5 / 30
Sideフィル②
しおりを挟む(くそっ、終戦してしばらく経ってるのになぜ婚約もせずに、フラフラしてるんだ!)
久しぶりに会った彼女は相変わらず美しかった。身長は伸びていないが瞳には聡明さが伺え、腰つきもしっかりとしていて子供も産めるような体つきだ。
(こんな怪我をして変わり果てた弟に幻滅するだろうな)
新しく入ったらしい女の使用人が、フィルをうっとりと見ていたので、彼女を部屋に呼んでやった。名前は覚えていないが、体つきはそんな悪くなかったと思う。むしゃくしゃしていたので久々に女を抱くのも悪くないと思ったのだ。
(大の大人になって部屋に入ってくるなんてどういう神経してるんだ)
「姉上、いいところを邪魔してくれましたね」
「あなたっ・・・!!家でこんなことを!!最低だわ!!」
エリザベスはフィルを睨み付けているのだが、そんな彼女の目線が今フィルだけに注がれていると思うだけで気持ちが高ぶった。
「姉上は僕がブラウニーをまだ好きだと思っているんですか?お気楽な考えをしてるんですねぇ」
彼女に酷い言葉を色々ぶつけた。彼女の瞳は潤んでいる。フィルはその瞳に吸い込まれるように近づいていったがエリザベスは後退り、彼女を壁まで追い込んだ。
「こんな夜中に女性が男の部屋に来てはいけませんよ。そんな薄着で・・・なんなら今日は姉上がお相手してくれますか」
「なっ・・・!!」
この時本気で彼女を抱きたかった。抱き潰して絶望させてやろうかと思ったくらいだ。
(まったく、こんな薄着で入ってくるなんて)
「ふん、冗談ですよ。あなたのような恋も知らないお子様を相手にする気にもなりません。もう二度と僕には構わないでください。僕はあなたを姉上だなんて思ったこと一度もありませんから」
「なんですって!」
ーーバシン!!
エリザベスのあんな小さな手で打たれたって全く痛くなかったのに、心はズキズキと傷んだ。
(これ以上僕を惑わせないで下さい姉上・・・)
+
+
+
感謝祭当日、シュバルツから連絡がありダリル伯爵領に遊びにくるとのことだった。すぐに警備を増やし、彼を迎えた。今日のエリザベスは派手すぎない黄色の動きやすいドレスを着ていて動く度に足首がチラチラと見えている。
「君のことはよくフィルに聞いてるよ。噂通りとっても可愛らしい令嬢だ。食べてしまいたいくらいだよ」
シュバルツはエリザベスに歩みより彼女の手の甲にキスをしようとしたが、フィルはシュバルツの足の脛をおもいっきり蹴りあげた。親友でさえ彼女に触るのを見たくなかったのだ。
「あ~あ、お前の義姉さん、ザックと踊ってるぞ。お前も誘わなくていいのかよ」
「そんなことできるか」
ブルーム伯爵長男のザックは容姿端麗でブルーム伯爵家の資産も伯爵の中では断トツで、令嬢たちに大人気なのである。
「ザックはフィルと一緒でプレイボーイだから、お義姉さんペロリと食べられちゃうかもね」
「ぐっ・・・」
楽しそうに舞う妖精と、誰もが羨む美男はとてもお似合いのカップルに見える。フィルのような片目の視力を無くし、顔は悪くないが悪人顔で傷だらけの男なんてエリザベスには似合わない。
「はぁ・・・そんなに思い詰めるなら彼女にお前の気持ちを伝えればいいじゃないか。お前は養子だから血は繋がってないんだろ?」
「・・・妖精を僕なんかが汚しちゃいけないんだよ」
シュバルツは何度言っても無駄だと分かったのかそれ以上は何も言わなかった。シュバルツは花火やショーなど数時間楽しんで王城へ帰っていった。
(あのザックって野郎、エリザベスを下心丸出しで見ていたな)
彼らがダンスをしているのを瞬きもせずに観察していたのだが、彼の目線はチラチラと胸元にいっていたし、去り際もベタベタとエリザベスを触っていた。耳元で何かを囁いていたが、何かに誘っていたのだろう。フィルは立ち上がって出口に向かっていると、女性に声をかけられた。
「フィル様、お久しぶりです」
「・・・ああ、ミス・ウォード、お久しぶりです」
ミス・ウォードは未亡人で一度夜お相手をしてくれた人だ。年はもう三十五を越えていて少しだけ体に衰えが出てきているようだが、十分に美しい。
「久しぶりに、一杯しませんか?」
「ええ、喜んで」
(あれ・・・朝か・・・)
酒を大量に飲み、彼女の家で寝てしまったようだ。昨夜彼女の家に行ったことは覚えているが、それからのことは覚えていない。
「フィル様、昨日は楽しませていただきました。またいつでも遊びにいらしてね」
「ええ、またお相手してください」
「いつでも歓迎いたしますわ」
(うっ・・・久々に飲み過ぎた)
フィルは水と二日酔いの薬を貰い伯爵邸に戻っていった。
33
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
結婚式に結婚相手の不貞が発覚した花嫁は、義父になるはずだった公爵当主と結ばれる
狭山雪菜
恋愛
アリス・マーフィーは、社交界デビューの時にベネット公爵家から結婚の打診を受けた。
しかし、結婚相手は女にだらしないと有名な次期当主で………
こちらの作品は、「小説家になろう」にも掲載してます。
婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜
紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。
連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
男として王宮に仕えていた私、正体がバレた瞬間、冷酷宰相が豹変して溺愛してきました
春夜夢
恋愛
貧乏伯爵家の令嬢である私は、家を救うために男装して王宮に潜り込んだ。
名を「レオン」と偽り、文官見習いとして働く毎日。
誰よりも厳しく私を鍛えたのは、氷の宰相と呼ばれる男――ジークフリード。
ある日、ひょんなことから女であることがバレてしまった瞬間、
あの冷酷な宰相が……私を押し倒して言った。
「ずっと我慢していた。君が女じゃないと、自分に言い聞かせてきた」
「……もう限界だ」
私は知らなかった。
宰相は、私の正体を“最初から”見抜いていて――
ずっと、ずっと、私を手に入れる機会を待っていたことを。
夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。
Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。
そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。
そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。
これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)
義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話
よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。
「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる