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ガイル⑰
「彼女は・・・出ていったよ。君は彼女の何なんだ」
ヒューゴから発せられた彼女の名前は空耳かと疑った程である。ヒューゴはガイルのサラがもういないという言葉に舌打ちをした。
(サラの男か・・・?それともこいつも彼女に騙された被害者か?)
ガイルは彼の言葉を待つ。
「彼女は・・・私の弟であるトムの妻で、私の義妹です」
「っ・・・!!」
それからポツポツと事情を語りだした。ヒューゴがガイルを恨んでいたこと、サラに全てガイルのせいだと話したことや、ガイルを暗殺するようにお願いしたことまで、全てがガイルを驚かせる内容であった。
「申し訳ございません・・・私は両足を失ったことで怒りに溢れ、あなたを逆恨みし、彼女を巻き込んでしまった・・・」
「君が私を恨むのは仕方のないことだ・・・」
ガイルは兄や仲間を失ったのは自分のせいだと思っていた。
「数日前彼女から・・・手紙が届き、私は頭が冷えました。それから急いでここまで駆けつけたという訳です」
「彼女は、家に帰っていないということか?」
ガイルはその手紙を開けた。そこには急いで書かれたであろう彼女の字があった。
『義兄様
頼まれたこと、遂行することができませんでした。彼に会い、彼も戦争に苦しんでいることが分かったんです。毎日悪夢にうなされ、もがき苦しむ姿を見て、過去の戦争からの憎しみは、もう忘れられるべきだと思うのです・・・
ヴェール伯爵に弱味を握られ、彼の愛人にならなければ義兄様の命もシーガル伯爵の命も奪うと言われました。もう私は誰かの命が失うのを見たくはないのです。ヴェール伯爵も、愛人になれば悪いようにはなさらないようなので、私のことは心配なさらずに 』
そして最後の言葉にガイルは言葉を失った。
『義兄様、ごめんなさい。私はシーガル伯爵を愛してしまいました サラ 』
(なんてことだ・・・)
「私が、ヴェール伯爵に話してしまったんです・・・それで彼女は弱味を握られて・・・」
ヒューゴから涙が溢れ出す。ガイルはその手紙をもう一度読み、その手紙を胸に当てた。
(彼女は、私を愛していた・・・)
サラがガイルを暗殺しようとしたことに、全く怒りを覚えなかった。あの戦争で家族を失った者はガイルを恨んで当たり前である。何より彼女はガイルを愛していた。その愛があれば、全てが許されるのだ。
(彼女を、迎えにいく)
ガイルはふと、戦後当時のランクス少佐から言われた言葉が思い浮かんだ。ガイルは絶望に飲まれ、彼の言葉を真剣に受け止めていなかった。
『船の数が、おかしかったように思うのです・・・申請していたヴェール伯爵領の軍船が来てなかったような気がします』
『そんな過去のこと、もうどうでも良い』
クリアになったガイルの頭のなかで、当時を思い出す。もうあの頃のことを考えても、自棄になったりはしない。
(確かに・・・ヴェール伯爵の船はなかった)
ガイルはヒューゴにも当時のことを思い出すよう、詳細に聞く。
「そういえば・・・なかったように思います・・・」
ガイルは当時の資料を埃の被った倉庫から取り出した。申請した船と、受けた被害者のリストをパラパラと捲る。
(ヴェール伯爵領の軍隊の負傷者が、ゼロだと?)
「うぅ・・・!!」
ヒューゴが急に苦しみだした。足に痛みがあるようで、ガイルはダンに医者を要請するように伝える。彼は痛みで意識がとびそうだ。しかし気力でヒューゴはガイルのシャツを掴んだ。
「シーガル伯爵・・・義妹を・・・どうかお助けください」
「ああ、君はゆっくり休んでいてくれ」
ダンの右腕であるザスクにサラの居場所を探すように伝える。ヴェール伯爵はまだシーガル伯爵領に滞在しているはずなので、まだこの領内にいるはずだ。ガイルのテリトリーであれば、探すのは容易いであろう。
「ヴェール伯爵が夜によく訪れる場所があるそうです。たしかセイラという女が経営してる会員制の店だと」
ガイルは住所を聞き、その場所まで馬で駆け抜けた。
ヒューゴから発せられた彼女の名前は空耳かと疑った程である。ヒューゴはガイルのサラがもういないという言葉に舌打ちをした。
(サラの男か・・・?それともこいつも彼女に騙された被害者か?)
