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サラ⑨
「私が、パーティーに?」
「ええ、サラ先生。招待状が来たんだけど、心細くて・・・でも先生がガイルお兄様と来てくれたら励みになるわ」
ガイルと一夜を明かしてから、彼は仕事が急に忙しくなったのか屋敷に戻ることが少なくなった。しかし彼が帰ってきた際に「一緒にパーティーに行ってくれないか」と誘われ、断ったのだがレイラの為だと言われれば断ることはできない。
(ヴェール伯爵のパーティーとなると、彼もきっと戦争を思い出してしまって辛いのかもしれないわ)
ヴェール伯爵が訪れた日、ガイルの様子がおかしかった。酒を浴びるように飲み、意識を失う程だった。
(悪夢にも魘されていたものね)
サラは今回だけと、参加する返事をしたのだった。
+
+
+
「こんな、素敵なドレスを?」
「ええ、こちらをお召しください」
サラの体にフィットするそのドレスは、艶やかな黄色で、使用人に引き上げられた胸の上にはキラキラと輝くネックレスが乗っていた。耳にはお揃いのイヤリングが付けられ、まるでお姫様になった気分である。
(すごく、高そうだわ)
「シーガル伯爵が外でお待ちです」
「・・・はい、分かりました」
肌触りの良さそうな黒のフロックコートに身を包み、すらりと長い足でこちらに向かってくるのはパーティーのパートナーであるガイルである。見えている片方の瞳を細め、サラをじっと見つめていた。
「お待たせしました、シーガル伯爵」
「とっても素敵だ・・・こんなに綺麗なら毎日でも着飾ってやりたいな」
彼の笑顔が眩しく感じる。彼はこんな優しい顔をしていただろうか。
「そんな・・・一度で十分ですわ。こんな素敵なものありがとうございます。なんとお礼を言ったら良いか」
パーティーを断ろうとした際にドレスを持っていないという言い訳も挙げたが、ドレスはこちらで用意すると言われたのだ。自分で支払うと言ったのだが、これもレイラがパーティーに慣れるための付き添いだから仕事の一つだと言って断られてしまった。
(このドレス、私の一年の給金を越えるかもしれないわ)
「さあ、いきましょうか、レディ。レイラも下で待っているぞ」
「え、ええ」
出してきた彼の腕にサラは遠慮がちに手を入れた。がっしりと捕まれた手に彼の逞しい筋肉があたり、紳士にリードする彼にときめいてしまう。
「ふあああ!!サラ先生・・・素敵だわ」
レイラが感動の声をあげる。側にいたルリも感心したようにサラを見ていた。
「ええ、本当に素敵ねぇ。眼鏡の下にこんな可愛らしい顔を隠してたなんて・・・」
ルリがガイルにぼそりと小声で一言言っていたがガイルは気まずそうな顔を浮かべただけであった。
「さあ、行きましょうか」
レイラの同伴は父方の従兄弟であるチャーリーに頼んでおり、彼がレイラを迎えにくる。チャーリーはレイラより少し年上の十八歳で、学校を卒業すればレイラの父の外交官としての仕事を手伝うそうだ。
「サラ先生、どうしましょう、緊張してきました」
「大丈夫、いつもの練習みたいにすれば大丈夫よ」
レイラを励ましつつパーティー会場に入ると、多くの人で既に賑わっていた。サラたちは迎え入れたヴェール伯爵に挨拶をする。
「本日はお招きいただき、ありがとうございます。ヴェール伯爵」
「いやあ、よく来てくれた!国の英雄が来てくれたと皆喜んでくれるよ」
ヴェール伯爵がサラのことをチラリと見て笑みを浮かべた。
「英雄のパートナーを得たラッキーなこの女性は、どなたかな」
「サラ・ノートンと申します」
「いやぁ、お美しい。是非私のお相手もしていただきたいですな」
ヴェール伯爵はサラの手を取り、手の甲にキスをした。ねっとりと付けられた唇に、どこか寒気のする感覚がした。彼はキスをしながら値踏みするような目でサラを見ていた。
(やだ、この人)
サラは身を固くした。しかしガイルが一歩前に出てサラを守るように立った。
「私のパートナーは恥ずかしがりでして、これ以上は勘弁願います」
「ふむ、君が一人の女性に熱をあげるなど珍しいじゃないか。ではお嬢さん、楽しんでいってくださいよ」
立ち去り際に、ヴェール伯爵がサラの尻を掴む。サラが振り向くと彼はニヤリと笑っていた。他の者は気がついていないようで、サラも前を向いて会場を進んだ。
