18 / 66
こはるの日常
心配と安心と、ちゅーるの味
しおりを挟む病院から帰ってきたこはるは、いつも以上に堂々としていた。
自信満々のしっぽの高さ。
きらきらした目。
そして――やけに口元をぺろぺろしている。
俺(蓮)は、その理由を知っている。
「……ちゅーるの味、覚えたな」
獣医さんにもらった**“特別おやつ”**。
緊張するかと思っていた診察室で、
こはるはそれをぺろぺろと美味しそうに食べた。
あの瞬間、俺の中での「非常事態モード」は溶けて、
代わりに「うちの猫、ちゅーるに目覚めた疑惑」が生まれたのだった。
案の定、夕方。
「にゃっ、にゃあああっ! ……ぬぁっ!」
――ちゅーる!!
その目がそう語っていた。
冷蔵庫の前に座り、顔面がすごいことになっている。
耳はぴんと立ち、目はぎらぎら。
口はうっすら開いて、期待と食欲で震えていた。
「こはる、さっき食べたばっかりだろ……」
「にゃああぁぁっっ!!」
「こはる、だめよ。一日一本だけって獣医さんも言ってたでしょ?」
母さんが優しくもはっきりと告げる。
「ほら、おやつは“特別”だから、ね。明日ね」
それでもこはるは、渾身のかまってアピール。
くるりとお腹を見せてゴロン。
小さな手で冷蔵庫の下をちょんちょん。
「だーめ。にゃーって言っても出てこないの」
俺は笑って、こはるの頭をなでた。
「元気になってくれて、よかったよ。……でも、ちゅーるは命の味じゃないからな?」
こはるはしばらく抗議していたけど、
やがて“ちゅーるは来ない”と理解したのか、
俺のひざに乗ってふんわり寝息をたて始めた。
あの時の不安が嘘みたいに、今はあたたかい。
こはるの寝顔が、なによりの安心だった。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
短編集
かすみ
青春
気まぐれに書く短編集
短編というか、いろいろな場面を集めたようなもの。
恋愛メインになるかも。
何もわかんない人が書いてます。あたたかい目で見ていただけると嬉しいです。
いつかこのひとつの場面から短編でもいいからちゃんとオチまで書いてみたいなって思ってます。
とりあえず思いつくのと書きおこすのに時間がかかるのでひとつの場面、として公開してます。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる