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聖女登場!
「ついに……聖女様がお見つかりになった!」
王宮の鐘が高らかに鳴り響き、広間には人々が押し寄せた。
現れたのは、光をまとうような美しい少女。
国中が待ち望んでいた“聖女”だ。
サヤカ、男爵令嬢らしい。
「ルナン殿下、聖女様のお世話役を」
国王の言葉に、場の誰もが納得のように頷いた。
「はい。務めさせていただきます」
殿下は凛として答える。
その横で、私は胸がざわめくのを必死に抑えていた。
――殿下がお世話役。
聖女様は、まるで子供のように殿下の袖を掴み、甘えた声で「殿下……」と呼ぶ。
頼りきる様子に、殿下は優しく応じている。
(……ああ、これで私はおしまい)
侯爵令嬢アンネット。
婚約者が聖女のお世話役を務めるとあれば、世間はどう見るだろう?
「不要になった娘」「キズもの令嬢」……噂はすぐに広まる。
私は微笑みを保ちながら、心の奥でため息をついた。
(殿下が本当に必要とされるのは、畑で泥をかぶる私ではなく、光の聖女様なのね……)
そう思い込む私に気づかず、殿下はふと視線を向け、真剣な瞳で言った。
「アンネット……君にこそ、この務めを手伝ってほしい」
でもその言葉すら、私は“お優しいお愛想”だと思い込んでしまうのだった。
(アンネットの自虐ループ・聖女比較)
聖女様はまばゆい光の衣に包まれ、歩くだけで花が開いたように人々がざわめいた。
その姿は、まるで物語の中から抜け出したかのようで。
「殿下……」
甘えるように袖を掴む聖女。
「ええ、大丈夫です」
穏やかに応じるルナン殿下。
……その光景を、私は遠くから眺めていた。
(聖女様はまさに“光”の人。
それに比べて私は……泥まみれで長靴を履いて畑に出る“土”の娘)
紅茶の話題より、芋の芽の話をする侯爵令嬢。
ドレスの裾より、支柱の結び方を気にする変わり者。
(殿下が並んで立つべきは、光の聖女様であって……
土で爪を黒くした私ではありませんわね)
私はにこりと微笑み、心の奥で小さく呟いた。
「侯爵令嬢アンネット、これでお役御免。
世間は“キズもの”と噂するでしょうけれど……まあ、仕方ありませんわ」
その瞬間、ふいに殿下の視線が私に向いた。
真っ直ぐで、揺るがぬ光を帯びたまなざし。
けれど私は気づかない。
(……ああ、またお優しい“お愛想”をくださっているのね)
そして、自虐のループはさらに深く沈んでいった。
(ヤケ耕し編)
「なんか……むしゃくしゃする!」
私は腕をぶんと振り上げ、土に魔力を叩き込んだ。
ぼこぼこと畑の地面が盛り上がり、柔らかく耕されていく。
「ふぅ……!」
土の匂いと汗が混じる中、気持ちが少しだけ晴れる。
「……おー、相変わらずすごい魔法!」
背後から声がして、思わず振り返る。
そこには農夫姿の――いや、今日は少し泥跳ねの残るままのルナン殿下。
「殿下!? なんでここに!」
彼は笑みを浮かべ、手を軽く挙げて言った。
「玉ねぎの畑か。……土魔法まで使えるなんて、本当に万能だな、アンネット」
「た、玉ねぎの畑ですから、いいんです。……って、だからなんでここに?」
殿下はわざとらしく肩をすくめた。
「婚約者とのお茶会、すっぽかされてさ」
「えっ……!? そ、そうでしたか!」
私は目を丸くする。
(お茶会……聖女様を、差し置いて、こんな畑に!?
それって……やっぱり私のことを気遣っての“お優しいお愛想”ですよね……)
私はまた自虐的に笑ってしまう。
けれど殿下の心にはただひとつ――
(……婚約者だから、いい。私が共にいたいのは、アンネット、お前だけだ)
(……そう。
でも、本当の婚約者はもうすぐ“聖女様”になるのでしょう?)
