ぼっちな僕がデスゲームに強制参加させられたんだけど、逃げ回っているうちにハーレムがどんどん増えて夜の順番とか勝手に決められて困っています

Rain

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1 まさかの異世界旅行

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 セミの鳴き声で朝を迎える夏休み前。
 
 事件はキャンプ場へ向かうバスでの出来事から始まりました。


 このツアーはクラスのみんなが参加しています。
 だからぼくも勇気を出して、同行する事にしました。



 正直に言います。
 ぼくは女の子が苦手です。
 それも並みのレベルではありません。
 女の子が天敵と言っても、過言ではないくらいです。


 もうかなり昔のことなんですが、小学生低学年の時にイジメにあって以来、克服できずにいます。小学生にあがってお漏らしをして、クラスの女の子達にバカにされたことがきっかけでした。


 今年で14歳になります。
 もうかなり前の事ですし、頭では克服したつもりですが、どうしても体が拒否反応を起こしてしまいます。

 女の子が近くを通っただけで、心臓がバクバクと高鳴るのです。
 これが危険信号の合図。
 もし接触すると大変なことになります。


 実はフォークダンスの時、女の子と手を繋いで、ぼくはそのまま意識を失いました。


 保健室で目を覚ますと、その女の子が心配そうにぼくを見つめていました。
 それだけで、再び気を失ったのです。

 こんな調子では、まともな生活が出来るはずもありません。
 中学校に上がってからすぐ、正直に先生に相談しました。
 最初は呆れていた先生でしたが、女性の先生を呼んでぼくの肩に触れさせた瞬間、ぼくが死にかけて事実と知りました。
 本当に酷い生体実験です。

 気が付いたぼくに、
「その病気を克服しないと結婚できんぞ」と言われました。
 結婚という言葉を聞いただけで、大量に鼻血を吹き出して死にかけました。
 

 そんなぼくですが、病気を克服するために、この旅行に参加します。


 女子のみんなも、協力すると言ってくれました。
 とても頼もしいです。
 大自然をバックに、みんなと和気あいあいと活動すれば、体だって次第に女の子に拒否反応を起こさなくなるだろうと、医師の先生にも励まされ、ぼくはバスの座席に座っています。



 *



 みんなを乗せたバスは、走り出しました。
 景色はコンクリートから草木へと変わっていきます。
 クーラーの効いた車内では、楽しげな歌が聞こえてきます。

 ですが、ぼくは汗だくだく。
 何故なら隣には男装したゆかりちゃんが座っているからです。
 ゆかりちゃんは、ボーイッシュで勝気な性格で、この日もわざわざ気を使って学生服にズボンという恰好をしてくれています。だけど、もうそれだけで、心臓がバクバクなのです。
 

 キャンプ場に着く前に、先生が紙を回していきます


 先生は社内用の小型マイクを握って、
「これから行く藍上尾山は、願いを成就させてくれることで有名だ!
 将来の夢でも目標でもなんでもいい。俺は見ないから、みんな好きな事を書きなさい。紙に書くと実現するとよく言うし、恥ずかしがらずに本音を書くように」
 とおっしゃいました。


 みんなは、口々に夢や妄想を語りながら紙に想いを綴ります。
「俺は医者だ!」
「僕は発明家!」
「私はケーキ屋さん!」

「うちは自衛隊! 最強の軍人になって、ロケットランチャーやマシンガンをぶっ放したい」
「え、みっちゃん!?」

「俺は伝説の勇者になる!」
「バカか? おめぇ」

「なら俺は大賢者。そういうのもありだろ?」
「学者って書けよ!」

 

 ぼくも誰にも見えないように、将来の目標を書きました。


『やさしい女の子と仲良くなりたい。みんなぼくを守って欲しい。そんな子にいろいろ慰めてもらいたい。でも、いつかはその子達を守る力を手に入れたい。やさしくしてくれた分、きっちりお礼ができるようになりたい』


 なんて受け身で情けないかなと思ったけど、女の子と触れたら気絶する病気をどうしても克服したくて、ついつい本音がポロリと出てしまいました。
 体は拒否反応を起こしているけど、心の中では女の子と仲良くなりたいんです。
 だからそんなぼくを理解してくれるやさしい女の子と、仲よくなりたい。
 あぁ、男子なのに、なんて情けないかな。



 でも……


 それが不幸の始まりでした。




 まさか、このバスが異世界に通じる誘拐バスだったとは……
 そしてこの紙に書いたことが、すべて具現化できるなんて……



 さらに、ぼくは大変な間違いをおかしてしまいました。



 
 だけど、この時のぼくは、まだ何も知りませんでした。


 それより隣の席に座っているゆかりちゃんを意識しすぎて、心臓を抑えることに夢中でした。
 ゆかりちゃんがチョコレートをぼくに手渡そうとしただけで、緊張がピークに達して意識を失いました。



 *



 目が覚めたら、バスは森の中でした。
 どういう訳か先生はいません。
 慌ててバスから飛び出した男子達は、青い顔をして車内に戻ってきます。


「お、おい、魔物がいるぞ!」
「何だって!? ここ、ヤバイんじゃないか?」
「ど、どうしよ? 魔物たちが、こっちへ来るぞ」


 ぼくも窓から外を見ました。

 こん棒を持った子鬼が、ズンズンとこちらに向かっているではないか!

