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寮生活と恋煩い
「姉上、こんにちは」
「っ・・・久しぶりね」
レオナルドと主人公がフィーヌの前を通りすぎようとしていた。最近レオナルドは主人公と一緒にいるようである。
「じゃあユリ、この話はまた後程・・・」
「え、ええレオ」
(ユリって・・・言うのね)
主人公の名前を知ろうともしなかったが、今は二人は名前で呼びあう仲のようだ。
──ツキン──
(そりゃそうよね・・・ゲームが終わるまであと三ヶ月をきったんだもの。もうお互いを思いあっているときよね)
あと三ヶ月でフィーヌは学園を卒業する。そしてそれがフィーヌの追放イベントが行われる日である。
(もう、見たくないわ・・・)
レオナルドへのトラウマを植え付ける為に媚薬を盛ったあの日から、徐々にレオナルドを直視することができなくなった。彼を見る度に動悸が起こり、彼を避けてしまう。
+
+
+
「はぁ・・・」
小さな部屋の机の上で、フィーヌは大きくため息をついた。今フィーヌは学園の寮に一時的に住まわせてもらっている。卒業論文や試験の準備のために集中する場所が欲しいと親に頼んだのだ。
(本当は・・・レオ様に会いたくないのが一番の理由だわ)
フィーヌが行動を起こさずとも、二人はもうハッピーエンドを迎えることができそうである。フィーヌがゲーム通りどうこうしようとするのも、自分のエゴであると気づいてしまったのだ。
──コン、コン──
外の窓からノックの音が響く。ここは三階であるが、ここまで来れるのはカラスの半獣であるクロウ彼一人だけである。
「いらっしゃい、クロウ」
「フィーヌ様、こちらが頼まれていたものです」
「ありがとうクロウ・・・あなたには感謝してもしきれないわ」
クロウはここから少し遠いレイヴン王国出身であり、フィーヌはそこで新たなスタートを切ることにしたのである。クロウはレイヴン王国に色々と伝があるらしく、入国書類も秘密裏に準備してくれたのだ。
「でも、本当に良いのですか?フィーヌ様・・・」
「ええ。この為にずっと準備してきたんだもの」
フィーヌは前世の記憶があるので家事の心配はいらない。レイヴン国で話されるの中東語も時々クロウが練習に付き合ってくれている。仕事の心配をしていたのだが、クロウが仕事斡旋業者を知っているそうなので問題はなさそうだ。
(クロウのおかげでなんとかなりそうだわ)
「本当に、いいんですか・・・?身分も何もかも捨てることになるんですよ」
「・・・ううん、もう心残りはない・・・わ」
フィーヌの瞳から涙が溢れてくる。彼が屋敷に来てからフィーヌは彼の成長が見れて幸せだった。彼とこのまま一緒にいれたらと何度思ったことか。それでも運命には逆らえない。結果の分かっている失恋がこんだけ辛いとは思わなかった。
「ごめん、クロウ。なんだか勝手に涙が出ちゃって・・・うぅう」
「フィーヌ様・・・」
クロウはフィーヌを羽で抱きしめた。羽はフィーヌの身体をすっぽりと収め、その中でフィーヌは思う存分泣いた。彼の羽の中は揺り篭のように温かく、気が緩んでしまうのだ。
「フィーヌ様・・・あなたに伝えなければならないことがあります。私の身分に関してです」
「っ・・・ダメ、ダメだわ・・・そんな重大なこと私に言ってはいけない」
その言葉はゲーム中のヒロインに対して言う言葉である。クロウは隠れキャラなので詳しくは分からないが、彼は心を許した主人公に身分を明かすのだと本に書いてあったように思う。クロウはフィーヌの細い両腕を掴み、聞かないように耳を塞ぐフィーヌの手をそっと外した。
「いいえ、フィーヌ様、あなたに聞いて欲しいのです。私は・・・レイヴン王国の元王子なのです」
クロウはレイヴン王国の第五王子で、その優秀さを恨まれ未来の国王と噂されてから兄弟にまで命を狙われていた。なんとか逃げ出し、気配を消すことが得意なクロウは、隣国セクト国に諜報員として雇われ、今はビスト王国の内政を監視するよう命令されているそうだ。
「っ・・・久しぶりね」