「ええ、サラ先生。招待状が来たんだけど、心細くて・・・でも先生がガイルお兄様と来てくれたら励みになるわ」
ガイルと一夜を明かしてから、彼は仕事が急に忙しくなったのか屋敷に戻ることが少なくなった。しかし彼が帰ってきた際に「一緒にパーティーに行ってくれないか」と誘われ、断ったのだがレイラの為だと言われれば断ることはできない。
(ヴェール伯爵のパーティーとなると、彼もきっと戦争を思い出してしまって辛いのかもしれないわ)
ヴェール伯爵が訪れた日、ガイルの様子がおかしかった。酒を浴びるように飲み、意識を失う程だった。
(悪夢にも魘されていたものね)
サラは今回だけと、参加する返事をしたのだった。
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「こんな、素敵なドレスを?」
「ええ、こちらをお召しください」
サラの体にフィットするそのドレスは、艶やかな黄色で、使用人に引き上げられた胸の上にはキラキラと輝くネックレスが乗っていた。耳にはお揃いのイヤリングが付けられ、まるでお姫様になった気分である。
(すごく、高そうだわ)
「シーガル伯爵が外でお待ちです」
「・・・はい、分かりました」
肌触りの良さそうな黒のフロックコートに身を包み、すらりと長い足でこちらに向かってくるのはパーティーのパートナーであるガイルである。見えている片方の瞳を細め、サラをじっと見つめていた。
「お待たせしました、シーガル伯爵」
「とっても素敵だ・・・こんなに綺麗なら毎日でも着飾ってやりたいな」
彼の笑顔が眩しく感じる。彼はこんな優しい顔をしていただろうか。
「そんな・・・一度で十分ですわ。こんな素敵なものありがとうございます。なんとお礼を言ったら良いか」
パーティーを断ろうとした際にドレスを持っていないという言い訳も挙げたが、ドレスはこちらで用意すると言われたのだ。自分で支払うと言ったのだが、これもレイラがパーティーに慣れるための付き添いだから仕事の一つだと言って断られてしまった。
(このドレス、私の一年の給金を越えるかもしれないわ)
「さあ、いきましょうか、レディ。レイラも下で待っているぞ」
「え、ええ」
出してきた彼の腕にサラは遠慮がちに手を入れた。がっしりと捕まれた手に彼の逞しい筋肉があたり、紳士にリードする彼にときめいてしまう。
「ふあああ!!サラ先生・・・素敵だわ」
レイラが感動の声をあげる。側にいたルリも感心したようにサラを見ていた。
「ええ、本当に素敵ねぇ。眼鏡の下にこんな可愛らしい顔を隠してたなんて・・・」
ルリがガイルにぼそりと小声で一言言っていたがガイルは気まずそうな顔を浮かべただけであった。
「さあ、行きましょうか」
レイラの同伴は父方の従兄弟であるチャーリーに頼んでおり、彼がレイラを迎えにくる。チャーリーはレイラより少し年上の十八歳で、学校を卒業すればレイラの父の外交官としての仕事を手伝うそうだ。
「サラ先生、どうしましょう、緊張してきました」
「大丈夫、いつもの練習みたいにすれば大丈夫よ」
レイラを励ましつつパーティー会場に入ると、多くの人で既に賑わっていた。サラたちは迎え入れたヴェール伯爵に挨拶をする。
「本日はお招きいただき、ありがとうございます。ヴェール伯爵」
「いやあ、よく来てくれた!国の英雄が来てくれたと皆喜んでくれるよ」
ヴェール伯爵がサラのことをチラリと見て笑みを浮かべた。
「英雄のパートナーを得たラッキーなこの女性は、どなたかな」
「サラ・ノートンと申します」
「いやぁ、お美しい。是非私のお相手もしていただきたいですな」
ヴェール伯爵はサラの手を取り、手の甲にキスをした。ねっとりと付けられた唇に、どこか寒気のする感覚がした。彼はキスをしながら値踏みするような目でサラを見ていた。
(やだ、この人)
サラは身を固くした。しかしガイルが一歩前に出てサラを守るように立った。
「私のパートナーは恥ずかしがりでして、これ以上は勘弁願います」
「ふむ、君が一人の女性に熱をあげるなど珍しいじゃないか。ではお嬢さん、楽しんでいってくださいよ」
立ち去り際に、ヴェール伯爵がサラの尻を掴む。サラが振り向くと彼はニヤリと笑っていた。他の者は気がついていないようで、サラも前を向いて会場を進んだ。
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