 車体に、ドンという衝撃が走ります。

 誰かが、
「お、おい、あれってゴブリンとかいうやつだろ!? バスへ攻撃を始めたぞ!」
 
 その声で大パニックが起きます。
「せ、先生、先生は!?」「どこにもいないわ! どうなってんのよ!」


 ぼくはとある三人に視線が行きます。
 
 勇者になりたいと、馬鹿げた事を書いた崎谷くんの腰には剣があります。
 自衛隊になりたいと書いたみっちゃんは、マシンガンを握っています。
 そして賢者を望んだ佐伯くんは、宝玉のついた杖を……。杖がバチバチ輝いています。


 彼らは顔を見合すとコクリと頷き、勇敢にもバスから出て戦闘を始めました。


 隣に座っているゆかりちゃんは、
「あれ? どうしたんだろ? 私はみんなの顔の上に青いウィンドのようなモノが見える。え、何? あのHPとかMPとか? そして、勇者とか自衛隊とか医者とか、職業みたいなのも見える……」


 ゆかりちゃんが、こちらを見た。
「え? 海斗くんの職業は、ハーレム王? なにソレ? そして女子と……」
 そこで赤面する。

「え? え?」

「私、海斗くんを見てたらなんだか変な気分になるの……。私……どうしたら、い、い、の……」

 ゆかりちゃんは、なんか虚ろな目でぼくに近づいて来ます。

 ――だ、だめだよ!

 ぼくが仰け反ったおかげで、ゆかりちゃんはハッと我に返りました。


「あ、ごめんなさい。私、どうしちゃったんだろ。海斗くんは、女子に触れるだけで発作を起こすのに……」


 バスの外から崎谷くん達の声が聞こえる。
「やったぞ! 殲滅させたぞ!」



 その声でみんなは、とりあえずホッと胸を撫で下ろしています。
 みんなバスから降りて、辺りの様子を確認しました
 辺り一帯は、どこまでも広がる針葉樹の森のようです。


 どこともなく、パチパチパチと手を叩く音が聞えます。
 
「おみごとです。陵南中学2年C組の皆様。
 そして遥々地球からようこそ!
 わたしはサイフィス。あなた達は選ばれし救世主です。どうか、このアルフラルドの地を救ってください」

 そう言って現れたのは、色白で耳は長く……そう、まるで映画に出てきそうなエルフのような男性です。軽装な衣を着ています。


 クラスのみんなは唖然。
 そんな中、サイフィスと名乗った男性は話を続けます。

 どうもぼく達がバスの中で書いたこの紙には、不思議な魔法が宿されており、書いたことが具現化するらしいのです。


 それを聞いて、泣く子もいます。
 だけど、一部の男子は妙に張り切っています。
「スゲーな! これって異世界転生ってやつか? 俺、天下無双の格闘家って書いてよかったぜ!」
「俺もボクサーで世界チャンピョンって書いたぞ!」

「あたし、どうしたらいいの? ケーキ屋になりたいと書いちゃったのよ。これ、書き直せないの?」

 サイフィスさんは、
「残念ながらもう書き直せません。
 事実を知らずに、純粋に祈りを書くから効果があるのです。
 ですが、ご安心ください。
 地球の職はどれも一流です。
 あなたはケーキ屋とおっしゃいましたが、食の道でこの世界を救うこともできます。おいしい食を求めている民はたくさんいます。
 実は、この世界はまだまだ未開なのです。
 地球の文化で指し示すと、中世のヨーロッパあたりでしょうか。
 武術や魔導はもちろん、建築、医療、製造、化学、どの分野でも、皆さまの腕は役に立ちます」
 
 
 え、ぼく……
 
 とても悲しい気持ちになりました。
 
 ポケットから紙を取り出して、なんて書いてあったか確認しました。
 何度見たって、今更文字が変わる訳ないというのに。
 
 正直、やさしい女の子と仲良くなりたいなんて、ちっちゃな夢を書いてしまったことを後悔しています。ぼくには、もっと大きな夢だってあります。
 偉大な科学者に憧れていました。
 料理人にだってなりたかった。
 まだまだあります……
 
 
 改めて紙に視線を落としました。
 
 
 ぼくは仰天しました。



 なんと『さ』と『ら』を書き間違えていたのです。


 やさしいではなく
 やらしい、と。


 具現化する魔法の紙には、こう書いていたようなのです。
『やらしい女の子と仲良くなりたい。みんなぼくを守って欲しい。そんな子にいろいろ慰めてもらいたい。でも、いつかはその子達を守る力を手に入れたい。

 やらしてくれた分、きっちりお礼ができるようになりたい』
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