私は土に目を落とし、指先で畝をならした。
「……私はまだ婚約者ですけれど」
「アンネット?」
「でも、それも長くはありませんわよね。
聖女様と結ばれるのが、国のため。
私もわかっております」
にこりと笑ってみせるけれど、その笑みには自嘲の影が差している。
殿下は驚き、口を開きかけた。
「違う、私は――」
けれど私の耳には届かない。
「殿下のお優しさは、いつも痛いほどわかります。
だから……今のうちにたくさん優しいお言葉をくださるのですね。
“婚約破棄”の後に、私が惨めにならないように」
殿下の胸が締め付けられる。
けれど私は、真剣に見つめてくるその瞳を“別れの慰め”だと信じて疑わなかった。
(周囲の空気 vs アンネットの自虐)
王城の廊下は、今日もざわめいていた。
「聖女様は本当にお美しい」
「殿下と並べば、まさに光と光。絵のようなお二人だ」
「きっと近いうちに婚約発表があるに違いない」
誰も疑わない。
誰もが、殿下と聖女様の未来を当然のように口にしている。
その声を聞きながら、私は袖を握りしめた。
(……やっぱり、そうよね。
侯爵令嬢の私なんて、泥にまみれた変わり者。
殿下にふさわしいのは、輝く聖女様に決まっている)
ふと横を通り過ぎた侍女たちが、ひそひそと囁いた。
「でも、まだ婚約者はアンネット様でしょう?」
「形式だけよ。すぐに破棄されるわ。
殿下が本当に見ているのは聖女様だから」
……胸がちくりと痛んだ。
けれど私は、いつものように微笑んでみせる。
(そう、私はただの“繋ぎ”。
きっとそのうち“キズもの”の烙印を押されて終わり……)
その時。
「アンネット」
背後から呼ぶ声に振り返ると、殿下が立っていた。
真剣な瞳で、まっすぐに。
でも私には、その想いが“最後の優しさ”にしか見えない。
「まあ……殿下、私なんかに声をかけてくださるなんて。
ほんとにお優しいお方ですわね」
殿下は言葉を詰まらせる。
伝えたいことがあるのに、周囲の空気と私の自虐が、その言葉をかき消していった。
王宮の鐘が高らかに鳴り響き、広間には人々が押し寄せた。
現れたのは、光をまとうような美しい少女。
国中が待ち望んでいた“聖女”だ。
サヤカ、男爵令嬢らしい。
「ルナン殿下、聖女様のお世話役を」
国王の言葉に、場の誰もが納得のように頷いた。
「はい。務めさせていただきます」
殿下は凛として答える。
その横で、私は胸がざわめくのを必死に抑えていた。
――殿下がお世話役。
聖女様は、まるで子供のように殿下の袖を掴み、甘えた声で「殿下……」と呼ぶ。
頼りきる様子に、殿下は優しく応じている。
(……ああ、これで私はおしまい)
侯爵令嬢アンネット。
婚約者が聖女のお世話役を務めるとあれば、世間はどう見るだろう?
