『悪役令嬢に仕立て上げられたけど、猫カフェを開いたら辺境伯が通ってきます』

夢窓(ゆめまど)

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筋肉とノミの心臓、恋を語る

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カフェ・シャルルの夜。
子どもたちが帰り、猫たちが眠りに落ちたあと、
ランプの明かりの下に、ふたりの大きな背中が並んでいた。

アラン兄と、バルツアー様。

筋肉の塊二人が、カウンターで小さなカップを持ちながら、同じ方向を見ている。



「……マリーナ嬢は、よく働くな」

アラン兄が、低い声でぼそりと言う。

「ええ、動きがいい。目が綺麗だ。笑うとき、光る」

「……私もそう思う」

バルツアー様も、ぽつりと返す。



しばし沈黙。
ふたりの大きな影が、カウンターに長く落ちる。



「……だが、私はこの体だしな」
アラン兄が苦笑する。
「子どもに泣かれるような面だ。
 惚れたところで、好かれる自信がない」

「……私もだ」

今度はバルツアー様が苦く笑う。
「彼女(ソフィア)を見るたびに、胸が痛いが……
 告白の勇気が、ない」



猫が一匹、カウンターの上に飛び乗った。
シャルルだ。

ごろごろ……と喉を鳴らしながら、二人の間にすとん、と座る。

「……」

「……」



ふたりの筋肉が、同時にため息をついた。

「……デカい体に、ノミの心臓、だな」

「……ああ、全くだ」



シャルルが、にゃー、と鳴いた。
(訳:「ノミじゃなくて猫になれニャ」)

カフェ閉店後、カウンターでマグカップを手に並ぶふたり。
猫たちは寝床でまるくなり、厨房ではお湯が静かに沸いている。



🗨 マリーナ:

「ねえソフィア様……お兄様方って、みんな優しいですね」

ソフィア:

「うち、みんな“顔と筋肉が強面”だから損してるだけよ。
 中身は、繊細で世話焼き。筋肉で心を守ってるような人たち」



マリーナ、少し頬を染めて笑う。

マリーナ:

「……アラン様が、さっき、
 “この荷物は重すぎるから腰に負担がくる”って言って、
 私の代わりに持ってくれて……
 なんか……心配の仕方が、すごく静かで……優しかったんです」



ソフィアはそっとにやける。

ソフィア:

「……じゃあ明日、アラン兄の鼓動、倍くらい早くなってるかも」


 翌日:子どもたちの爆弾投下

筋肉コンビがベンチに座って紅茶を飲んでいると、
子どもたちがパタパタと駆け寄ってくる。

ノアが言う。

ノア:

「ねえ、バルツアーさんもアランお兄ちゃんもさ――
 あのふたりのこと、好きなんでしょ?」



アラン・バルツアー:「っ!?」

イネが畳みかける。

イネ:

「なんで言わないのー?
 好きって言わないと、伝わらないんだよ?」



ラミが決める。

ラミ:

「今から『告白大作戦』始めよう!
 “猫に告白練習してから、本番で人に言う”の!」



バルツアー:紅茶吹く。
アラン兄:猫を抱いたままフリーズ。
シャルル:「にゃあぁぁ(巻き込まれた)」


猫に告白練習 → 見られてた!



アラン兄、子どもたちに無理やり連れられ、シャルルの前に座る。

ラミ「はいっ、今から告白練習!“好き”って言って!猫に!」

アラン兄、めっちゃ真剣に猫の目を見る。

「……マリーナ嬢。貴女の笑顔を見ると、胸が……いや、心拍が……」

イネ「難しくてわかんない~~!」

ノア「“好きです!”って、ちゃんと言って!」

「……好き、です」

シャルル:ごろごろ(訳:よし)



◆ そのころ、厨房の隙間から…

マリーナ「…………え、いま、私の名前……?」

ソフィア「(ぷるぷる笑いこらえながら)アラン兄、がんばってるのよ……」

マリーナ、顔まっ赤。



💌② ラブレター、勝手に書かれる



ラミが音読:

