神さまだけど、質問ある?

Mr.Six

文字の大きさ
8 / 8

滾る猛牛とかみさま

しおりを挟む
 村の入り口に現れたモンスターの姿を見て、かみさまは息を呑んだ。目の前には人間の5倍ほどの体躯を持つ巨大な牛型のモンスターが立ちはだかっている。その全身は黒い毛に覆われ、まるで闇そのものが具現化したような威圧感を放っていた。

「でっけぇなぁ……」

 かみさまはスコップを握る手にじっとりと汗を感じながら呟いた。モンスターは低く唸り声を上げながら、鋭い目で村を睨みつけている。

 その角は堂々と大きく、まるで大木の枝のように逞しい。その足は人間の首の倍はあるほど太く、地面を踏みしめるたびに振動が伝わってくる。口からは粘っこい涎が垂れ落ち、獣臭い息が村の空気を一変させていた。村人たちは恐怖に震えながら隠れ、かみさまを遠巻きに見守っていた。

「こんなの、絶対無理だ……かみさま、どうするつもりなんだ?」
「まさか、本気であのスコップだけで立ち向かうつもりか……?」
 村人たちの不安そうな声が背後から聞こえてくる中、かみさまは肩を軽く回して自分を奮い立たせた。

「まぁ、俺が神さまだし、どうにかなるだろ!」
 そう言いながら、モンスターに一歩ずつ近づいていく。

「おーい! お前、そんなに怒んなよ!」
 かみさまが軽い口調で声をかけると、モンスターは低い唸り声を上げ、前足で地面を力強く蹴りつけた。土埃が舞い上がり、圧倒的な力の差を見せつける。

「はぁ……やっぱ話は通じないか。じゃあしょうがねぇ!」
 かみさまはスコップを構え、大きな声を上げながらモンスターに突進していった。

「うおおおおおおおっ!」
 スコップを思い切り振り下ろした瞬間、ゴキッという鈍い音が響いた。かみさまが手にしていたスコップの柄が真っ二つに折れてしまったのだ。

「うわっ! 俺のスコップ!」
 あまりにも情けない光景に、隠れて見守っていた村人たちは思わず頭を抱えた。

「もうダメだ……あの神さま、絶対何とかしてくれると思ったのに……」
「思ってねぇだろ!」
 スコップが折れて立ち尽くすかみさま。しかし、モンスターの様子をよく見ると、何かがおかしいことに気づいた。

「……ん? なんか腹がでかくないか?」
 モンスターの体を観察していると、異様に膨らんだ腹部が目に入った。よく見ると、その腹がゆっくりと上下に動いている。

「お前、もしかして……子供を身ごもってるのか?」
 かみさまがポツリと呟くと、モンスターは少しだけ唸り声を弱めた。

「そっか、腹減ってるんだな……それでイライラしてたのか。」
 かみさまは大きく頷き、地面に目をやった。

「よし! だったら俺に任せろ!」
 そう言うと、かみさまはその場で畑に向かい、残ったスコップの先端を手に取って土を掘り返し始めた。

「おい、かみさま! 何やってるんだよ!」
 隠れていた村人たちが声を上げるが、かみさまは気にせず掘り進め、ジャガイモやニンジンを次々と掘り出していく。

「お前たち、黙って見てろって! こいつ、ただの空腹で暴れてるだけだ!」
 掘り出した野菜をモンスターの足元に放り投げるとかみさまは口笛を吹いた。

「ほら、食えよ! これで落ち着くだろ!」
 モンスターは一瞬動きを止め、野菜を鼻で嗅ぎ回す。そして次の瞬間、大きな口で野菜をむしゃむしゃと食べ始めた。その様子を見た村人たちは一様に驚きの声を上げた。

「なんだ……食べ物をあげただけでおとなしくなったぞ!」
「いやいや、あれ、俺たちの貴重な食料じゃないか! 何してくれてんだよ!」
 村人たちは激怒し、かみさまに詰め寄ろうとする。しかし、その間にもモンスターはどんどん野菜を食べ、次第にその動きが穏やかになっていく。野菜を食べ終わったモンスターは、かみさまの前で静かに座り込み、その大きな頭を彼に向けた。まるで感謝を伝えるかのように、その目は柔らかな光を帯びている。

「おっ、な? お前、やっぱりいい奴だよな!」
 かみさまはその頭をポンポンと叩きながら満足げに笑った。

「おいおい、懐いてるじゃないか……」
「嘘だろ……あのモンスターが……」
 隠れていた村人たちも次々と出てきて、その光景を見つめた。怒りの感情も少しだけ和らぎ、代わりにかみさまの行動に対する驚きと感嘆が混ざった表情が浮かぶ。

「まぁ……あの無茶苦茶な神さまでも、今回は少しだけ役に立ったのかもな」
「いや、でも食料を勝手に使うのはどうかと思うけどな」
 村人たちは愚痴を言いながらも、心のどこかでかみさまの勇敢な姿に感激していた。

「よーし、お前も腹いっぱいになったんだから、もう暴れんなよ?」
 かみさまはモンスターにそう言い聞かせ、村人たちに向き直った。

「これで一件落着だろ? 俺ってやっぱり神さまだよな!」
 その一言に、村人たちは一斉に突っ込む。

「どこがだよ!」
 こうして、かみさまとモンスター、そして村人たちの奇妙な一日が幕を閉じたのだった――
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

悪役皇子、ざまぁされたので反省する ~ 馬鹿は死ななきゃ治らないって… 一度、死んだからな、同じ轍(てつ)は踏まんよ ~

shiba
ファンタジー
魂だけの存在となり、邯鄲(かんたん)の夢にて 無名の英雄 愛を知らぬ商人 気狂いの賢者など 様々な英霊達の人生を追体験した凡愚な皇子は自身の無能さを痛感する。 それゆえに悪徳貴族の嫡男に生まれ変わった後、謎の強迫観念に背中を押されるまま 幼い頃から努力を積み上げていた彼は、図らずも超越者への道を歩み出す。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国の辺境で、ただ静かに生き延びたいと願う少年、ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、前世の記憶と、母が遺した『物理法則を応用した高圧魔力』という危険な理論だけだ。 敵の大軍が迫る中、ヴァンは剣も振るわず、補給線と心理を切り裂く。 結果、敵軍は撤退。代償も、喝采も、彼には無意味だった。 だが、その「効率的すぎる勝利」は帝国の目に留まり、彼は最高峰の『帝国軍事学院』へと引きずり出される。 「英雄になりたいわけじゃない。生き残りたいだけだ」 謎の仮面メイド『シンカク』、命を取引に差し出した狼耳の少女『アイリ』。 少年は選択する。正義ではなく、最も費用対効果の高い道を。 これは、合理が英雄譚を侵食していく、学園ミリタリーファンタジー。 【※作者は日本語を勉強中の外国人です。翻訳ソフトと辞書を駆使して執筆しています。至らない点もあるかと思いますが、物語を楽しんでいただければ幸いです。】

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

処理中です...