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こはるの日常
ティシュベーパー事件と冷麺
しおりを挟む「……なんじゃこりゃ……」
朝、リビングに入った俺――蓮(れん)は、絶句した。
白い。
とにかく白い。
床一面、紙吹雪の海。しかも細かい。
ソファの裏から、ひょこりと顔を出したのは、犯人――こはる。
つぶらな瞳で俺を見上げる。
「“あたし、やってませんよ?”って顔すんなよ……」
そこへ母さんがやってきて、目を見開く。
「うわっ、ティシュベーパーの……新しいやつ全部!?」
「たぶん、一晩かけて丁寧にバラしたんじゃないかな……」
母さんが頭を抱える横で、こはるは堂々と
“やりきった満足感”を漂わせながら、紙くずの中でコロンと寝転がる。
その様子を見て、父さんが新聞を持ったままのんびりやって来た。
「……こはる、爪とぎが足りないんじゃないか?」
「そういえば、古いやつボロボロだった」
父は腕を組んでうなずき、「よし、午後に買いに行こう」と宣言。
そしてもうひと言。
「外食もしようか。蕎麦屋の冷麺、そろそろ食べたかったんだよな」
「賛成!」
「駅前の新しい店のやつでしょ? あれ、ゆずが香って美味しいのよね」
いつのまにか、紙まみれの事件現場で、家族の予定が決まっていた。
⸻
午後、駅前の蕎麦屋。
注文した冷麺が届くと、テーブルの上にさわやかな香りが広がった。
つるんとした喉ごし、キンと冷えただし。
ほのかにゆずの香りがして、疲れた身体にやさしく染み渡る。
「……んまっ。こはるのティッシュ騒動のあととは思えないほど平和」
母さんが笑い、父さんがうなずく。
「悪戯するのも元気な証拠だ。馴染んできたってことだよ」
「うちの子って感じがするな。被害額はすごいけど」
「次は古新聞でも渡しておく?」
笑いながら食べる冷麺は、思った以上に美味しくて、
なんだか、こはるがくれた“きっかけ”みたいに思えた。
ティシュベーパーを滅ぼした小さな猫と、
それに振り回されながら笑う家族と。
この平凡な日常が、なによりあたたかいと、そう思った。
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