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アーネスト①
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(なんだ、このボロ屋敷は)
林檎の木が生えた道が何百メートルも続いた奥に、その屋敷はあった。蔦が這い、まるでホラー屋敷のような場所に、アーネストはゴクリと唾を飲んだ。玄関に立つも、誰もいる様子はいない。
「おい、誰かいないのか」
アーネストは鍵もかかっていない屋敷の扉を開けた。底冷えのする古い屋敷の中にアーネストは寒気がした。
「ブロア侯爵アーネストだ。誰かいないのか?」
「客人ですか?」
気配もなく急に現れた使用人の女性が現れた。彼女はアーネストを認めると胡散臭そうな顔をして、彼を待合室に案内した。
(なんて失礼な使用人だ)
物置小屋のように箱が積んである待合室に、古いソファーが置いてある。アーネストはその汚そうなソファーに座ることも憚られ、立った状態で待つことにした。
(全く誰も来ないじゃないか!!)
待てども誰も来る様子はない。アーネストは待合室を出て人を探すことにした。
「やだ、セイン以上のイケメンじゃない!目の保養ね」
「しーっ、アリ姉、男性に聞こえてしまうわ」
屋敷の中を歩いていると、クスクスと笑い声が聞こえる。振り替えると、半分開いた扉から、十代前半であろう女子供がアーネストを覗き見していた。
「お、おい子供。ここの主人はどこにいる」
「きゃあ!!話しかけられてしまったわ」
「ほら、言ったでしょ、アリ姉」
バタバタと彼女たちは逃げていく。アーネストは追いかけようか悩んだが、逃げる若いレディを追いかけるのは良くないと思い、諦めた。
──パンパンパン!!──
銃声のような音が聞こえアーネストは窓からその音の方向に目を凝らした。小柄な男性の後ろ姿が見え、その男性は銃を構えていた。その銃を向けた方角には猪が倒れており、彼が猪を仕留めたのであろうと推測する。
(あれは、セインか?)
その後ろに控えているスーツを着た男はセインであろう。セインは彼から銃を受け取り、幸せそうな笑みを浮かべていた。
(あいつもあんな顔をするのだな)
いつも従順でどんな残業も過酷な仕事も耐えてきた男である。そんな男のいつもとは違う姿に驚いた。アーネストは彼らのいる場所に行こうとはや歩きで屋敷の外に出た。
「セイン、この方はコルケット男爵の縁者か」
アーネストがセインと男に声をかける。その男が振り返ったのだが、アーネストは驚きで声を出すことができなかった。
「女・・・?」
髪を後ろに縛り、男性の服を着ているのだが、シャツのボタンが弾けそうになるほど胸が出ている。そしてこの国のどこを探しても見つけることができないような輝くルビーの瞳にアーネストは引き込まれた。
「アーネスト様」
アーネストはセインの声に意識がもどされた。彼はアーネストに申し訳なさそうに眉をへの字に下げている。
「レディでしたか、申し訳ありません。ここの主人を待っていたのですが、なかなかいらっしゃらないようで」
「私がその主人よ」
「は・・・?」
アーネストはもう一度その女性を下から上に見やる。やはりどう見ても女性で主人だというのは嘘である。
「今まで報告書を作っていたのは・・・?」
「ええ、私で間違いないわ」
アーネストは長旅の疲れで弱っていたのか、衝撃的な言葉によろめいた。この領に関して解決しなければならない問題が山のようにありそうだと、頭痛がしたのだった。
林檎の木が生えた道が何百メートルも続いた奥に、その屋敷はあった。蔦が這い、まるでホラー屋敷のような場所に、アーネストはゴクリと唾を飲んだ。玄関に立つも、誰もいる様子はいない。
「おい、誰かいないのか」
アーネストは鍵もかかっていない屋敷の扉を開けた。底冷えのする古い屋敷の中にアーネストは寒気がした。
「ブロア侯爵アーネストだ。誰かいないのか?」
「客人ですか?」
気配もなく急に現れた使用人の女性が現れた。彼女はアーネストを認めると胡散臭そうな顔をして、彼を待合室に案内した。
(なんて失礼な使用人だ)
物置小屋のように箱が積んである待合室に、古いソファーが置いてある。アーネストはその汚そうなソファーに座ることも憚られ、立った状態で待つことにした。
(全く誰も来ないじゃないか!!)
待てども誰も来る様子はない。アーネストは待合室を出て人を探すことにした。
「やだ、セイン以上のイケメンじゃない!目の保養ね」
「しーっ、アリ姉、男性に聞こえてしまうわ」
屋敷の中を歩いていると、クスクスと笑い声が聞こえる。振り替えると、半分開いた扉から、十代前半であろう女子供がアーネストを覗き見していた。
「お、おい子供。ここの主人はどこにいる」
「きゃあ!!話しかけられてしまったわ」
「ほら、言ったでしょ、アリ姉」
バタバタと彼女たちは逃げていく。アーネストは追いかけようか悩んだが、逃げる若いレディを追いかけるのは良くないと思い、諦めた。
──パンパンパン!!──
銃声のような音が聞こえアーネストは窓からその音の方向に目を凝らした。小柄な男性の後ろ姿が見え、その男性は銃を構えていた。その銃を向けた方角には猪が倒れており、彼が猪を仕留めたのであろうと推測する。
(あれは、セインか?)
その後ろに控えているスーツを着た男はセインであろう。セインは彼から銃を受け取り、幸せそうな笑みを浮かべていた。
(あいつもあんな顔をするのだな)
いつも従順でどんな残業も過酷な仕事も耐えてきた男である。そんな男のいつもとは違う姿に驚いた。アーネストは彼らのいる場所に行こうとはや歩きで屋敷の外に出た。
「セイン、この方はコルケット男爵の縁者か」
アーネストがセインと男に声をかける。その男が振り返ったのだが、アーネストは驚きで声を出すことができなかった。
「女・・・?」
髪を後ろに縛り、男性の服を着ているのだが、シャツのボタンが弾けそうになるほど胸が出ている。そしてこの国のどこを探しても見つけることができないような輝くルビーの瞳にアーネストは引き込まれた。
「アーネスト様」
アーネストはセインの声に意識がもどされた。彼はアーネストに申し訳なさそうに眉をへの字に下げている。
「レディでしたか、申し訳ありません。ここの主人を待っていたのですが、なかなかいらっしゃらないようで」
「私がその主人よ」
「は・・・?」
アーネストはもう一度その女性を下から上に見やる。やはりどう見ても女性で主人だというのは嘘である。
「今まで報告書を作っていたのは・・・?」
「ええ、私で間違いないわ」
アーネストは長旅の疲れで弱っていたのか、衝撃的な言葉によろめいた。この領に関して解決しなければならない問題が山のようにありそうだと、頭痛がしたのだった。
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