ご機嫌になってくれたようだ。

 土曜日か。少し心配だ。楓と二人で出かけることに不安になっているわけではない。お金の心配でもなく、服装だ。一応、彼氏ということになっているのだからダサい格好はできない。いや、彼氏でなくとも、誰かと歩くのなら、ダサい服装は避けなければいけない。けれども、俺にファッションセンスがあるか、と尋ねられたら、間違いなく、「ない」と答える。

 クローゼットを開ける。

「うーん」

 俺の感覚ではそれほどおかしな服は持っていないはず。客観的に見ると、どうなんだろう。
 こういう時はあいつに訊こう。服とかいっぱい持ってそうな奴が身近にいるではないか。

 俺は友だちの欄から神崎翔太の文字を探し、メッセージを送った。

『ファッションについて教えてください』と。
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