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垂れ流しスキルの裏側
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村での生活も少しずつ慣れてきた四日目の朝。窓の外では鶏の鳴き声が響き、村人たちはもう動き始めているようだった。
俺は目をこすりながらベッドから起き上がる。追放されたあの日のことを思い出すことは、もうあまりなくなった。ここでは俺のスキルが役に立っている――それが何よりの救いだった。
「さぁ、今日は何が出るかな……」
昨日から気になっていたことがある。スキルで出てくるものには法則があるのか、それとも完全にランダムなのか。試してみようと思った俺は、朝食もそこそこに村長のところへ向かった。
「リクト、相談か?」
村長のルードさんは家の前で作物を手入れしていた。
「はい。実は、自分のスキルについて少し調べてみたいんです」
「調べる?」
「例えば、環境や自分の気分で出てくるものが変わるのか、それとも全く関係ないのか……村のためにも、少しでも安定して役立つものを出せるようにしたいんです」
ルードさんは少し考え込むと、頷いた。
「面白い試みだな。どうせならみんなで協力しよう。村全体で実験してみたらどうだ?」
「えっ、村全体ですか?」
「ああ、お前のスキルは村の財産だ。なら、みんなでその可能性を探るのが一番だろう」
ルードさんの提案により、その日の昼から村人たちを巻き込んだ「垂れ流しスキル研究会」が始まった。
まず最初の実験は「場所を変えてみる」こと。
スキルを発動する場所によって何が出るかが変わるのか、村人たちは興味津々だった。
「よし、まずは畑の近くでやってみてくれ」
グレンの指示で、俺は畑の中央に立つ。畑を囲む村人たちが期待の眼差しを向ける中、スキルを発動した。
――ぽんっ。
最初に出てきたのは、袋に入った粉末。村人たちが覗き込むと、どうやら石灰らしい。
「これは土壌を改良するのに使えるな!」
農作業を担当している老人が感嘆の声を上げる。さらに続けて、金属製の工具がいくつか出てきた。これには鍛冶屋のカイラさんが驚きながら言った。
「これは新品の鍬だな! しかも丈夫そうだ!」
「やっぱり畑に関連するものが出るんじゃないか?」
村人たちの間でそんな推測が飛び交う。
次に試したのは川辺。
ここでは水に関係するものが出るのではないかと予想されたが、実際に出てきたのは――小さな木製の桶だった。
「これ、ちょうど水を汲むのに使えそうだ!」
さらに、釣り糸と針がセットになった道具も出てきた。これには村人たちが感心していた。
「やっぱり環境に影響されてるのかもしれないな」
そして最後は村の空き地、何も特徴のない平地で試してみた。ここでは、予想外のものが次々と出てきた。
最初に現れたのは小さなランタン。続いて、見たこともない植物の苗が現れる。
「これは……もしかして薬草か?」
村の薬師をしている女性、アリスが興味深そうに苗を手に取る。
「栽培してみる価値があるな。これが本当に薬草なら、村の薬不足を補えるかもしれない」
こうして、一日の実験が終わった頃、村人たちは口々に言った。
「リクト、お前のスキルはすごい可能性を秘めてるな!」
「環境である程度影響を受けるみたいだが、それでも予想外のものが出るから面白い!」
俺はみんなの顔を見て、ほっと胸を撫で下ろした。このスキルが村人たちに喜ばれていることが嬉しかった。
その夜、ルードさんが言った。
「この村に来てからまだ数日だが、お前はすでに村の一員だ。これからも頼むぞ、リクト」
俺はその言葉に力強く頷いた。この村での新たな生活が、少しずつ形になっていくのを感じていた。
俺は目をこすりながらベッドから起き上がる。追放されたあの日のことを思い出すことは、もうあまりなくなった。ここでは俺のスキルが役に立っている――それが何よりの救いだった。
「さぁ、今日は何が出るかな……」
昨日から気になっていたことがある。スキルで出てくるものには法則があるのか、それとも完全にランダムなのか。試してみようと思った俺は、朝食もそこそこに村長のところへ向かった。
「リクト、相談か?」
村長のルードさんは家の前で作物を手入れしていた。
「はい。実は、自分のスキルについて少し調べてみたいんです」
「調べる?」
「例えば、環境や自分の気分で出てくるものが変わるのか、それとも全く関係ないのか……村のためにも、少しでも安定して役立つものを出せるようにしたいんです」
ルードさんは少し考え込むと、頷いた。
「面白い試みだな。どうせならみんなで協力しよう。村全体で実験してみたらどうだ?」
「えっ、村全体ですか?」
「ああ、お前のスキルは村の財産だ。なら、みんなでその可能性を探るのが一番だろう」
ルードさんの提案により、その日の昼から村人たちを巻き込んだ「垂れ流しスキル研究会」が始まった。
まず最初の実験は「場所を変えてみる」こと。
スキルを発動する場所によって何が出るかが変わるのか、村人たちは興味津々だった。
「よし、まずは畑の近くでやってみてくれ」
グレンの指示で、俺は畑の中央に立つ。畑を囲む村人たちが期待の眼差しを向ける中、スキルを発動した。
――ぽんっ。
最初に出てきたのは、袋に入った粉末。村人たちが覗き込むと、どうやら石灰らしい。
「これは土壌を改良するのに使えるな!」
農作業を担当している老人が感嘆の声を上げる。さらに続けて、金属製の工具がいくつか出てきた。これには鍛冶屋のカイラさんが驚きながら言った。
「これは新品の鍬だな! しかも丈夫そうだ!」
「やっぱり畑に関連するものが出るんじゃないか?」
村人たちの間でそんな推測が飛び交う。
次に試したのは川辺。
ここでは水に関係するものが出るのではないかと予想されたが、実際に出てきたのは――小さな木製の桶だった。
「これ、ちょうど水を汲むのに使えそうだ!」
さらに、釣り糸と針がセットになった道具も出てきた。これには村人たちが感心していた。
「やっぱり環境に影響されてるのかもしれないな」
そして最後は村の空き地、何も特徴のない平地で試してみた。ここでは、予想外のものが次々と出てきた。
最初に現れたのは小さなランタン。続いて、見たこともない植物の苗が現れる。
「これは……もしかして薬草か?」
村の薬師をしている女性、アリスが興味深そうに苗を手に取る。
「栽培してみる価値があるな。これが本当に薬草なら、村の薬不足を補えるかもしれない」
こうして、一日の実験が終わった頃、村人たちは口々に言った。
「リクト、お前のスキルはすごい可能性を秘めてるな!」
「環境である程度影響を受けるみたいだが、それでも予想外のものが出るから面白い!」
俺はみんなの顔を見て、ほっと胸を撫で下ろした。このスキルが村人たちに喜ばれていることが嬉しかった。
その夜、ルードさんが言った。
「この村に来てからまだ数日だが、お前はすでに村の一員だ。これからも頼むぞ、リクト」
俺はその言葉に力強く頷いた。この村での新たな生活が、少しずつ形になっていくのを感じていた。
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