ガイルは彼の言葉を待つ。
「彼女は・・・私の弟であるトムの妻で、私の義妹です」
「っ・・・!!」
それからポツポツと事情を語りだした。ヒューゴがガイルを恨んでいたこと、サラに全てガイルのせいだと話したことや、ガイルを暗殺するようにお願いしたことまで、全てがガイルを驚かせる内容であった。
「申し訳ございません・・・私は両足を失ったことで怒りに溢れ、あなたを逆恨みし、彼女を巻き込んでしまった・・・」
「君が私を恨むのは仕方のないことだ・・・」
ガイルは兄や仲間を失ったのは自分のせいだと思っていた。
「数日前彼女から・・・手紙が届き、私は頭が冷えました。それから急いでここまで駆けつけたという訳です」
「彼女は、家に帰っていないということか?」
ガイルはその手紙を開けた。そこには急いで書かれたであろう彼女の字があった。
『義兄様
頼まれたこと、遂行することができませんでした。彼に会い、彼も戦争に苦しんでいることが分かったんです。毎日悪夢にうなされ、もがき苦しむ姿を見て、過去の戦争からの憎しみは、もう忘れられるべきだと思うのです・・・
ヴェール伯爵に弱味を握られ、彼の愛人にならなければ義兄様の命もシーガル伯爵の命も奪うと言われました。もう私は誰かの命が失うのを見たくはないのです。ヴェール伯爵も、愛人になれば悪いようにはなさらないようなので、私のことは心配なさらずに 』
そして最後の言葉にガイルは言葉を失った。
『義兄様、ごめんなさい。私はシーガル伯爵を愛してしまいました サラ 』
(なんてことだ・・・)
「私が、ヴェール伯爵に話してしまったんです・・・それで彼女は弱味を握られて・・・」
ヒューゴから涙が溢れ出す。ガイルはその手紙をもう一度読み、その手紙を胸に当てた。
(彼女は、私を愛していた・・・)
サラがガイルを暗殺しようとしたことに、全く怒りを覚えなかった。あの戦争で家族を失った者はガイルを恨んで当たり前である。何より彼女はガイルを愛していた。その愛があれば、全てが許されるのだ。
(彼女を、迎えにいく)
ガイルはふと、戦後当時のランクス少佐から言われた言葉が思い浮かんだ。ガイルは絶望に飲まれ、彼の言葉を真剣に受け止めていなかった。
『船の数が、おかしかったように思うのです・・・申請していたヴェール伯爵領の軍船が来てなかったような気がします』
『そんな過去のこと、もうどうでも良い』
クリアになったガイルの頭のなかで、当時を思い出す。もうあの頃のことを考えても、自棄になったりはしない。
(確かに・・・ヴェール伯爵の船はなかった)
ガイルはヒューゴにも当時のことを思い出すよう、詳細に聞く。
「そういえば・・・なかったように思います・・・」
ガイルは当時の資料を埃の被った倉庫から取り出した。申請した船と、受けた被害者のリストをパラパラと捲る。
(ヴェール伯爵領の軍隊の負傷者が、ゼロだと?)
「うぅ・・・!!」
ヒューゴが急に苦しみだした。足に痛みがあるようで、ガイルはダンに医者を要請するように伝える。彼は痛みで意識がとびそうだ。しかし気力でヒューゴはガイルのシャツを掴んだ。
「シーガル伯爵・・・義妹を・・・どうかお助けください」
「ああ、君はゆっくり休んでいてくれ」
ダンの右腕であるザスクにサラの居場所を探すように伝える。ヴェール伯爵はまだシーガル伯爵領に滞在しているはずなので、まだこの領内にいるはずだ。ガイルのテリトリーであれば、探すのは容易いであろう。
「ヴェール伯爵が夜によく訪れる場所があるそうです。たしかセイラという女が経営してる会員制の店だと」
ガイルは住所を聞き、その場所まで馬で駆け抜けた。
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