「不要になった娘」「キズもの令嬢」……噂はすぐに広まる。
私は微笑みを保ちながら、心の奥でため息をついた。
(殿下が本当に必要とされるのは、畑で泥をかぶる私ではなく、光の聖女様なのね……)
そう思い込む私に気づかず、殿下はふと視線を向け、真剣な瞳で言った。
「アンネット……君にこそ、この務めを手伝ってほしい」
でもその言葉すら、私は“お優しいお愛想”だと思い込んでしまうのだった。
(アンネットの自虐ループ・聖女比較)
聖女様はまばゆい光の衣に包まれ、歩くだけで花が開いたように人々がざわめいた。
その姿は、まるで物語の中から抜け出したかのようで。
「殿下……」
甘えるように袖を掴む聖女。
「ええ、大丈夫です」
穏やかに応じるルナン殿下。
……その光景を、私は遠くから眺めていた。
(聖女様はまさに“光”の人。
それに比べて私は……泥まみれで長靴を履いて畑に出る“土”の娘)
紅茶の話題より、芋の芽の話をする侯爵令嬢。
ドレスの裾より、支柱の結び方を気にする変わり者。
(殿下が並んで立つべきは、光の聖女様であって……
土で爪を黒くした私ではありませんわね)
私はにこりと微笑み、心の奥で小さく呟いた。
「侯爵令嬢アンネット、これでお役御免。
世間は“キズもの”と噂するでしょうけれど……まあ、仕方ありませんわ」
その瞬間、ふいに殿下の視線が私に向いた。
真っ直ぐで、揺るがぬ光を帯びたまなざし。
けれど私は気づかない。
(……ああ、またお優しい“お愛想”をくださっているのね)
そして、自虐のループはさらに深く沈んでいった。
(ヤケ耕し編)
「なんか……むしゃくしゃする!」
私は腕をぶんと振り上げ、土に魔力を叩き込んだ。
ぼこぼこと畑の地面が盛り上がり、柔らかく耕されていく。
「ふぅ……!」
土の匂いと汗が混じる中、気持ちが少しだけ晴れる。
「……おー、相変わらずすごい魔法!」
背後から声がして、思わず振り返る。
そこには農夫姿の――いや、今日は少し泥跳ねの残るままのルナン殿下。
「殿下!? なんでここに!」
彼は笑みを浮かべ、手を軽く挙げて言った。
「玉ねぎの畑か。……土魔法まで使えるなんて、本当に万能だな、アンネット」
「た、玉ねぎの畑ですから、いいんです。……って、だからなんでここに?」
殿下はわざとらしく肩をすくめた。
「婚約者とのお茶会、すっぽかされてさ」
「えっ……!? そ、そうでしたか!」
私は目を丸くする。
(お茶会……聖女様を、差し置いて、こんな畑に!?
それって……やっぱり私のことを気遣っての“お優しいお愛想”ですよね……)
私はまた自虐的に笑ってしまう。
けれど殿下の心にはただひとつ――
(……婚約者だから、いい。私が共にいたいのは、アンネット、お前だけだ)
(……そう。
でも、本当の婚約者はもうすぐ“聖女様”になるのでしょう?)
私は土に目を落とし、指先で畝をならした。
「……私はまだ婚約者ですけれど」
「アンネット?」
「でも、それも長くはありませんわよね。
聖女様と結ばれるのが、国のため。
私もわかっております」
にこりと笑ってみせるけれど、その笑みには自嘲の影が差している。
殿下は驚き、口を開きかけた。
「違う、私は――」
けれど私の耳には届かない。
「殿下のお優しさは、いつも痛いほどわかります。
だから……今のうちにたくさん優しいお言葉をくださるのですね。
“婚約破棄”の後に、私が惨めにならないように」
殿下の胸が締め付けられる。
けれど私は、真剣に見つめてくるその瞳を“別れの慰め”だと信じて疑わなかった。
(周囲の空気 vs アンネットの自虐)
王城の廊下は、今日もざわめいていた。
「聖女様は本当にお美しい」
「殿下と並べば、まさに光と光。絵のようなお二人だ」
「きっと近いうちに婚約発表があるに違いない」
誰も疑わない。
誰もが、殿下と聖女様の未来を当然のように口にしている。
その声を聞きながら、私は袖を握りしめた。
(……やっぱり、そうよね。
侯爵令嬢の私なんて、泥にまみれた変わり者。
殿下にふさわしいのは、輝く聖女様に決まっている)
ふと横を通り過ぎた侍女たちが、ひそひそと囁いた。
「でも、まだ婚約者はアンネット様でしょう?」
「形式だけよ。すぐに破棄されるわ。
殿下が本当に見ているのは聖女様だから」
……胸がちくりと痛んだ。
けれど私は、いつものように微笑んでみせる。
(そう、私はただの“繋ぎ”。
きっとそのうち“キズもの”の烙印を押されて終わり……)
その時。
「アンネット」
背後から呼ぶ声に振り返ると、殿下が立っていた。
真剣な瞳で、まっすぐに。
でも私には、その想いが“最後の優しさ”にしか見えない。
「まあ……殿下、私なんかに声をかけてくださるなんて。
ほんとにお優しいお方ですわね」
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