星獣の機迹

なビィ

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082. 遭逢の謝恩

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「あ! もちろん時間は取らせないよ!

 元々【買うか売るかのお店】だもんね!」



「だったらとっとと帰るんだな。

 挨拶なんざいらねぇ。連中を待たせてんだろ。」



ぴしゃりとアシュリィの話を断ち切るように、冷たく言葉を言い放つ主人。

恐らく、旅に出るに当たって各所に挨拶回りをしているのだろうと予想しての発言である。


しかし。



「ううん、帰らないっ。

 今日はお客だよあたし!」



したり顔の笑顔を見せて明るく返答をする。



「……。


 はぁ……。

 ……ならさっさと用件を言え。」



大きな溜息を一つ吐いた後、

渋い顔をする主人。



「う~ん……。

 その前に、あたしを見て何かなぁい?」


両腕を広げ、全身を見せるように腰を捻るアシュリィ。



「……。


 旅に出るんだろ。昨日の連中と。

 だから挨拶はいらねぇって言ったんだ。」



「……そう、だけどぉ。


 ……。

 でも、あたしが言いたいのはそれじゃないの。

 覚悟決めてきたんだけどなぁ。」



軽く微笑むようにして返答する。



「今日はおやじさんに感謝を伝えなきゃなって思って来たの。」



「感謝だぁ……?」


全くもって身に覚えがないとでも言わんばかりに眉をしかめる。



「初めてこのお店に来て、おやじさんにコテンパンにされちゃったの覚えてるかな?

 【半端もん】って言われたの。見た目だけじゃなく中身すらって。

 すっごく傷付いた。しばらく引きずったもん。


 ……でもね。図星だったからこそ余計に響いたんだと思う。」



当時のことを思い出し、伏し目で感傷に浸りながら語り続ける。

再び顔を上げ、陳列棚に並べられている紛い物フェルクルムに目をやりながら



「もともと『星の道』について調べたりもしてたけど、

 確かにあたしは中途半端だったんだ。知識も覚悟も足りないって。

 だから、あれからたくさん勉強した。

 『星の道』だけじゃなくて、

 遺物の取り扱いや種類についても詳しくなった。と、思う。」



再び主人へと顔を向け



「それとね。

 ……あたしの目の話をした時。

 『星の道』の名残が見えるんだって話ね。

 何がしたいのか。何が見たいのか。って言われて。


 ……考えたの。


 あたし。

 物心ついた頃には拾われてたから、両親のこと何も知らないの。


 ……自分の過去が知りたい。『星の道』でそれが見たいって。


 好奇心で色々調べて、気まぐれに旅にまで出ちゃって。

 でも、おやじさんに一喝してもらってようやく目標と呼べるものを見つけられたの。

 そうしたら、心から一緒にいたいと思える人達にも出会えた。

 まぁ、ちゃんと決心できたのはその人達のお陰なんだけどね。」



一呼吸置き、



「……だから。

 当時はすっごいムカついて! すっごい悔しかったけど!!

 感謝してるの。……ありがとね。」



後ろ手にし、少し気恥ずかしそうにしながらにこりと笑う。



「……んなもんは俺のお陰じゃねぇ、お前が勝手に決めたことだ。

 さっさと買うもん買って連中んとこ帰れ。」



作業場の方へ振り返り、歩き出す。



「あっはは、そう言われると思った。

 だからバーッて言うこと言っちゃったんだけどね。

 ……えっとね、欲しいのあるんだけど。

 遺物の一覧見せてもらっていい?」



足を一度ピタリと止め、渋々と奥の棚から紙束を取り出す主人。



「ん~~~~~……とね……。

 あっ!! これ!」



紙をぺらぺらと捲っていたアシュリィが一枚の紙に目を留める。


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