星獣の機迹

なビィ

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018. 腰縄の帰趨

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リリナも干し肉を食べ終えた。

量はそこまで多いものではなかったが、

咀嚼を多くした分、腹は幾分か膨れたらしい。


気持ちも随分落ち着いたようだ。



水を汲み直してきたラウル。


水筒を荷物袋へ取り付けながら、


「リリナ、気が逸るのも分からんでもないが

 次に見つけた集落が人間を受け入れているとも限らない。

 仮に、受け入れられたとしても、俺も物資を諸々確保するための時間が要る。」



まだ何のことか分かっていない様子で


「………?」



「まぁ……つまり、集落を見つけても暫くは面倒を見てやるから心配するな。」



ハッと気が付き、


「……うん、ありがと。ラウル。」


少し複雑そうな表情をしたが、微笑みながら答える。





「それと…だ。」


続け様に、リリナの縄を指差しながら


「腰の縄、集落に入る前には何とかさせてくれ。

 そのままお前を連れて入ったら何が起こるか分からん。」



「………。」


顔を落とし、顎に指を当て、

腰に巻かれている縄を見つめて考える。





「………!」



リリナの頭の中には


  町の住民(人間)がラウルを「いじめっ子」として

  噂する光景が広がっている。



「あ……っ!そっか。うん。そうだね。

 ラウルほんとは優しいのにね。違うもん。」



「……うん?……そうか。」


思いも寄らない言葉を受け、返答に困る。





   ― ― ― ― ―


 仮に、人間の子に縄を巻いた状態で集落に入った場合。



 人間を受け入れる集落だったとしても

 人間を不当に扱う【厄介者】という烙印を押される可能性が高い。


 逆に、人間迫害主義の集落であれば

 商い物としての価値は見い出されるかもしれないが、

 行動を共にしているというだけで二人の身が危険に晒されることだろう。


   ― ― ― ― ―





 ―――暫くした後



「行くか。」


「うん!」



出発準備を終え、二人が道沿いに歩き始める。

道とはいっても、街道の様に整備されたものではない。



旅の先人達が踏み均したであろうその軌跡を辿るだけである。

旅人の多いこの世界にいてそれは次の集落へ向かう確かな道標みちしるべなのだ。





相変わらず荷物を持たせてもらえないリリナ。



少し小走りしてラウルの前に出ると、


「ね。ね。ラウル。」


手をもじもじとさせて巨体のラウルへ上目遣いをする。



「これ持ってもらって、ぶら下がってもいーい?」


腰の縄先を両手でぐいっとラウルへ差し出す。





一旦足を止め、


「……?

 別に構わんが……。」


縄を受け取ると、縄を掴んだ左手の握り拳をリリナの頭上へと持っていく。


「えへへ、ありがと。」


笑顔で答えると


「いくよー。」


地面から足を離し、腰に巻かれた縄へと身を任せる。





「――ふぅんんん……!」


腰が締まり息が漏れ出してくる。

多少は痛みもあるのだろう。





「……大丈夫か?」



「……だっ!いじょぅうぶ!」


両手で縄の位置を調整し、丁度良い所を探している。

少しすると両手を離し、





全身を脱力させ


「ぶらんぶらーん。」


と、呟いている。





多少怪訝な表情をしつつ


「それ、楽しいのか?」


と、ぶら下がっている銀髪の物体に話しかける。





「……えへへ…。たのしい…よ。」


少し苦しそうだが返事をしてきた。

確かに声は楽しそうではある。



「人間の考えることはよく分からんな。」


呆れ笑いを漏らして、そのままリリナの位置を腰辺りまで上げてやると





「高ぁい!」


嬉しそうにキャーキャーとはしゃぎだした。





「……荷物が一つ増えたようだ。」


興が乗ったのか、縄を短くむんずと持ち直した後、

そのまま歩き出すラウル。





左手に掴まれた縄で運ばれ、

手足をぱたぱたと動かす楽しそうなリリナ。



その笑顔と笑い声は、

その縄によって数日前、生死の境を彷徨さまよったとは思えない程

とても楽しそうに、とても幸せそうに朝の光に明るく包まれている。


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