『豊穣の女神?いいえ、ただの土いじり令嬢です!――王子と歩む農地改革』

夢窓(ゆめまど)

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農地改革の始まり

王宮にて。

国王(重々しく):
「……アンネット。お前の働きは余に届いている。
水を呼び、土を整え、民を飢えから守るその力……。
それは単なる魔法ではなく、この国に必要な知恵だ。
よって、王家として正式に農地改革を推進する」

ルナン殿下(晴れやかに):
「ありがとうございます、父上。
アンネットと共に、この国の大地を豊かにしてみせます」

アンネット(深く一礼して):
「……恐れ多いことですが、私はただ畑が好きなだけです。
けれど、もし私の知識や経験が役立つのなら……
この国の民のために、精一杯尽くしますわ」



広がる畑と人々の笑顔

季節が巡り、王都近郊の農地では、
水路が整備され、痩せた土地に緑が広がっていく。

農民A:
「今年は干ばつでも安心だ。水が行き届くからな」

農民B:
「収穫量が倍になったぞ! 子供たちに腹いっぱい食わせられる!」

子供たち:
「アンネット様、ばんざーい!」

アンネット(赤面しながら):
「い、いえ……私などただの土いじりが好きなだけで……」

ルナン殿下(微笑んで肩を抱きながら):
「いい加減、それを“奇跡”だと認めてもいいんじゃないか?」

アンネット(小声で):
「……それは、夢ですわ」

殿下(くすっと笑って):
「夢でも現実でも、君が僕の隣にいてくれれば、それでいい」



そして

人々は彼女を“水撒き令嬢”と呼び、
やがて“豊穣の女神”と讃えるようになった。

だがアンネット本人はいつまでも、
「ただの畑好き」で通し続けるのだった。

ジャガイモ収穫の場面

畑の土を掘り返すと、ごろりと大きなジャガイモが顔を出した。
ルナン殿下は思わず目を丸くし、手に取って輝かせる。

ルナン殿下:
「これが……俺の植えたジャガイモか!
芽かきも、自分でやったんだよな……
こんなふうに育つなんて、不思議だ……!」

側近たちも手を止め、王子が子供のように笑う姿に思わず見入ってしまう。

アンネット(苦笑して):
「ちゃんと世話をしたら、ちゃんと育つものですわ。
……まぁ、おめでとうございます」

ルナン殿下(にっこり):
「ありがとう、アンネット。
君と一緒だから、こんなに嬉しいんだ」

アンネット(心の声):
(……またまたお愛想を。
でも……こんな顔を見せられたら、少しくらい誇ってもいいのかしらね)

収穫祭の場面

夕暮れ時、村の広場には長い机が並び、領民たちが持ち寄った料理がずらりと並んでいた。
蒸したジャガイモ、バターで炒めた小芋、香草をまぶした揚げ芋、そして郷土料理のスープまで。

子供たち:
「殿下ー! このお芋、殿下が植えたやつですか!?」

ルナン殿下(胸を張って):
「ああ、そうだ! 俺が植えて、芽かきもして、ちゃんと育ったんだ!」

子供たち(ぱちぱち拍手):
「すごーい!」

アンネット(くすっと笑いながら):
「殿下、まるで収穫祭の主役ですわね」

ルナン殿下(楽しそうに):
「違うさ。主役はこの土地と、この民と……君だよ、アンネット」

アンネット(赤面して目をそらしつつ心の声):
(……またまたお愛想を。でも、こんなに笑顔で言われたら……夢じゃなくても、いいかもしれませんわね)



領民たちは歌い、踊り、焚き火を囲んで夜が更けていく。
その光景は、かつてなかった「豊かさの兆し」として、皆の胸に刻まれていった。

収穫祭の夜・星の下で

祭りの喧騒が一段落し、焚き火の音と遠くの笑い声だけが残った頃。
ルナン殿下はアンネットをそっと広場の外へ連れ出した。

丘の上、畑を見下ろす場所に腰を下ろすと、夜空いっぱいに星が瞬いている。

ルナン殿下:
「……すごいな。
君と一緒に育てた畑、その上にこんな星空が広がってるなんて」

アンネット(照れながら):
「畑は……星よりも地味ですわよ」

ルナン殿下(首を振って):
「いや、君と一緒なら……星よりも輝いて見える」

アンネット(真っ赤になって心の声):
(……夢だ、これは夢!現実なわけない!
でも、こんな夢なら……ずっと見ていたいかもしれませんわね)

殿下はその横顔を見つめ、ふっと笑みを浮かべる。

ルナン殿下(小声で):
「……やっぱり、君が僕の女神だ」

アンネット:
「……またお愛想を」

だがその声は、震えて甘く揺れていた。

夜空の星々が、まるでふたりを祝福するようにきらめいていた。

王宮にて ― 芋のお披露目

広間にて。
ルナン殿下は、袋いっぱいのジャガイモを抱えて得意げに入ってきた。

ルナン殿下:
「母上! 見てください! これ、俺が植えて育てたジャガイモなんです!」

王妃(驚きと微笑み):
「まぁ……本当に?
殿下が畑で汗を流されたのね。素晴らしいですわ」

ルナン殿下(子供のように):
「芽かきも、自分でやったんですよ!
掘り出したときの感動は……忘れられません!」

王妃(優しくうなずきながら):
「ええ、体験は何より大事です。
――でも、アンネット嬢は子供の頃から畑を作っていらしたのですよね?
その積み重ねがあってこそ、今の豊かな実りがあるのですわ」

アンネット(顔を赤くしてうつむき):
「……あの、私はただ土いじりが好きなだけで……」

ルナン殿下(すかさず笑顔で):
「だからこそ、君はすごいんだよ」

王妃(くすっと笑って):
「ふふ、いいご夫婦になりそうですね」

アンネット(心の声):
(……お愛想に決まってますのに。
でも……母妃さまに“素敵”って言われるなんて……)


王宮・芋料理試食会

王妃:
「せっかく殿下が育てられたのですもの。料理人たちに腕を振るっていただきましょう」

料理人たちが次々と皿を運んでくる。
蒸しジャガイモに、ポタージュ、香草バター炒め、グラタン風の一品まで。
広間いっぱいに芋の香ばしい匂いが広がった。

ルナン殿下(目を輝かせて):
「これが俺の芋で作られた料理か! すごい……! なんて豊かな味なんだ!」

王妃(にっこり):
「ええ、とても美味しいですわ。畑からここまで運ばれた一粒一粒が尊いのですよ」

アンネット(控えめに):
「……いえ、土のおかげですわ。私は何も……」

殿下(即座に):
「君がいなければ芽かきも収穫もできなかった。だから君の功績だ」

――そこに、ちゃっかり隣の席に座っている聖女様。

聖女(にっこり):
「まあまあ、このジャガイモも、神が与えた恵みですわね。
殿下、やはり私こそが……」

(その瞬間、口にした熱々グラタンで舌をやけどする)

聖女:
「……あづっ!!!」

貴族たち(くすくす笑い):
「神の恵みでも、猫舌には勝てぬか……」
「聖女様、可愛らしいところもおありだ」

アンネット(小声で自虐気味に):
「……こういう場には、私は似合いませんのに……」

殿下(真顔で隣に囁く):
「いいや、君こそが一番似合ってる。――俺の隣に」

アンネット(真っ赤になって心の声):
(……夢だ。これも夢! 夢でなければ心臓がもちませんわ!)




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