異世界でも自由生活~とりま必要なのは奴隷であってる?!~

咲楽桔梗

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そうだ!奴隷を買おう

信用をお金で買うということ

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 おはよう、三日目の朝。目覚まし時計の二度寝防止ボタンを操作して音を止める。一度目の目覚まし音で起きられないのは通常なので、とくに疲れを感じていることもない。
 窓から漏れる光は、転移してきた外界とリンクしているのでほどよい朝の光だった。
 う~ん、と両腕を挙げて伸びをする。肩も腰も痛くないってだけで幸せを感じるのだけれど、人間慣れるのは早いので当たり前になるのかな、なんか勿体ないな。
 素早く身支度をして食堂へ向かう。食後にそのまま出かけるのか、武器装備を傍らに食事をする冒険者らしき人たちが五人ほど朝食を摂っていたが、確かにこの人数では宿屋の方が心配になる。朝食時間はまだ余裕があるのでこれで全てというわけでもないだろうけれど。
「おはようございます」
「おはよう!今日は起きてきたんだね。顔色も悪くないし安心したよ」
 女将さんはおしゃべり好きで世話好きなのだろう。旦那さんもキッチンの小窓からホッとした顔を見せる。お人好し夫婦へ元気に応える。
「ずいぶん心配かけてしまったようで、生活リズム戻ってきてますので安心してください」
「それは良かったわ、はい、今日の朝食セット。申し訳ないけどおかわりは料金別になっちゃうけどパンは自由よ」
 キッチン側の壁下に置かれたテーブルに、つやつやふかふかのパンが積まれていた。夕飯の時も思ったが、物語定番の固いパンで苦労する必要がなさそうだ。
 卵の流通も問題なさそうで固めのスクランブルエッグ、炒り卵の方が近いか?火がしっかり入った卵料理が皿に盛ってある。ケチャップかけたいな……トマトソースならできそうだけど。
 メインは鶏肉っぽいのと野菜の炒め物、塩味だった。
「ごちそうさま。少し相談というか尋ねたいことがあるので、あとで時間貰ってもいいかな?必要ならなにか手伝いするので」
 小窓から旦那さんに声をかける。少し不思議そうな顔をしてから
「十刻の鐘が鳴ったら食堂に来てくれれば、少し話せますよ」
 と、言ってくれたので、
「ありがとう。お礼に二階のトイレ掃除しておくよ。オレの部屋のそうじもシーツ交換も要らないから」
 と、返してみた。え!?って顔の旦那さんと、会話に聞き耳を立てていた女将さんが慌てているのが楽しい。オレはここまで自分で運んできていた食器類を分かりやすく指さして、視線がそこに移ったのを確認してからクリーンを意識する。一瞬光った食器達は、使っているうちに付けられた眼で確認できない傷に入り込んでしまった油汚れまでもをきれいに消してしまったようだ。ドッキリ成功ってこんな気分なのかな。
「じゃあ、十刻に」
「あっあぁ、待ってる」
 旦那さんは頭を捻りながら食器を受け取ってくれて、その食器を何度も確認していた。

 早速二階のトイレへと向かってみると、覚悟していたほどの臭さは無かった。便器には鍋蓋のようなフタがしてあり、『閉め忘れ注意』の張り紙もしてあった。
 とりあえず、便器中身は後回しでトイレの個室の壁や床、天井、便器の外側をイメージしてクリーンをかける。汚れはもちろん染みこんだアンモニア臭的なツンとする匂いは消えた。
 お楽しみは便器の中。便器の下には箱が設置してる。これはテンプレではあるまいか?
 ワクワクしながらフタを開けると「うえっ」と嘔吐いてしまった。箱まで落ちきる筒は汚れたままだった。当然だろっと自分自身にツッコミを入れつつ涙ながらにクリーン。浮かれすぎだよ、はぁ。
 箱の中をライトの魔法で照らすと、底に居ましたスライム。クリーンしちゃったから餌がスッカラカンだよね、そのうちいっぱいになるよ。ごめんな、オレはまだキミの真上で尻丸出しにする勇気は持てないんだ。かってに満足してかってに謝罪していたら『スライムをテイムしますか』と出てきました。【NO】です!スライムが嫌いなのではない、このスライムはここのトイレでお仕事中です。
 オレは慌ててトイレの個室から出ると、順番を待っていたのか入れ違いに宿の客が入っていった。
「随分きれいになってるな」
 そんな驚きと、ちょっと嬉しそうな声が聞こえた。トイレの汚い店ってガッカリするんだよな。

 異空間ルームで約束の時間まで昨日の続きをする。
 蒸留水で作ると『体力回ポーション/効果中/副作用なし/特級』
 浄化水で作ると『体力回ポーション/効果大/副作用なし/特級』
 ちなみに水道水で作ると『体力回ポーション/効果小/副作用なし/特級』
 3g対して100ccの稀釈でそれぞれ、この鑑定結果になった。
 これ以外の稀釈だと、等級がそれぞれA級~F級か、『異物の入った水』になったのだった。

 セットしておいた目覚ましが9時55分で鳴り出す。スマホアプリの便利さが身にしみる。異空間トイレで用を足し、ブラックホールという亜空間にナイナイしてから気合いを入れて食堂へと向かう。
 寝る前に考えていたことを前向きに推し進めるための第一歩だ。
「アマネさん、アナタ一体何者なんですか?」
 待っていてくれた旦那さんの第一声はそれだった。数時間の間に何があった?製薬の実験に夢中でクリーンをお披露目したことをすっかり忘れていた。
「二階のトイレだけきれいになってしまって、他の階のお客さんが自分たちのところもってうるさいんですよ」
 あちゃー。良いことしたつもりが裏目に出てしまったようだ。
「やってきましょうか?」
 訊きたいことがそれなりにあるので、悪印象を持たれたくなくてつい言ってしまう。
「一日分の宿泊費で御願いします」
 旦那さんが逡巡したあとに言った。「よろこんで~」と言いたくなったが「了解です」とだけにして、一階、三階、四階のトイレを順に回ってクリーンしまくってやった。
 ものの数分で戻ってきたオレに、呆れた顔で旦那さんは「何者です?」また言っている。
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