魔王が現れたから、勇者の子孫らしい俺がちょっくら倒してくる

あさぼらけex

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ユミコ争奪編

第43話 勇者びびる

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 ユミコ争奪戦改め、シリウスシスターズのイベント会場と化したイワツキの村の特設会場。
 納得のいかないユミコをなだめ、この場を後にしようとする俺の前に、ユア様親衛隊を名乗る五人のスケ番風の女性達が、話しの進行を妨げにきた。


「おまえなぁ、ちょっとかわいいからってよー、いー気になってんじゃねーよ、あーん?」
 親衛隊のひとりが、ユミコを突き飛ばす。

 が、ユミコの身体は、びくともしない。
 そりゃあ、勇者ウラワと共に魔王を倒した御方。
 村のヤンキー風情に、どうこう出来る訳がない。

「な、なんだよ、こいつ。」
 親衛隊の連中は、ユミコを恐れだす。
 何度か押してみるが、ユミコの身体はピクリとも動かない。

「な、ならばこれでどーだ!」
 むに。
 親衛隊のひとりが、今度はユミコの胸を鷲掴み。
「はっはっは。流石にここは、やわらかいようだな!」
 もみもみ。
 そいつをユミコは、ひと睨み。
「ひ、」
 そいつは思わず後ずさり、尻もちをつく。

「まさか、女性の敵を倒そうとしていたひと達の親衛隊が、女性の敵だったなんてね。」
 ユミコはゆっくりとそいつに近づく。

 あ、やべー、この人死ぬかも。
「あのー、ユミコさん、なるべく穏便にね。」
 俺に言えるのは、これくらいだ。
 すまない、親衛隊のおねーさん。

「はあ、分かってるわよ、それくらい。」
 ユミコも、冷静になってくれた。

「グッスリと。」
 ユミコは睡眠呪文を唱える。

 親衛隊の五人は、ばたりと眠りにつく。

「アイパニック!」
 ユミコは混乱呪文を唱える。

 眠りにつく五人のおねーさん達は、悪夢にうなされはじめる。

「うふふ、いー夢見てね。」
 ユミコは笑顔で、五人のおねーさん達に語りかける。

 これを見て、俺もゾッとする。
 ユミコを怒らせたら、俺もこうなるのか。
 なるべく怒らせないようにしよう。

「もう行きましょう、ここにはもう用はないわ。」
「あ、ああ。そうだな。」

 俺はなんとか心を落ち着かせる。
 シリウスシスターズのコンサートが続く中、俺とユミコはイワツキの村を後にした。

「もう、ここには来れねーな。」
 遠ざかるイワツキの村を見て、俺はつぶやく。

 俺がユミコ争奪戦でした行為。
 そしてユミコと親衛隊との確執。

 村人たちは、俺たちを歓迎しないだろう。

「それなら大丈夫よ、この村にもう用はないから。」
 と言ってユミコは、一本の笛を見せる。

 緑色の縦笛。
 これが何か?
「これは精霊の笛。
 この先使うかもだから、持ってきたわ。」
 とにっこり笑顔のユミコさん。

「それって、泥棒なんじゃ、、」
「あら、ひと聞きの悪い。
 昔私とタカスナが助けた妖精が、今も居たから、もらってきたのよ。
 その時のお礼として。」

 うーん、俺はその場面を見てないけど、どうなんだろう。
 ユミコの事だから、普通に脅迫したのかもしれない。

 まあ、とりあえず聞かないでおこう。
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