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サラ⑳

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「屋敷を出てから、ここで生活してたんだって?」


サラは言われるがまま部屋に戻った。頭がボーッとして何も考えることができず、ただ外にある三日月を見ていた。そんな中、彼女の部屋にガイルが入ってきた。


「・・・シーガル、伯爵」
「もう名前で呼んでくれないのか?」


ガイルはサラに近づき、ぎゅっとサラを抱きしめた。彼の温もりにサラは心が満たされていく。


「生きててくれて・・・良かった」
「なんで・・・全て聞いたのでしょう?義兄に・・・」


(私が彼を殺そうと思ってたって・・・バレてしまった)


それなのにサラを抱き止めるガイルにサラは理解が追いつかない。


「ああ、全部聞いた。君が私を暗殺しようとしたことも・・・ヴェール伯爵に脅されたことも聞いてるよ」
「私、あなたを殺そうとしたのよ・・・私を恨んでないの?」
「君に殺されるなら・・・本望だ。ただ、君を永遠に守る名誉が欲しいから、やっぱり死ぬのは嫌だけどな」


(こんな私を・・・許すの?)


「私を、許して、くれるの?」
「・・・君を許すことはできないな」


ガイルはサラの髪を手の甲で撫で、額に口づけた。


「私に嘘ついたことは、いけないよ。君は、私を愛してるんだろう?」
「っ・・・」


サラは一粒の涙を流した。サラは本当のことを口にする。


「愛してる・・・愛してるの・・・」


サラはガイルにしがみついた。彼の胸板にすがりつき、愛してると何度も呟いた。


「じゃあ、この指輪は・・・君に返さないとな」
「っ・・・」
「『あなたを本当に愛してくれる人に渡して下さい』って、そう君の手紙に書いてあっただろう?」


ガイルは胸元からその指輪を取り出した。その指輪をサラの薬指にはめる。


「君なしじゃ生きられないから、私と結婚してくれないか」
「・・・でも」
「私の妻に、なりたいだろう?」
「っ・・・」
「毎日死ぬまで愛してあげよう。返事は?」
「・・・はい」


ガイルは満面の笑みを浮かべ、サラの唇にキスをした。


「んっ・・・」
「サラ・・・」


二人のキスに熱がこもる。舌を絡めあい、何度も吸い付いた。まるでこの世界にはガイルとサラ二人しか存在しないかのように、二人は互いの唇を求めあった。



「お楽しみのとこ悪いけど、秘書のダンさんがおみえだよ」
「っ・・・///」


セイラが部屋に入ってくる。扉も開いたままだったので二人の行動は丸見えであった。ガイルはゴホンと咳をし、気まずそうに部屋を出ていった。彼らは事後処理が残っているそうで、今夜は帰れないそうだ。サラは一足先に屋敷に戻ることになり、迎えの馬車が店の前に止まる。


「セイラさん・・・ありがとうございました」
「ああ、幸せにおなりよ」
「はいっ・・・」


セイラはサラに優しそうな笑みを浮かべ、サラを見送った。サラが屋敷についたときはレイナやルリに抱きつかれ、サラは再び涙を流した。


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