【R18】義弟は私を溺愛している

ほのじー

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仕事

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「エリィ!仕事はどう?」
「アン!!ありがとう、大変だけどとてもやりがいがあるわ」


エリザベスはあの後アンを頼り、仕事を紹介してもらった。偽名を使い、エリィ・ベーカーという名前で仕事をしている。元々エリィは愛称だったのでエリザベスにとっても聞き慣れている。伯爵家の娘が平民の仕事をしているとなると、家の名前に傷がつくのでこの偽名を使ったのだ。変装もしていて、いつも髪を帽子に詰め込んで隠し、分厚い丸めがねを掛けている。


「エリィちゃん、君のコラムすごく好評だよ」
「ありがとうございます、編集長」



エリザベスは新聞社の記者として働いていた。元々文章を書くのが好きだったので、アンにこの仕事を紹介してもらったのだ。始めは雑用ばかりだったが、三ヶ月程経つとエリザベスの仕事ぶりが編集長や同僚に認知されるようになり、最近はコラムの一つを任されている。



(次のテーマは何にしようかしら・・・)



エリザベスは地方を回り、その地方の特産品や観光地、歴史などを記事とするのだが、そのコラムが堅苦しくない分かりやすい文面と絵で旅好きの旅行者や商人たちに大好評を受けている。エリザベスは何度も考えた末今回のテーマを決めた。



(よし、できた!!)




『戦後復興の物語~ダリル領の大改革』



エリザベスが王都の新聞社で働きだした後も、ダリル領の復興はさらに進んだようだ。フィルが国王からご褒美としてもらった賞金で、ダリル領で盛んなワインを集めたワインミュージアムを作る予定だと発表されている。そこでは試飲ができたり、子供が遊べる場所を作るそうだ。これから観光地としても栄えそうである。




(よかった・・・フィルも頑張ってるみたいね)









「エリィちゃん、前回君が書いたコラムに問い合わせがいくつか来てたんだけど、なんとあのダリル伯爵ご子息からも問い合わせがあったんだ」
「え・・・」



(まさか、バレた・・・?)



「あのコラムはダリル領のことが詳しく書かれていて素晴らしかったと褒めていたよ」
「そ、そうですか・・・」
「じゃ、また宜しく良い記事頼むねエリィちゃん」
「は、はい。頑張ります」



(ふぅ、焦ったわ・・・)



フィルの結婚の知らせはまだ聞こえてこない。エリザベスはどんだけ時間が経ってもフィルが忘れられなかったが、忘れようと必死に働いた。



(気持ちの整理がついたら会いにいこうって思ってたのに・・・全然整理がつかないんだもの)



フィルは他の女の人と結婚するのを見るなんて耐えられないとエリザベスは思う。考えるだけで胸がズキズキと傷んだ。



(恋って、こんなに苦しいものなのね・・・)










エリザベスが家を出て半年が過ぎようとしていた。仕事にも慣れ、フィルのことも思い出す日はほとんどなくなっていた。そんなある日、編集長に呼ばれたエリザベスはいつもと変わらぬ調子で編集長室へ向かった。



「編集長~なんですか、また仕事・・・」



(な、なんで・・・)



編集長室のドアを開くと、そこには会いたくてたまらなかった、でも会ってはいけない人が立っていた。


「フィル・・・」
「姉上・・・やっと見つけました・・・」



フィルは強く存在を確かめるかのごとくエリザベスを抱きしめる。編集長は状況を察したのか頭をポリポリとかきながら部屋を出ていった。



「本当に心配しましたよ・・・こんなに痩せて・・・」



フィルはまるで夢ではないかと確かめるようにエリザベスを抱きしめ、髪や頬を触ってていた。


「フィル、もう離して」
「この手を離したら妖精はどこかに飛んでいってしまう気がして」
「逃げないわ・・・」



エリザベスはアンに助けてもらい新聞社の仕事を紹介してもらったこと、皆親切に仕事を教えてくれたことを伝えた。



「くそっ・・・あの娘にも聞きに言ったのに、しれっと何も知らないって言ってたぞ」


アンはエリザベスの秘密をきちんと守ってくれていたようだ。フィルはエリザベスに関する情報を必死に集めたそうだが何も出てこなかった。新聞で小さなコラムを目にし、どこか文章にエリザベスの面影を感じ藁にもすがる思いで新聞社に連絡をすると、エリィ・ベイカーは若い二十歳くらいの女性で半年程前から働いていると言われ、ピンときたそうだ。



