妻がゾンビになりまして……

Mr.Six

文字の大きさ
上 下
16 / 21

5-1:妻とお化け屋敷に行きまして……

しおりを挟む
 今日はリモートワークでの在宅勤務。

上司は話の分かる方で、美鈴のことを話すと、リモートワークを提案してくれた。

さてと、そろそろ、勤務が終わるな。

俺は壁に掛けている時計を確認した。

17時24分……

勤務終了まで残り6分。

花音も帰宅してくるだろう。

美鈴も起きてくるし、食事の準備をしないとな。

ガチャッ

玄関が開く音がする。

「ただいま!」

花音が大きな声を出しながらドタバタとなにやら忙しそうな音がする。

「おかえり、花音。どうした? そんなに慌てて」

花音は走りながらこちらに向かってきて、何やらチケットを見せてきた。

「ねぇ、これ見て! 友達からもらったんだけど」

「ん?」

よく見ると、何やら遊園地のチケットのようだ。

「これはね、遊園地のチケット! 友達が明日の土曜日に行く予定だったらしいけど、用事が入って無理になったからあげるって、くれたの!」

余程嬉しかったのか、

花音は凄くウキウキしながら話しかけてきた。

「おぉ、そうか、気を付けていくんだぞ」

「えっ? これ3枚あるんだよ」

3枚?

「ん? ペアチケットとかじゃなくて?」

「そう、両親と行く予定だったんだってさ」

なるほど、それで微妙な数の3枚ということね。

「……で?」

俺は、目の前のコーヒーを飲もうとする。

「ママと一緒に行かない?」

「ぶはっ!!!!」

俺は口に含んだコーヒーをすべて吐き出してしまい、パソコンにかけてしまう。

「ゴホッゴホッ、いや、分かってるだろ! ママはゾンビだぞ!」

俺はティッシュでパソコンを拭いた。

「聞いて! ここのお化け屋敷がすごい怖いんだってさ! ママなら大丈夫かなぁって」

大丈夫かなぁって、

ママはリアルゾンビなんですけどね現在進行形で。

「ダメだダメだ! ママをそんなとこに連れたらお店の人が逆に危ないだろ!」

「え~、いいじゃん楽しいよ絶対!」


う~ん、

何か起こる予感しかしないが。

「とにかく、明日は10時に遊園地ね。行かなかったら口きかないから」

花音はそういって、自分の部屋に入っていった。

「おい、花音。……ったく」

まじか、せっかくの俺の休みが……―――




―――翌日、俺と花音と美鈴はお化け屋敷が有名な遊園地の入り口に来ていた。

「ねぇ、元気出してよ。遊園地だよ?」

花音はしっかりと化粧をして、楽しむ気満々だ。

美鈴はというと、花音がコーディネートしたおかげで、

遊園地でもしっかりと動けるスポーティな服装で来ている。

はっきり言って、スポーティな服装だからか、

ボディラインははっきりしていて、

目のやりどころに困る。

「いや、俺の休日が。やっとオンラインゲームが進められると思ったのに」

「こんな愛娘と外で遊べるんだからいいでしょ、それとも娘よりゲームの方が大事なの?」

花音は俺の胸に軽くグーパンチを入れてきた。

「そりゃ、娘の方が大事ですけど。まぁ、良いか」

俺は遊園地の入り口付近にあった料金表を確認した。

「え~っと、大人は1000円か。値段は良心的だな」

「これから、もっと高くなるって噂の遊園地だからね、今のうちに遊べるなら安いもんでしょ」

俺は入り口で、大人3人分の料金を支払った。

今のところ、美鈴はまだおとなしい。

それもそうだ、来る前にたらふく生肉食わしたからな。

こういう時は、事前に食べさせてないと、いつ暴れるかわからない。

「やっぱり、人は多いね」

入って気づいたのは、人の多さだ。

良心的な値段ということもあってか、

子供から大人まで多くの利用客がいる。

「花音、ママを離すなよ」

「大丈夫だよ、ね? ママ」

花音は美鈴から離れないように、腕を組んでいる。

「確かお化け屋敷が有名なんだっけ?」

俺は入り口で受け取ったパンフレットを開き、お化け屋敷の場所を確認した。

入り口からはかなり遠い、

さすが、メインというだけあって入り口からは遠いな。

「少し歩くぞ?」

俺は、花音と美鈴を連れて、お化け屋敷のある場所まで歩いて行った。
しおりを挟む

処理中です...