「マリーナへ。君の笑顔は太陽だ。筋肉が熱くなる。これは恋だ。――アランより」

アラン兄「俺はそんなこと書いてない!!!」

イネ「え、じゃあ“猫とパンのように相性抜群”ってのもダメ?」

ノア「“お姫様抱っこして帰りたい”ってのは?」

アラン兄「ちょっと待ってくれ頼むからやめてくれ」

マリーナが遠くから「……パンと猫?」と首をかしげてるの見て土下座しそうになるアラン兄。



③ マリーナが落ち込む日 → 背中で励ます



マリーナ、配達中に転倒 → 商品が破損し、謝罪して落ち込む。

夕暮れ、倉庫裏でひとり片づけていると――

「……大丈夫か?」

アラン兄がそっと現れ、黙って箱を持つ。

マリーナ「……怒られるかと思ってました」

「怒るようなことじゃない。
 君は、誰よりも働いてる」

マリーナ「……でも、私ばっかり失敗して……」

アラン兄、何も言わずに、
そのまま彼女の背中のそばに立ち、無言で並ぶ。

「……ちゃんと見てる人、いますから」

マリーナ、泣きそうな目で――うなずく。



オチ:シャルル、屋根の上で見てた

「にゃあぁぁ(いよいよだニャ)」
(※屋根から2人を見守ってた/たぶん後でバルツアーに報告する)


『こっそり朝練見学会』

まだ空気がひんやりとした早朝。

バルツアー邸の裏庭には、静かに忍び寄る二つの影があった。

「しーっ……物音立てたらバレるからね」
ソフィアが、指を口元にあててマリーナを振り返る。

「うん、でも……ほんとにこっそり見るだけよ?」
マリーナは頬を染めながらも、しっかりとソフィアの後ろに続いていた。

 

目指すは、騎士団の訓練場。
今日は、バルツアー・ロイド・アランの三人が合同で朝練を行う日だった。

 

木の影に隠れて、そっとのぞくと――

「……いた」
ソフィアの声が、ほんの少し震える。

 

筋肉の鎧のような三人が、黙々と剣を振るっている。
その動きに無駄はなく、息を合わせた連携はまさに芸術。

 

マリーナは、アランが笑いながら若手に肩を貸す姿に目を奪われ、
ソフィアは、無言で剣を構えるバルツアーの背に見惚れていた。

 

「……ねえ、ソフィア。うちのアラン様、ちょっとかっこよすぎない?」

「うちの彼氏(予定)も、ね。背中が反則」

 

ふたりの頬が同時にほんのり赤くなる。

「……あんな姿見たら、もう一言も口出しできないよね」

「わかる。でも帰ってきたら“猫がトイレ失敗しましたよ”って言うのよ、あの人」

「……ギャップ萌えってやつかしら」

 

遠くでシャルル(猫)がくしゃみをしてバレかけるが、すんでのところで事なきを得た。

そのあと、木の陰でふたりはパンを半分こしながら、
「うちの旦那予定、腕太すぎない?」「肩、まるで岩……」など、
内緒の朝活ガールズトークが続くのだった。

 

ふと、ソフィアが呟く。

「……ねえ、マリーナ。私たち……いい人に出会ったよね」

マリーナはうんとうなずく。

「間違いなく、ね」

 

剣の音と、鳥のさえずりと、ふたりの笑い声が、朝の空にこっそり混ざっていく。

『木陰の気配に気づいてます』

朝の剣戯が一段落した頃、
アランが木陰の方へチラッと視線を送った。

「……あそこ、まただな」

バルツアーが無言で頷く。
ロイドも、タオルで汗を拭きながら淡々と呟いた。

「あの木の影、毎回同じだ」

 

「声は出してないが、気配が……柔らかい」
バルツアーが冷静に分析する。

「なんかこう、甘い空気がふわっとするんだよなー……」
アランがぽりぽりと頬をかきながら笑う。

「……昨日は焼きたてのパンの匂いがした」
ロイドが真顔で言い、バルツアーとアランが目を合わせる。

「おまえ、嗅覚どうなってんだ……」

 

若手騎士たちは気づかず鍛錬に夢中だが、
3人だけは、すでに“常連見学者”の存在に気づいている。

「で、どうする? こっちから声かける?」

「いや、それじゃ野暮だろう」
バルツアーが即座に否定。

「……黙って見守られてるのも、悪くない」
ロイドが小さく微笑む。

アランはニヤニヤしながら言った。

「てか、俺、あの後ろから聞こえる小声、
“うちのアラン様”って聞いた気がするんだけど」

「気のせいだ」
「気のせいだな」

ふたりにバッサリ切られ、アランは肩をすくめた。

 

それでも、3人の背筋はどこかいつもより伸びている。
剣の動きに、無意識の余裕と張りがある。

――そして今朝もまた。

木の影には、パンを半分こするふたりの姿。
バルツアーがさりげなく背を向けながら、小声で呟いた。

「……今日も、いい一日だ」

ロイドとアランも、口元だけで笑った。

剣戟の響きの中に、こっそり混ざる“好きな人たちの気配”。

それが、彼らの毎朝の、ささやかな幸せになっていた。


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