星獣の機迹

なビィ

文字の大きさ
36 / 85

036. 夜空の帰路

しおりを挟む
「楽しかったぁー!」


まだ湿り気のある髪をなびかせ、

リリナが晴れ晴れとした笑顔で湯屋の入口へと歩いていく。



「おや、お嬢ちゃん。これまたご機嫌だねぇ。」


受付に座っているかわうその主人が声を掛ける。


「うん! 気持ちよかったし楽しかったのぉ!」


「そうかいそうかい。そりゃあ良かった。

 またおいでなぁ。」


「うんっ! ありがと!」


屈託のない笑顔で返事をする。

うんうんと、とても満足そうな主人。


リリナの後方へと顔を向け、歩いてくるラウルへも声を掛けていく。


「狼のあんちゃんもごひいきによろしくねぇ。」


「ああ、いい湯だった。ありがとう。」



――湯屋を後にし、宿屋への帰路を辿る。



空も大分暗くなり、星が薄らと瞬いている。

手足を大きく振りながらラウルの前を歩くリリナ。

夜空を見上げ、



「お星さま、何だか少ないね。」


「町の中だからな。外に比べたら星は減る。」



「ふぅん。なんで町の中だと減るんだろ。


 ……きっと静かな方が好きなのかな。

 この町元気いっぱいだもん!」



周りを見渡すと、連なる民家や店が様々な明かりを灯し、

人の話し声で賑わいの声を見せている。



「星にも好みがあるのかもな。」


軽く微笑みながらリリナに話を合わせるラウル。



「……。」



ふと、アシュリィの言葉を思い出す。


 * 「実際【『星の道』は人が足を踏み入れないと発現しない】ってことも多いらしいよ。

 *  その人の気持ちを理解して『星の道』が変化する……みたいな。」

 * 「自然現象が……?」



緩やかに足を止め、考え耽る。





「――ラウル?」


ラウルが付いて来ていないことに気が付いたリリナが足元で顔を見上げている。



「ああいや、星もまるで生きているようだな。……と。」


「ねっ! お星さまとお友達になれたらいいなぁ。」



「……そうだな。」





 ― その辺りは学者や研究者の領分だ。

   俺が考えるようなことでもない。





   ……だが、仮に【奇跡】と呼ばれるものに

   意思があるとしたら……?


   法則性や再現性があるのだとしたら……?



   人助けや利便性を重視されるならまだ良い。

   もし悪用されでもしたら……。



   ――…………な……?





「――ラウルー?

 だいじょうぶ?」


深刻な顔をしていることに気付き、

心配そうにリリナが服の裾をツンツンと引っ張っている。



「あ……あぁ、すまない、少し考え事だ。」


リリナの頭を優しくぽんと一撫でする。



「……えへへ。」


何故撫でられたかは分からないが嬉しそうに顔を綻ばせるリリナ。



「世界は常に変化している。

 もしかしたら星と友になる方法が

 今後見つかるかもしれないな。」





 ― 【奇跡】を利用するなんて大それたことが可能なのだろうか?


   俺の知識ではまだ何も解明されていないという認識だったが

   アシュリィの話を聞く限り、【星の道】の研究は確実に進んでいる。


   しかし、俺にはまだ知らないことが多すぎる。

   リリナの故郷のように人間だけの村なんてものも未知の塊だ。


   そして、も……。


   ――知るためにはやはり『星の道』を巡る必要がある。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

台風のよる、君ひそやかに、魔女高らかに

にしのくみすた
ファンタジー
【空を飛ぶ魔女たちの、もちもち百合ファンタジー・コメディ!】 台風の夜、魔女はホウキで空を翔け――嵐と戦う! この街で台風と戦うのは、ホウキで飛ぶ魔女の仕事だ。 空を飛ぶ魔女に憧れながらも、魔法が使えない体質のため夢を諦めたモチコ。 台風の夜、嵐に襲われて絶体絶命のピンチに陥ったモチコを救ったのは、 誰よりも速く夜空を飛ぶ“疾風迅雷の魔女”ミライアだった。 ひょんな事からミライアの相方として飛ぶことになったモチコは、 先輩のミライアとともに何度も台風へ挑み、だんだんと成長していく。 ふたりの距離が少しずつ近づいていくなか、 ミライアがあやしい『実験』をしようと言い出して……? 史上最速で空を飛ぶことにこだわる変な先輩と、全く飛べない地味メガネの後輩。 ふたりは夜空に浮かんだホウキの上で、今夜も秘密の『実験』を続けていく――。 空を飛ぶ魔女たちの、もちもち百合ファンタジー・コメディ!

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...