火宅

M712

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あゝこれぞ

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FLASH! and SSHHABA-BOOOOM!

何が起こったのかわからなかった。
妹と家で、麻袋をかぶって遊んでいただけだった。


一息もつかない刹那に、世界は変わってしまった。
麻袋から顔を出したとき、見えた景色は、




何が起こったのかわからない、立ち上がって周りを見渡そうとした。
足元にも、遠くにも……黒く焦げた何かがエビのように跳ねていた。


scatter 

私は一体、何を見ているんだろう。
ここは一体?

私は家にいただけ。

sticky! sticky! sticy!



空を見上げて、唖然とした。
間違いない、此処は長崎の空だ。

見慣れた空から、冷たくもない雪が降っている。

FLASH!

さっきまで、そこまで妹が痛んだ。
麻袋をかぶる前の世界では、目の前に妹が痛んだ。

でも、そこにあるものは、焦げた畳と爛れた商事だけが残っている。


POP OFF

障子には、黒いしみが残っている。
マグネシウムを百万個炊いたような閃光が、妹の影だけを残して奪っていったんだ。

swing...swing 

私は立ち上がる。
非難しないと、助けを求めないと……

駅に行けば、誰かが助けに来てくれるはず。

裸足で、瓦礫の荒野を歩く。
異形の怪物とともに、歩いていく。

うすうす……いいえ、わかっていた。
わかりたくないから、現実から逃げていた。


一緒に歩く爛れた化け物も、足元で跳ねている黒焦げのエビも……人間なんだ。

もう、何もかもわからない。
わかりたくない、理解したくない。

piping hot!

そこにいるのは、近所のおじさんなのか? そうじゃないのか?
男の人?女の人?

pop off

本当に人間なのかすらも、わかりたくない。

歩き続けると、レンガでできた建物が見える。
駅だ。

息を切らしながら、レンガの壁を見つめる。
何かがうごめいている。

溶けた皮膚が、壁にこびりついているんだ。
離れなくなって、藻掻いている。

stirch

もはや、恐ろしいとも思えない。
恐怖を覚える余裕もない。

駅の中に入って、ホームまで歩いていく。
やっと思いで着いたホーム。

ベンチに座って、一息ついた。
やってくるかどうかもわからない電車を待っている。




―――

どれくらいの時間がたったんだろう、掠れる視界で、再び前を見た。
駅のホームにも、線路上にも、化け物たちが百鬼夜行のごとく徘徊している。

stitch

をみて、吹き出した。
甲高い声で、大きな声で、指を指して。

私は笑ってしまった。

stitch
体が小刻みに震えて、涙を流して笑った。
別に悲しくも楽しくもない。

でも、わらってしまうんだ。

「あゝ……これぞ……いける地獄ですわ!あはは」
あはは
ははは

snip!

ははははは
あはははは

あはは
ひゃはは

ひぃ ひぃ


あはは

BA-DOOM!

はぁ……


ひゃっひゃっひゃ
あははは

はは

はぁはぁ

あはは


はは



ふぅぅ

pop off

目を瞑る、底つかない溜息を吐いた。
「お姉ちゃん帰ろうよ」
「うん」


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