「お願いだ、伯爵家に戻ってくれ。父上もマニーも皆心配してるんだ。皆を安心させてやってくれ」
「・・・でも私仕事が」



エリザベスは頑なに帰らないと主張したので、一旦フィルは引き取ることにした。フィルは不満そうであったがこれ以上言っても仕方ないと思ったのだろう。


「じゃ、フィルお元気で・・・」
「姉上も・・・」








朝のミーティングが始まった。この新聞社には記者が十人。そこまで大きな会社ではないが、地元密着型なのでダリル領を含め南地区で部数が徐々に増えてきている。


「そこで発表だけど、ダリル伯爵ご子息がエリィちゃんのコラムを気に入ってくれたみたいで、今月からダリル伯爵からも出資していただくこととなったよ」
「すごいじゃないですか!」
「これで記者の数も増やせそうだ」


(な、なんですって!?)



「今日ダリル伯爵ご子息が視察に来られるのできちんと仕事をしておくように!」
『はい!』


その日フィルが視察に来ていた。相変わらず無表情で新聞社を眺めていた。皆緊張の面持ちである。エリザベスは平然を装い仕事をこなしていた。



「先輩、ここの文章ですけど、なんかしっくりこないんですよね」
「どれどれ、うーん。そうだねぇ、ここをこう表現してみたらどうだい?」
「確かに!ありがとうございます」



新聞社のベテラン記者であるジークは五十歳手前の優しい雰囲気をしたおじさんである。彼はエリザベスに的確な助言をくれるのでとても助かっているのだ。


「エリィちゃん、この記事、印刷業者に回しといて!」
「はい!」


エリザベスはバタバタと仕事をこなしていった。仲良くなれない同僚もいるが他の人たちはエリザベスに女性だからといって差別をしたりせず仕事をきちんと教えてくれていた。



「エリィちゃん、急だけど君に新しい仕事を与えたいんだよ~」
「なんですか?編集長」
「最近開幕したダリル領のミュージアムの取材に行ってきてほしいんだ」
「え・・・」
「フィル様の馬車で連れていってもらえるそうだからご厚意に甘えて今から行ってきなさい、ね?」
「い、今からですか!?」



フィルは新聞社の前に馬車を止めた。フィルはエリザベスの手を取り、馬車の中へと導いた。その馬車はゆっくりとダリル領に向けて出発した。



「・・・」
「怒ってますか?無理やりこっちに帰ってこさせようとして」
「余計なことしないでほしいわ・・・出資したってどういうこと?」
「姉上が心配で・・・もし出資して上司になったら姉上をいつでも保護できますし・・・」
「余計なお世話だわ!」



(もう忘れたいのに・・・なんでそんなことするの・・・?)


涙目になったエリザベスの手をフィルが握る。エリザベスはフィルの熱い視線から目を逸らした。



「あんな男ばかりに囲まれて・・・本当に心配ですよ」
「皆よくしてくださるわ・・・」



ーポツリ、ポツリ



急に雨が降りだしてきた。視界が悪くなり馬車も進みが悪い。エディタ町を通過しようとしたときに馬車が止まり、馬丁が馬車を降りフィルに話しかけた。



「どうかしたか?」
「道がかなりぬかるんでいて、この調子だと今日中にダリル領に入ることができそうにありません。今日はこのエディタ町でお泊まりした方がいいかもしれません」
「そうか、分かった」



エリザベスとフィルはこの町に唯一ある宿に入った。部屋が一つだけなら空いていると言われて二人はその部屋に泊まることになった。



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