レオナルドと主人公がフィーヌの前を通りすぎようとしていた。最近レオナルドは主人公と一緒にいるようである。
「じゃあユリ、この話はまた後程・・・」
「え、ええレオ」
(ユリって・・・言うのね)
主人公の名前を知ろうともしなかったが、今は二人は名前で呼びあう仲のようだ。
──ツキン──
(そりゃそうよね・・・ゲームが終わるまであと三ヶ月をきったんだもの。もうお互いを思いあっているときよね)
あと三ヶ月でフィーヌは学園を卒業する。そしてそれがフィーヌの追放イベントが行われる日である。
(もう、見たくないわ・・・)
レオナルドへのトラウマを植え付ける為に媚薬を盛ったあの日から、徐々にレオナルドを直視することができなくなった。彼を見る度に動悸が起こり、彼を避けてしまう。
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「はぁ・・・」
小さな部屋の机の上で、フィーヌは大きくため息をついた。今フィーヌは学園の寮に一時的に住まわせてもらっている。卒業論文や試験の準備のために集中する場所が欲しいと親に頼んだのだ。
(本当は・・・レオ様に会いたくないのが一番の理由だわ)
フィーヌが行動を起こさずとも、二人はもうハッピーエンドを迎えることができそうである。フィーヌがゲーム通りどうこうしようとするのも、自分のエゴであると気づいてしまったのだ。
──コン、コン──
外の窓からノックの音が響く。ここは三階であるが、ここまで来れるのはカラスの半獣であるクロウ彼一人だけである。
「いらっしゃい、クロウ」
「フィーヌ様、こちらが頼まれていたものです」
「ありがとうクロウ・・・あなたには感謝してもしきれないわ」
クロウはここから少し遠いレイヴン王国出身であり、フィーヌはそこで新たなスタートを切ることにしたのである。クロウはレイヴン王国に色々と伝があるらしく、入国書類も秘密裏に準備してくれたのだ。
「でも、本当に良いのですか?フィーヌ様・・・」
「ええ。この為にずっと準備してきたんだもの」
フィーヌは前世の記憶があるので家事の心配はいらない。レイヴン国で話されるの中東語も時々クロウが練習に付き合ってくれている。仕事の心配をしていたのだが、クロウが仕事斡旋業者を知っているそうなので問題はなさそうだ。
(クロウのおかげでなんとかなりそうだわ)
「本当に、いいんですか・・・?身分も何もかも捨てることになるんですよ」
「・・・ううん、もう心残りはない・・・わ」
フィーヌの瞳から涙が溢れてくる。彼が屋敷に来てからフィーヌは彼の成長が見れて幸せだった。彼とこのまま一緒にいれたらと何度思ったことか。それでも運命には逆らえない。結果の分かっている失恋がこんだけ辛いとは思わなかった。
「ごめん、クロウ。なんだか勝手に涙が出ちゃって・・・うぅう」
「フィーヌ様・・・」
クロウはフィーヌを羽で抱きしめた。羽はフィーヌの身体をすっぽりと収め、その中でフィーヌは思う存分泣いた。彼の羽の中は揺り篭のように温かく、気が緩んでしまうのだ。
「フィーヌ様・・・あなたに伝えなければならないことがあります。私の身分に関してです」
「っ・・・ダメ、ダメだわ・・・そんな重大なこと私に言ってはいけない」
その言葉はゲーム中のヒロインに対して言う言葉である。クロウは隠れキャラなので詳しくは分からないが、彼は心を許した主人公に身分を明かすのだと本に書いてあったように思う。クロウはフィーヌの細い両腕を掴み、聞かないように耳を塞ぐフィーヌの手をそっと外した。
「いいえ、フィーヌ様、あなたに聞いて欲しいのです。私は・・・レイヴン王国の元王子なのです」
クロウはレイヴン王国の第五王子で、その優秀さを恨まれ未来の国王と噂されてから兄弟にまで命を狙われていた。なんとか逃げ出し、気配を消すことが得意なクロウは、隣国セクト国に諜報員として雇われ、今はビスト王国の内政を監視するよう命令されているそうだ。
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